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賞味期限のウソ

2018.11.23 公開 ツイート

ドバイでは卵の賞味期限は半年間?!日本の賞味期限が短いカラクリ 井出留美

まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国・日本。しかも消費者は知らずに廃棄のコストを負担させられている。食品をめぐる、この「もったいない」構造に初めてメスを入れた衝撃の書「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」。
 小売店、メーカー、消費者、それぞれの問題点をあぶりだし、どうすれば食品ロスを減らすことが出来るのかを考えさせられる本書から、その一部をご紹介します。

卵は冬場57日間、生で食べられる

(iStock/Milkos)

 日本の卵の賞味期限は、「夏場に生で食べる」のが前提で、パック後14日間(2週間)と設定されています。でも、気温が低い(10度ぐらい)冬場であれば、産卵から57日間、つまり2カ月近くも生で食べられます。

 

 しかも、「生で食べる」のが前提だから、賞味期限を過ぎていても、加熱調理すれば、十分食べられるのだそうです。

 ご存じでしたでしょうか。私は恥ずかしながら、つい最近まで知りませんでした。

 

 私がこのことを知ったのは、2016年1月22日、ある食品企業主催の食品ロス削減シンポジウムで、講演者として登壇したときのことです。もう一人の登壇者である、消費者庁消費者政策課政策企画専門官(当時)の高橋史彦さんが、こう説明しました。

 

「日本では、卵の賞味期限は生で食べることができる期限として設定されています。一方、海外では加熱して食べるのが前提です。だから日本よりも賞味期限が長いんです

 

 海外では、本当に日本よりも卵の賞味期限が長いのでしょうか。実際に確認してきました。

 2016年5月4日、フィリピンの首都圏、メトロマニラにあるフィリピン最大級のショッピングモール「モール・オブ・アジア」に入っているスーパーマーケット「シューマート」で、4種類のブランドのパック入り卵を確認しました。

 

 ブランドP 賞味期限2016年5月17日(残り13日)

 ブランドQ 賞味期限2016年5月31日(残り27日)

 ブランドR 賞味期限2016年6月7日(残り1カ月と3日)

 ブランドX 賞味期限2016年6月21日(残り1カ月と17日)

 

 短いものもありますが、1カ月半の賞味期限のものもあります。日本ではまず考えられない長さです。

 

 ドバイでは半年間賞味期限がある卵もあったと聞きました。行きつけの飲食店のご主人が渡航されたとき、半年先の賞味期限が卵そのものに印字されており、ゆで卵として提供されたそうです。

 

 NHKでも、同じことが紹介されていました。2016年3月14日放送「あさイチ」の、「減らしたい! 食品ロス」という特集です。食品の保存や賞味期限に詳しい、元東京農業大学教授の徳江千代子先生が出演、卵の賞味期限について、「気温が低い冬場は50日間程度、生で食べることができる」と話されていました。


 生で食べられる期間は産卵日から数えると57日間、産卵からパックされるまでの7日間を引いて、パックされた日から約50日間、ということのようです。出演者も、予想外に長く生で食べられる事実に、びっくりしていました。

 

 2016年5月18日に放送されたNHK「ガッテン!」の特集「卵料理の新世界! ふわふわプリプリ自由自在」では、「少し寝かせた卵のほうがおいしいことが、フランスでは広く知られている」「食感や白身の泡立ちは、あえて時間をおいた卵のほうがはるかに上」といった、意外な事実が紹介されていました。


 採卵日から10日ほど経った卵は、「す」(茶碗蒸しなどにできる、ポツポツとした気泡)の原因になる二酸化炭素が抜けているため、ゆで卵や目玉焼きにしたとき、プリプリの食感が楽しめるのだそうです。

 

 日本卵業協会によれば、市販の卵に印字されている賞味期限は、「産卵後、1週間以内にパック」し、「パックしてから2週間後」の日付です。産卵日から数えると、賞味期間は21日(3週間)以内ということです。最近では、パックされてからの賞味期限だけでなく、産卵日を表示している卵もあります。ちなみに、保存温度は25度以下であることが前提です。

家庭用と業務用の違いは?

 また、レストランや飲食店など、法人向けの「業務用」では、温度管理が徹底されているため、「夏場16日以内」「冬場58日以内」など、季節ごとに設定されています。

 

 市販の卵パックの表示を見ると、「賞味期限経過後、及び、殻にヒビの入った卵を飲食に供する際は、なるべく早めに、十分に加熱調理してお召し上がり下さい」などと書いてあります。


 いくつか、種類の違うパックを確認してみましたが、表示内容はだいたい同じでした。「賞味期限を過ぎても加熱調理すれば食べられる」ということは、別に隠された情報でもなんでもなく、はっきりと明らかにされている事実でした。

(iStock/Nattakorn Maneerat)

 でも、店では、賞味期限ぎりぎりの卵は売られていません。あとでお話しするように、賞味期限の手前に「販売期限」という区切りがあり、その期限になったところで、棚から下げてしまうからです。

 

 期限の迫った刺身や肉、パン、豆腐、納豆、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、洋菓子類、野菜や果物などは、よく割引シールが貼られて売られています。私も、いつも利用しています。でも、卵のパックに割引シールが貼られているのを見たことはありません。売れ残った卵はどこへ行くのでしょうか。

 

 日本卵業協会に問い合わせたところ、「スーパーや食料品店などでは、賞味期限の1週間前には売り切るように管理をしています」。が、「売れ残り、賞味期限切れとなった場合は、それぞれの店舗で処分をしています」とのこと。


「生食用鶏卵は、賞味期限が切れても加熱をすれば食べられますので、それぞれの店舗の判断で処分していただいていると思います」という回答でした。実際に店で捨てているのか、ゆでたり焼いたりして食べているのか、加熱調理して店内の弁当や総菜類に使っているのか、この回答からはわかりません。

 

 数としてはわずかですが、商品として流通できなくなった卵を寄付している会社もあります。私が以前に広報室長を務めていた日本初のフードバンクには、賞味期限内にもかかわらず商品として流通できなくなった卵が、大量に、定期的に、寄付されていました。

 

 フードバンクとは、まだ食べられるのに様々な理由で商品として流通できなくなった食品を企業などから引き取り、福祉施設や生活困窮者に分配する活動、もしくはその活動を行う組織を指します。

 

 私が勤めていたフードバンクでは、たいがい、大きな鍋でゆで卵にして、毎週土曜日に400名ほどを対象に行う炊き出しで使っていました。

 

 注意しなければいけないのは、卵は、サルモネラ属の細菌の一種に汚染されている場合があることです。サルモネラ菌による食中毒を防ぐためには、卵を十分に加熱調理して食べる必要があります。サルモネラ菌は75度以上で1分間加熱することで死滅します。海外で売られている卵が加熱調理を前提としているのは、食中毒を予防するという背景があるのです。

 

 ですから、いくら「冬場は生で57日間食べられる」とはいっても、パックに表示されている賞味期限を過ぎたら、火を通して食べましょう。

 

 また、卵は出荷後、温度が管理された状態で輸送、保管され、冷蔵で販売されるのが、菌の繁殖を防ぐ上で理想です。が、冬場、暖房の入った室温の高い店内で、冷蔵でなく常温販売しているような店もあります。卵を常温コーナーに置いているような店は避け、きちんと冷蔵コーナーで販売している店を選びましょう。

 

 卵の温度管理がしっかりしているかどうかをチェックする必要があるのは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアだけではありません。卵を用いる飲食店も同様です。免疫力の弱い子どもや高齢者がサルモネラ菌の中毒にかかり、亡くなられたケースが過去にありました。

 

 卵を冷蔵庫で保存する場合は、パックに入れたまま、生の状態で保存します。パックから出さないのは、殻にサルモネラ菌がついている場合があり、出すと、他の食品に付着する可能性があるからです。

 

 また、冷蔵庫のドアの内側についている卵ケースは、ドアを開け閉めするたびに温度変化が大きく、卵自体も揺れるので、お勧めしません。パックのまま冷蔵室の奥に入れましょう。

 

 いったんゆでたり焼いたりした卵は、菌の増殖を防ぐリゾチームという酵素の働きが熱で失われているため、生卵ほど日持ちしません。加熱調理した卵は、すぐに食べましょう。

(iStock/happy_lark)

 

今日からできること

 *家族や友達に「卵は、賞味期限を過ぎていても、早めに加熱調理をすれば食べられる」と教える。

 *冷蔵庫に保存してある卵の賞味期限がちょっと過ぎていたら、捨てずに、ゆでたり焼いたりして早めに食べ切る。

◇ ◇ ◇

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井出留美『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』

卵の賞味期限は通常、産卵日から3週間だが、実は冬場なら57日間は生食可。卵に限らず、ほとんどの食品の賞味期限は実際より2割以上短く設定されている。だが消費者の多くは期限を1日でも過ぎた食品は捨て、店では棚の奥の期限が先の商品を選ぶ。小売店も期限よりかなり前に商品を撤去。その結果、日本は、まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国となっている。しかも消費者は知らずに廃棄のコストを負担させられている。食品をめぐる、この「もったいない」構造に初めてメスを入れた衝撃の書!

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賞味期限のウソ

まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス」大国・日本。小売店、メーカー、消費者、悪いのは誰なのか。食品をめぐる「もったいない」構造にメスを入れる。

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井出留美

食品ロス問題専門家。消費生活アドバイザー。博士(栄養学 女子栄養大学大学院)、修士(農学 東京大学大学院)。女子栄養大学・石巻専修大学非常勤講師。日本ケロッグで広報室長と社会貢献業務を兼任し、東日本大震災の折には食料支援に従事する。その際、大量の食料廃棄に憤りを覚え、自らの誕生日であり、人生の転機ともなった3・11を冠した(株)office3.11を設立。日本初のフードバンク、セカンドハーベスト・ジャパンの広報を委託され、同団体をPRアワードグランプリのソーシャル・コミュニケーション部門最優秀賞や食品産業もったいない大賞食料産業局長賞受賞へと導く。市会議員、県庁職員、商店街振興組合理事長らと食品ロス削減検討チーム川口主宰。平成28年度農林水産省食品ロス削減国民運動展開事業フードバンク推進検討会(沖縄)講師。同年11月、国際学会で本著内容発表。www.office311.jp

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