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じっと手を見る

2018.04.17 公開 ツイート

いま、最も油断ならない作家が描く「生きるさみしさ」 窪美澄

富士山の見える町で介護士で働く日奈、海斗、畑中、そして東京のデザイナー宮澤という4人の視点から彼らの恋愛と人生が描かれる窪美澄さんの最新刊『じっと手を見る』。読んでくださった書店員さんからは、自分と重ねたり、昔を思い出したり……たくさんの感想が届きました。


三洋堂書店新開橋店 山口 智子さん
日奈と海斗は、この生きにくい現代をひたむきに生きる若者達の象徴のように思いました。
人間は、いつかかたく冷たくなる。そんな当然のことを、若くして身を持って知る。介護を職業とする日奈と海斗。それだからこそ、帰るべき場所を見つけて欲しいと願いながら読みました。
ラスト、泣きました。
何度も読み返したい1冊です。

 

SHIBUYA TSUTAYA  内山 はるかさん
男と女は、人間とは何とままならないものか。窪さんの小説を読むと感じることの多い思いです。
どんなに大人になっても気持ちをコントロールすることは難しい。
自分の選択は間違えていたのでは? 人生の選択に正解はあるのか?
そんな渦巻く想いを、それでも良いか生きていくのだと思わせてくれるのもまた窪さんの小説です。
本作の海斗と日奈は忘れられない2人となりました。

 

青山ブックセンター本店  山下 優さん
居場所(行く場所、帰る場所)を求めていく、登場人物たちそれぞれに感情移入し、ちくちく胸に刺さりながら読み終えました。
自分が、考えなくてはいけないこと、わかっているけど目を背けてしまっているようなことを、ドロっと言葉で表現された感覚でした。
窪さんの連作は改めて最高だなと思いました。

 

ブックシティ平惣  八百原 勝さん
凪の如き日々を願っても、厄介な出来事が現れ、心に傷つけられてしまうこともある。
そんな経験ないにこしたことはないが、強制的に自分自身を見つめ直し、改善を見つけようとして、悪いことばかりではないのかもしれない。

 

知遊堂三条店  広川 和美さん
物語を通して何のともいえない閉塞感を感じながら読み進めました。
人の幸せとは何だろう。
出てくる人々は、特別なようでいて、私の街でも暮らしている人々のようで、私自身にもあてはまて考えてしまう所もあり。
人の弱さ、強さ、ずるがしこさ、人が心に持つやわらかい部分をいとしく思いました。

 

勝木書店本店  樋口 麻衣さん
小説の主人公になりそうな「誰か」ではなく、きっとどこかにいる、もしかしたら近くにいるかもしれない誰かの生きる様の一部を見たような感覚で読みました。
もどかしくて、息苦しくて、ヒリヒリするような痛みもある内容ですが、読み終えた後は、幸せな気持ちで心が満たされました。
幸せなことばかりとは限らないけれど、辛いことばかりとも限らない。
生活も恋愛も、季節のように巡って私たちの人生になっていくのかもしれないと思いました。
私の「今」と、誰かの「今」が重なっていることがすごく尊く感じますが、それが重ならないこともあるし、巡った先にまた重なることもある。
うまく言えませんが、全部がやっぱり自分の人生なんだなぁと思います。
この作品が今、私の胸にこんなに広がっているのに、うまく言えないのがもどかしいのですが、とにかく私はこの作品を読めて幸せです!



三省堂書店  内田 剛さん
いま、最も油断ならない作家は窪美澄だろう。
息づまる日常、理不尽な社会、ままならぬ運命……。
揺らめく感情の機微も不穏な時代の空気もものの見事に言葉に刻みつけ、人間の素顔を暴いてみせる。
ここには、あふれんばかりの血と涙と汗がある。
そして、人間の営みは水の流れのようでもある。
母なる海から生まれた命は心地よくたゆたい、穏やかな景色にもなれば、激流となってこの世の全てを呑みこんでしまう。
まさに極限にまで高められた文学世界。理性ではなく感性で味わうべき物語である。

 

MARUZEN名古屋本店 竹腰 香里さん
日奈と海斗。寄り添いながらも、お互いの想いのすれ違いから別れる二人。
介護士として日々働きながら、自らの生き方を見つめる二人。もどかしさとひたむきさに胸をうたれます。
二人の周りの人たちも、色々な想いを抱えながら毎日を生きている。
日奈にとって外の世界に連れ出してくれた宮澤さんも、複雑な想いを胸に秘めている。
宮澤さんの抱える闇は、いずれ自身をも飲み込みそうだけれど、手を差しのべる人がいる。
色んな人と繋がり合い、そして別れを経て、成長していく日奈と海斗。
再会してからの、そろそろと遠慮がちに近づく二人とラストシーン。
読み終えた後、物語の余韻に浸っていました。
若者たちの心の葛藤が繊細に紡がれ、奥深く響く物語でした。


<イベントのお知らせ>
窪美澄 × 前野健太トークイベント
『じっと手を見る』刊行記念
「帰る場所、好きな人、誰かと生きること」

日程 2018年5月8日 (火)
時間 19:00〜20:30(開場 18:30〜)
料金 1,350円(税込)
定員 110名様
会場 青山ブックセンター 大教室

お申し込みは、下記をご覧ください。
青山ブックセンターHP

窪美澄『じっと手を見る』

富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗はかつての恋人同士。ある時から、ショッピングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東京の男性デザイナーが定期的に通い始める。 町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支えるため町に縛りつけられる。自分の弱さ、人生の苦さ、すべてが愛しくなる傑作小説。

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窪美澄さんの小説『じっと手を見る』をさまざまに紹介。

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窪美澄

1965年、東京都生まれ。 フリーの編集ライターを経て、2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を所収した『ふがいない僕は空を見た』で2011年山本周五郎賞を受賞。また同書は本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれた。2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞受賞。 その他の著書に『クラウドクラスターを愛する方法』『アニバーサリー』『雨のなまえ』『よるのふくらみ』『さよなら、ニルヴァーナ』『水やりはいつも深夜だけど』『アカガミ』『すみなれたからだで』『やめるときも、すこやかなるときも』などがある。

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