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誰も知らない台湾ビジネス

2018.09.05 公開 ツイート

ブームは2020年まで?
間違いだらけのインバウンドを考える 吉田皓一

大家好(ダージァ ハオ)!ジーリーメディアグループ(吉日媒體集團)代表の、吉田皓一です。当社は台湾・香港からの訪日観光客向けメディア「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営しております。7年前にサービスを開始した当初には一般に馴染みのなかった「インバウンド」というフレーズもすっかり人口に膾炙し、日本経済活性化の一役を担うようになりました。オリンピックを再来年に控え、訪日外国人の需要は上昇傾向にありますが、そんな中で感じる誤謬や違和感もあります。

「訪日外国人」ってどんな人?

近年、メディアで「外国人に人気のスポットランキング」という特集が組まれる事が多くなりました。

しかし実のところ、一言で「外国人」と言っても、例えば欧米系と中華系では、行きたい場所も買いたい物もかなり違います。更に言うと「中華系」と言っても、中国大陸からの訪日客は初来日の方が多いため東京や大阪の定番ルートを回ったり、高級ブランドを購入したりしますが、台湾や香港からの訪日客は訪日リピーター率が80%を超えるため、主要都市のみならずよりローカルな場所に行きたがる傾向があります。また、高級品よりも日用品を多く買う傾向があります。

当社の運営する「樂吃購!日本」は台湾と香港のみに特化することで、台湾香港最大のインバウンド媒体として愛用いただいています。


また、私は中華圏が専門なので詳述はできませんが、「欧米」という言い方も本当はざっくりし過ぎていて、欧州各国と米国で訪日時のニーズが違ったり、南半球の豪州から来日される方も、そのニーズは異なったりするのではないでしょうか。

西洋人の中にはサムライやニンジャ、スモウを「Cool!」と思う方が多いですが、中華圏のほとんどの人は、さほど興味を持ちません。西洋では関心の高い日本の寺社仏閣も、中華圏の人々にとっては特段珍しいものではなく、さほど関心は高くないようです。中には「日本の伝統の大半は我が国がルーツなんだから、わざわざ日本に来て見たいとは思わない」と豪語する方も(笑)。

国によってそのニーズは様々ですから「外国人に人気」と一概には言えないですし、「訪日外国人」と言う表現も、マーケティングする上では粗すぎます。自分たち日本人以外を全部「外国人」として一括りするべきではないと思います。

訪日外国人の8割は東アジアから

よく「訪日外国人対応マニュアル」的な冊子の表紙に、バックパックを背負った欧米人が描かれていますが、実のところ欧米から日本に来る人は、全体のわずか1割程度しかいません。

もちろん欧米からの訪日客も増加傾向にありますし、長期滞在傾向にある彼らにも、もっともっと来日していただきたいのですが、現状としては中国・韓国・台湾・香港という、ご近所にある4つの国と地域から訪日する人が全体の約8割というのが、厳然たる事実です。


インバウンド対応は英語! というのはもちろん正しいのですが、上述の4つの国と地域は全て非英語圏です。特に中華系の方は当然ながら漢字を読めるので、例えば日本のレストランで英語のメニューを渡すと、「漢字を読んだらだいたい分かるから、日本語のメニューのほうがいい」という人が少なくありません。英語とともに、中国語や韓国語の対応があったほうがなお良いと言えます。

インバウンドはオリンピックまでなのか?

これまたマスコミの誤った報じ方なのですが、「オリンピックに向けて盛り上がるインバウンド市場」という風に言われます。果たして、いま日本じゅうで急増している訪日客は、2020年に東京オリンピック開催が決まった事をきっかけに、来日しているのでしょうか? 私の周りの外国人の友達に「オリンピックの時期に東京に行くか?」と聞いたら、ほとんどの人が「ホテルも高いし、どうせ街じゅう外国人だらけだから行きたくない」という回答をします。

もちろんオリンピックをきっかけに政府が様々なプロモーションを行い、各種団体が外国人受け入れ対応を行った結果、訪日客数が増えたというのは疑いのない事実です。しかし、実のところ、オリンピックに向けて盛り上がってるのは日本の人だけ(より正確に言うと東京の人だけ)で、外国から来日するほとんどの方にとっては、特別関係ある話ではありません。

2020年のオリンピック終了後、日本の景気停滞を懸念する声は根強くありますが、少なくともインバウンド市場においては、停滞や衰退を懸念する必要はないと言えます。

インバウンドが「ブーム」で終わらない理由

インバウンドが一過性のブームで終わらないといえる最大の理由、それは、日本の経済力が相対的に低下している事です。

敢えてネガティブな言い方をしましたが、実際のところ、むかし日本人はアジアに旅行すると何を買っても安い安いというのが当たり前でしたが、今やタイやベトナムに行ってもそんなに割安感はありません。こちら台北も家賃は東京並みに高いですし、それなりのレストランは東京の値段と同じかそれ以上の値段がします。逆にいまは、アジアの方々が日本に来て、安い安いと感嘆しています。日本人は「日本の物価は高い」と考えているかも知れませんが、訪日客からすると、円安や免税も相まって、何を買っても食べても安くてしょうがないのです。

いま日本は好景気と言われていますが、その恩恵を享受しているのは東京や大阪などの大都市ばかりです。総務省の人口増減率調査では、首都圏の人口は依然増加傾向にある一方で、東北を始めとする地方の人口はどんどん減少しています。特に問題なのは、地方から大都市に流入する人口の多くが、地域発展の主役であるはずの若年層である、ということです。実際、地方に行けばシャッター通りが広がっていて、経済がほんとうに疲弊しているのが、目に見えてわかります。

しかし、上述の通り、我々が主戦場としている台湾や香港は、訪日リピーター率が8割を超え、日本の大都市よりも地方へ行く傾向が非常に強いエリアです。彼らは、経済が疲弊する日本の地方めがけてどんどん足を運び、お金を落としてくれます。また、SNSでその地方の魅力を拡散してくれます。今後縮小が避けられない日本経済、特に地方経済において、インバウンドは非常に大きな存在となりつつあります。
 

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大家好(ダージァ ハオ)!台湾で起業して六年目、ジーリーメディアグループ代表の吉田皓一と申します。このコラムでは、台湾の最新情報のほか、台湾で会社経営をする中で見た事、感じた事、その悲喜こもごもを、あまりマジメくさらず、柔らかく書き綴ってまいりますので、ぜひご愛読ください!

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吉田皓一

奈良県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。テレビ営業部で3年勤務したのち退職し、ジーリーメディアグループ(吉日媒體集團)創業。東京と台湾を往復し、事業を展開する傍ら、台湾でメディア出演やコラム執筆などを行う。Facebookページのフォロワー数は64万人を超える。

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