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ニッポン47都道府県 正直観光案内

2022.09.11 更新 ツイート

福岡県観光は「博多」のイメージが強いけど…。知られざる“装飾古墳”や冒険感満載の鍾乳洞にも注目! 宮田珠己

気の向くまま、日本中を旅している宮田珠己さんが「本当にイイ!」と思ったスポットを、47都道府県別に紹介している『ニッポン47都道府県 正直観光案内』。文庫化記念で試し読み。お次は福岡県!

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福岡県

福岡県と聞いて、誰もがまず思い浮かべるのは博多でしょう。

空港と新幹線の駅と都心がコンパクトにまとまり、海や山などの自然も近く、転勤先として大人気の博多。めしもうまいと評判です。

筥崎宮(はこざきぐう)太宰府天満宮でも見物したら、天神でウィンドウショッピングし、夜は中洲の屋台で博多ラーメン。福岡県に観光に行ったことのある人は、まあだいたいそんな感じで過ごしたのではないでしょうか。

昨今は少し西のほうへ足をのばして、新しいお店が増えた糸島あたりを徘徊するのも流行っていると聞きます。現地の友人に、白糸の滝の流しそうめんに連れて行かれたりするのも、すっかり福岡観光の定番になりました。

ですが、それで福岡県を満喫した気になっていいのでしょうか。

え、何? 福岡ドーム? 大濠(おおほり)公園? キャナルシティ? 海の中道のマリンワールドにも行った?

そうですか。でも、それが福岡観光なのでしょうか。それで真に福岡を観光したと言えるでしょうか。ここで私が言いたいのは、つまり、それ全部博多周辺だろ、ということなのです。

そう。福岡県の問題はこの点にあります。

いや、少し詳しい人であれば、博多以外に北九州の門司港を訪れたことがあるかもしれません。門司港周辺にはちょっとした見どころが集中しています。

山口県の下関へ歩いて渡れる海底トンネルや、レトロな街並み鉄道記念館もあったでしょうか。さらに和布刈(めかり)公園のほうに回り込みますと、日本最大ではないかと思われるタコのすべり台があって、知る人ぞ知る名所となっています。

ですが、福岡県で知っているのも、ここまでです。夜空の星でいうなら、一等星の博多、二等星の門司港があり、博多の隣に連星の太宰府が光っているのが見えますが、あとは真っ暗。肉眼では何も見えません。

え、福岡県ってそれ以外何かあるの?

と思った人はよくよく地図を見てください。博多は福岡県のむしろ外れにあり、福岡県は瀬戸内海側や有明海方面にも展開していることがわかるはずです。そこそこ広さのある県なのです。にもかかわらず、肉眼で見えるのは博多と門司港、あとは太宰府、それだけです。福岡県に博多周辺と門司港以外に、いったいどんな観光地があるのか。とっさに三つ以上挙げられる人は、そうそういないのではないでしょうか。

仕方がありません。ここから先はハッブル望遠鏡で見てみましょう。

豪華絢爛キラキラ観音 成田山久留米分院

よくよく解像度をあげてみると、久留米に高さ六十二メートルの大観音が見えます。この大観音は、やたらゴージャスなことで知られており、額の白毫と呼ばれる部分には、直径三十センチの純金の板に三カラットのダイヤモンドが十八個埋め込まれ、胸には二千カラットの水晶、さらにその周囲には五十六個のヒスイがちりばめられているという具合で、貧乏人にはまばゆいばかり。大観音の内部に入ると、人類はみな平等などと謳ってありますが、そんな宝石ばかり見せられたあとでは、まったく腑に落ちません。それでも内部には地獄めぐりのアトラクションなどもあって楽しめるので、行ってみる価値はあるでしょう。 さらに、世界遺産に認定された宗像(むなかた)大社もありました。宗像大社の沖の玄界灘には、沖ノ島という女人禁制の聖地があって、男子であっても観光などといった軽々しい目的では上陸できないことになっています。パワースポットとして非常に魅力的ではありますが、残念ながらこれは割愛せざるを得ません。

んんん、いくつか列挙してみましたが、博多の光がまぶしすぎるせいか、どうもわざわざ行ってみたい感がありません。なぜこんなことになっているのでしょうか。

あらためて地図を広げてみると、福岡県は中央部の筑豊、南部の三池など、かつて炭鉱で栄えた土地で占められていることがわかります。つまり、ひと昔前まで、福岡=炭鉱地帯、だったのです。石炭もほぼ掘りつくされた今では、それが観光的に未発達の大地となって残ってしまっているわけです。

ああ、もういいよ、博多があればそれで。

なんだかそんな気持ちになってきました。

しかしもう少しがんばってみましょう。

篠栗(ささぐり)霊場はどうでしょうか。博多と筑豊を結ぶ篠栗線に沿って、霊場が点在しています。なかでも南蔵院と呼ばれる篠栗四国の一番札所には巨大な涅槃(ねはん)像があって、それなりに有名です。久留米と篠栗、二つの巨大仏を巡れば何かいいことあるかもしれない。

巨大で思い出しましたが、福津市にある宮地嶽(みやじだけ)神社には巨大なしめ縄があって、ちょっと面白いです。

派手な壁画が日本にも。王塚古墳

あとは、そうだ、筑豊の炭鉱地帯のなかに、王塚古墳という装飾古墳があります。近畿地方などにある古墳と違い、内部の壁画が原始時代っぽく、それでいてカラフルというプリミティブな古墳で、洞窟壁画などに興味のある人には面白いと思われます。

九州には装飾古墳が多い。日本らしからぬ造形が新鮮。(イラスト:宮田珠己)

自然はどうでしょうか。

県の西北部に日本三大カルストの一角を担う平尾台があります。山口県の秋吉台、愛媛県と高知県にまたがる四国カルストなどと比べると、起伏が激しく箱庭の風情があってなかなかです。ここにはカルストにつきものの鍾乳洞がいくつかあって、そのなかのひとつ千仏鍾乳洞は、洞窟の中に川が流れ、そこをバシャバシャ歩いて奥へ進める冒険気分たっぷりの洞窟です。九百メートル地点で照明設備はなくなりますが、地獄トンネルという狭い穴を抜けて、自力でさらに奥へと進むことも可能。ふつうの鍾乳洞に飽きた人にはもってこいです。ただし懐中電灯は必須。

それから、ほかには、ええと、ええと……。

ブッブー、タイムアップ!

福岡県からは以上です。

*   *   *

この続きは幻冬舎文庫『ニッポン47都道府県 正直観光案内』をご覧ください。

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ニッポン47都道府県 正直観光案内

スペクタクルな富山県、果てしなく遠い和歌山県、大分県は大魔境、何かとやりすぎな徳島県、青森県はSFの世界、愛知県の可能性は無限大、埼玉県がダサいと言われる本当の理由とは? へんてこ旅を愛する著者が、知名度や評判に惑わされず本気で「イイ!」と思った観光スポットのみを厳選。かつてなく愉快な、妥協なき47都道府県観光案内。

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宮田珠己

旅と石ころと変な生きものを愛し、いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追究している作家兼エッセイスト。その作風は、読めば仕事のやる気がゼロになると、働きたくない人たちの間で高く評価されている。著書は『ときどき意味もなくずんずん歩く』『いい感じの石ころを拾いに』『四次元温泉日記』『だいたい四国八十八ヶ所』など、ユルくて変な本ばかり多数。東洋奇譚をもとにした初の小説『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』で、新境地を開いた。

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