月を愛でたい、9月。月の神様のお話も展開します!
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欠けた月も愛しむ秋。「何もしない時間」が幸せを生む!?
前回は、満月を眺めることが開運につながるお話をしました。
実は、満月だけではなく、毎日の月の満ち欠けを意識すると生活が変わる、というお話を聞いたことがあるかと思います。
旧暦では、月がまったく見えない「新月」を一日(ついたち=月が立つ日)とし、だんだんふくらんでいって、十五日が満月、それからまた欠けていって、新月になるまでを「ひと月」とします。たえず「ふくらむ、満ちる、欠ける、無くなる」をくりかえしている月を見て、昔の人は、さまざまな名前をつけていました。その主なものをご紹介します。
一日:朔月【さくづき】。「朔【さく】」とは「遡る(さかのぼる)」の意味。姿がまったく見えない月をさします。月が見え始める「みかづき」から二日さかのぼった月、という意味。
二日:二日月【ふつかづき】。朔月の翌日なので既朔【きさく】とも、繊維のように細いので、繊月【せんげつ】とも呼びます。
三日:三日月【みかづき】。「みかづき」は「朏」の訓読みです。「腕」「胸」「脚」などからもわかるように、「月」は肉体をあらわす部首です。「月の肉体が生まれ出てきた状態」という意味になります。
七日:七日月【なのかづき】・半月・恒月。ほぼ半円で、月入りのとき、弓を張ったような形に見えるところから、上弦【じょうげん】の月・弦張月【ゆみはりづき】とも呼びます。
十日:十日夜(とおかんや、とおかや)・十日月(とおかづき)。
旧暦の十月の十日には、稲刈りが終わって、田の神様が山へ帰るのを見送る「十日夜」というお祭りがあり、観月の慣習もありました。
十三日:十三夜月(じゅうさんやづき)。
旧暦九月十三日の十三夜のみ、旧暦八月十五日の十五夜についで美しいとされ、「のちの月」としてお月見の習慣があります。このころ収穫される栗や豆から「栗名月(くりめいげつ)」「豆名月(まめめいげつ)」とも言われます。
十四日:小望月(こもちづき)・幾望(きぼう)・待宵の月(まつよいのつき)。
十五日:十五夜(じゅうごや)=望(ぼう)・満月(まんげつ)・望月(もちづき)・名月(めいげつ)・天満月(てんまんげつ、あまみつき)・最中の月(もなかのつき)・円月(えんげつ)など、丸い、満ち足りている、完全であるというイメージの名前がついています。
十六日:十六夜(いざよい)「いさよう」「いざよう」からきた言葉。満月より月の出がすこしだけ遅いので、月がためらっているとの見立てです。
十七日:立待ち月(たちまちづき)。
そろそろ出てくるかなーと立って待っているうちに出てくる月という意味。
十八日:居待ち月(いまちづき)。
前日より月の出が遅いので居間などに座って待つのがよいという意味。
十九日:寝待月(ねまちづき)。
満月の月の出から四時間程遅くなることから、月は寝て待つというところからきた名前。
二十日:更待月(ふけまちづき)・亥中の月(いなかのつき)。
夜も更けてからようやく出る月と言う意味。亥の刻とは午後九時から十一時ごろのこと。
二十三日:二十三日月 半月(はんげつ)・下の弓張(しものゆみはり)・弦月(げんげつ、ゆみはり)・恒月(こうげつ)・破月(はげつ)・破鏡(はきょう)・片割月(かたわれづき)・下弦の月(かげんのつき)・偃月(えんげつ)・彎月(わんげつ)・真夜中の月(まよなかのつき)
二十六日:二十六夜
月光に阿弥陀仏・観音・勢至の三尊が姿を現すと言い伝えられ、特に江戸では旧暦七月二十六日に高輪・品川などで、月見が盛んに行われました。
三十日月(みそかづき):晦日月(みそかづき)・晦(つごもり、みそか)・月隠り(つきこもり)。月が太陽に近すぎて姿が見えないことから「月隠」(つきごもり)が変化した晦(つごもり)は毎月の最終日を言うようになりました。
日付欄に、月のみちかけの絵がついた「月の暦カレンダー」で、「今日はどんな月かな」と、月を見上げるときの参考にするのも楽しいですよね。
私はとくに、十五夜のあとの数日間、いざよい、たちまち、いまち、ねまち……のくだりが、なんとも言えず好きです。秋の澄んだ空に月が出るのを、ただ、ぼーっと待っている、という情景が浮かぶからです。
いまの私たちは、月の出をぼーっと待つなんてことを、しませんよね。それどころか、「特になにもしない時間」が、とんでもなく少ない、あるいは、まったく無いような気がします。けれど、「月がきれいだから散歩しよっか」、とか、「月がきれいだからベランダに出て一杯だけやろうか」、なんていう時には、得も言われぬ安らぎを感じます。安らぎ=幸せ、と言ってもいいのではないか、と思うくらい、安らぎは尊いですね。
安らぎや平穏がもっとも尊い状態である、という概念は、神社で神職が奏上する「祝詞【のりと】」にも表れています。祝詞というのは、神様を言祝ぎ、祈願を述べることで、「やまとことば」で書かれています。そして、どんな種類の祝詞にも、「平らけく安らけく聞し召し(たいらけくやすらけくきこしめし)」「穏ひに守り給ひ(おだひにまもりたまひ)」といった、安らぎを願うフレーズが、かならずと言っていいほど入っているのです。
「ツクヨミ(月読命)の時間」を作る
ここで、神道における「三貴神」の一柱(神様を数える単位は「柱」です)でありながら、謎に包まれている「ツクヨミ(月読命)」についてすこしお話したいと思います。
以前、三月の項で桃の霊力についてお話するときに、「イザナギという神様が、黄泉の国から逃げるときに桃の実を投げて追手をまいた話」をご紹介しました。
あのあと、イザナギは、身に着けていたものをぜんぶ捨てて裸になり、流れる水辺で「みそぎ」をします。
彼が左の目を洗うときに生まれたのがアマテラス(天照大御神)。右の目を洗うときに生まれたのが、ツクヨミ(月読命)。鼻を洗うときに生まれたのがスサノオ(建速須佐之男命)です。
イザナギはたいへんよろこんで、「吾は子を生み生みて、生みの終(はて)に三はしらの貴き子を得つ」と言ったことから、この三柱が「三貴神」と呼ばれているのですが、このあと、アマテラスとスサノオについてはめちゃくちゃたくさんの面白いエピソードが語られるのに対し、ツクヨミはほとんど出てきません。古事記では、父であるイザナギに、「汝命(いましみこと)は、夜の食国(をすくに)を知らせ」と言われて以降、一回もツクヨミが出てこないのです。これでは、
「ツクヨミは、たぶん、夜の国を治める、月をつかさどる神様なんだな」
「アマテラスが太陽神なんやから、ツクヨミは月の神やろな、しらんけど」
という漠然としたイメージしか得られません。
心理学者の河合隼雄さんは、このことについて、「神話と日本人の心」の中で、
『古事記』『日本書紀』の本文に注目する限り、ツクヨミはほとんど「無」に等しいと言っていいだろう。三貴子と言いつつ、中心のツクヨミが無為であることは極めて重要である
と述べています。
アマテラス(姉)とスサノオ(弟)という、戦闘能力も統治能力も高い二柱の間にいるツクヨミが、「何もしない」神様であるということが、どうして「極めて重要」なのだろう? と、私にはずっと疑問でしたが、最近なんとなく腑に落ちるようになったのです。
水墨画の白い部分/がらんとした床の間/水のない庭、枯山水/なにもない部屋/なにもしない時間/夜空の月を眺めるひととき。
こうしたものの尊さに、気づくようになったからです。そんなわけで、私がおすすめする九月の開運行動は、「しない時間をつくる」です。
何も買わない日/ごはんをつくらない日/お化粧しない日/携帯を見ない時間/何も考えない時間/なにもしない時間。
そしてお月さまをただ眺める。こういう時間を、「ツクヨミの時間」と呼ぶことにしましょうか。私が思うに、昔の人はなにもせずぼーっと月を眺めるツクヨミの時間に、むちゃくちゃいい歌や俳句、散文を生みだしています。
吉田兼好の「徒然草【つれづれぐさ】」には、「配所の月」という言葉がでてきます。
顕基中納言の言ひけん、配所の月、罪なくて見ん事、さも覚えぬべし
(顕基中納言が言ったという、配所の月を、罪の無い身の上で見たいという事。そんなふうに思われることだ)
「配所の月」は島流しになった場所で見る月のことです。島流しになった身ではなく、さびしい流刑の地で見る月は、さぞよかろう。という感じですね。
リアルに島流しになった身では、自分の身の上が辛すぎますが、そうではなくて、島流し先のようなところで、「無」と「孤独」を味わいながら眺める月はよさそうだなーという、都会人的な発想。ここまでいくと、ツクヨミ時間の達人という感じがしますね。
ああ、今日は良いツクヨミの時間が持てた。
そんな日が続くと、いつのまにか幸せになっている気がします。
毎日がみるみる輝く!神様とあそぶ12カ月
「小さな一瞬一瞬の幸せを感じる」を毎日続けていけば、「一生幸せを感じ続ける」ということになる。――当たり前のことだが、これが、神社神職として日々、神様に季節の食べものをお供えしたり、境内の落ち葉を履いて清めたり、厄除開運の祈祷を行って参拝者さんとお話ししたりする中でたどり着いた、唯一、確実な開運法なのです。
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神主さん直伝。春夏秋冬を大切にすれば、毎日が開運のチャンス!
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