
〔使用機材:Sony RX100V〕
三七年前、私は新潟の片田舎から上京した。ウルトラ貧乏学生だった私を、周囲の大人たちがなにかと可愛がってくださり、毎日どこかでメシにありついた。
そんな最中、私が仰天したのがアルバイト先の部長さんの存在だった。某広告代理店の部長さんで、業務終了後に毎日一人でふらりと飲みに出る。ある日、蕎麦でもいくかと誘われ、神田の老舗へと同伴させていただいた。
この部長さん、入店するなり、ぬる燗と板わさをオーダーし、お通しのそば味噌でご満悦になられた。一方、こちらは食べたい盛りのお年頃。ビールをガブガブ、焼き鳥(串に刺さっていないタイプ)や天種、ニシンの棒煮をがっついていると、部長さんは早くももりそばをご注文。慌ててもう一丁お願いすると、こう仰った。
〈こういう店で長っちりは野暮。サクッと飲んでチョコっと食べて、パッと帰るのが礼儀〉
田舎蕎麦しか知らない少年(そういう頃もあったの)は衝撃を受けた。地方の食堂はデカ盛り、長時間いても文句なんて言われない。そもそも、〈野暮〉という言葉は、落語の中だけだと思っていたからだ。
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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!
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