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ハイスペック女子のため息

2020.06.20 更新 ツイート

渡部建 ガストロノミー風多目的な考察 山口真由

東出昌大さんの「3年不倫」と原田龍二さんの「4WD不倫」により、世の中の不倫の類型は出尽くしたと思われた。「杏さんが好きなのか、唐田さんが好きなのか」と問われて沈黙した東出さんはバッシングを浴びた。逆にいえば、世の中全部を敵にまわしても、唐田さんへの配慮を示したともいえる。一方、複数の女性ファンと不倫していた原田さんの場合には、女性をマイカーで拾って、車内で10分間にわたり行為に及び、その後、彼女を最寄り駅で落とすという手軽さ。謝罪会見では、ファン、スポンサーと家族に対する謝罪の言葉を口にしたが、不倫相手に対する謝罪はついぞ聞かれなかった。

 

要するに「不倫相手に対して丁重な配慮を示したか」。That’s all!!

と、ここで、新たな類型が現れる。渡部さんの不倫については「六本木の多目的トイレ」のインパクトにひきずられて、原田さんと同じように、いや、それ以上に、不倫相手を雑に扱ったと思われがちである。しかし、単調かつ無粋なものに分類するのは「芸能界のグルメ王」渡部さんに失礼ではあるまいか。渡部不倫の特殊性は、その食卓の見事なまでの豊かさにこそある。

1. 渡部建のグルメガイド不倫

文春に登場する女性はA子さん、B子さん、C子さんの3人である。文春の記事によれば「渡部さんは、華奢なA子さんを気に入り、個別でホテルに呼び出すなど一時期は深い仲にあったという」(「週刊文春」6月18日号)。まず、彼は、凡庸な不倫も難なくこなすことができる。

じゃあ、C子さんはどうかというと「渡部さんが彼女の自宅をお忍びで訪問し、肉体関係を持ったのは三回以上。夕方前、白ワインとおつまみ持参で現れて、少し飲」むという配慮すら見せている(同じく「週刊文春」)。原田さんよりもよっぽど丁重に女性を扱うことだってできる。

一方、B子さんへの対応は、当初から一貫している。前菜もデザートもない。つまり、その前に一緒にワインを飲むこともなければ、その後にシャワーを使わせてあげることすらない。帰り際に1万円を渡す(これ以上詳しく書くのは憚れるので「週刊文春」をお読みください)。 佐々木希さんは言うに及ばず、C子さんと比べたって、扱いの格差が際立つ。

ここで、私は、はたと思い至る。そうか、そういうことか。渡部さんは、グルメもオンナも「格付け」をしていたに違いない。この女性は3つ星クラス。連れていくお店を綿密に選び、万全の体制でデートに挑む。この娘は1つ星。近くまで来たからふらっと寄ってみるか。この女はビブグルマン。従来、リストアップしてきた「一流店」とは毛色が異なるものの、「庶民の味」も極めればまた美味なり。

(写真:iStock.com/Luliia Zavalishina)

しかしながら、渡部さんの罪は、グルメと同じように女性をランク付けしたことではない。確かにかなり不快!!でも、そんなことは誰もがやっているというのも、また事実。女性をデートに誘うとき「彼女にならこのレストラン。この娘だったらここでいっか」ってやるでしょ? そして、私たちだって、デートのお店の格により、彼がどの程度の価値を私に見出しているのかを測るのだろう。もしかしてさ、渡部さんのグルメって、そういうとこから始まったのかもね。この女性と食べるのに最も相応しい一皿は何か。滴り落ちるジューシーな肉汁か、それとも、宝石のようなオードブルの数々か。この女性に似つかわしい店を探したいという男のあくなき探求心が、お店選びのレパートリーが格段に広げていったのかもしれない。うがちすぎ?

男は、えてして、女を「ランク付け」するのが好きな生き物である。Facebookだって、ハーバードの女子学生を比較するところからスタートしたわけだし。「値踏み」帝王・マーク・ザッカーバーグと並び立つほどの「格付け」王・渡部建は、しかしながら、世界有数の企業帝国を築き上げるどころか、今や大変な窮地に自らを追い込んでしまった。彼の罪はいったいどこにあるのだろうか。

2. 渡部建さんと「合理性の罠」

当初の私の分析はここで終わっていた。「格付け」王。渡部建 ピリオド。女性を「モノ」のように値踏みするその上から目線に逆上し、思考がフリーズしてしまったのかもしれない。

だが、知人の男性が私にこう告げる。「渡部さんの場合、妻の佐々木さん以外の女性にどっちが上、どっちが下というランク付けでもないだろう。その素材を、もっとも適した調理法で、おいしく食したい。それに尽きるんだと思うよ」。これはなかなか目から鱗の視点である。

確かに、彼は奇妙である。B子さんは、当初は事務所に呼んでいる。そこから「多目的トイレ」。C子さんは、当初は自宅にお邪魔している。そこから、新たに渡部さんが提案したのは「会議室」での密会。なんだそれ? 最初はリスク回避だろうと思った。しかし、知人の男性はこう続ける。「多目的トイレって、そりゃフライデーには見つからなくても、出入りは防犯カメラに収められている。彼くらいの収入があれば、会議室を予約せずとも、フロントを通らないで地下の車寄せからホテルの部屋に直行する方法だってあるはずだよ」。

そこで、私は思い出す。知り合いの中で最もグルメだった女性は、例会のお弁当には決して手を付けなかった。2,000円のデパ地下弁当は豪華である。松茸ごはんにちらし寿司。私にとっての垂涎の的を、グルメな彼女はスルーする。代わりに、例会が終わったら、近所の焼鳥屋さんで、ランチ限定、熱々の親子丼をかき込むのだそうな。〆て1,000円也。そして、彼女は私にこう語った。「ねぇ、1日にたった3食しかないのよ。お仕着せのお弁当で1食の機会を無駄にしたくないの。その瞬間に、一番食べたいものを、一番おいしく出してくれるお店で。一食も妥協できない」。

これぞ、食通!! 

試しに、渡部さんがかつて師と仰いだ有名食べログレビュアー「うどんが主食」氏の「マイベスト」を見てみよう。お気に入りのお店には「京味」と「うどん丸香」が両方とも入っている。5万円の対価をとる日本料理の名店と1,000円未満の庶民の味を無造作に並べる――これこそが、現代の食べログ的美食家のスタイルである。高級店しか行ってないなんて、逆に、野暮ったい。「芸能界のグルメ王」渡部さんも、有名店ばかりでなく、路地裏の隠れた名店までをカバーするがゆえに評価されてきた。

そうなると、現代的美食家の意義は一流店を紹介することにはない。フレンチならフレンチ、餃子なら餃子で、デート、女子会、一人飲み、そのお店に相応しい楽しみ方を紹介できることにこそ、センスが現れる。気合を入れたデートの場面で、近所のラーメン屋をチョイスし、超おしゃれして、フォークとナイフをカチャカチャさせて、3時間かけてディナーする。冷めたスープに伸びた麺。それって絶対おいしくない。飲み会がお開きになった深夜に、〆の一杯を、1人でずるずると音を立ててすするときにこそ、ラーメンはその真価を発揮する。

そのときどきに、最も食べたいものを、最もおいしく。のみならず、ありあわせの食材やお仕着せの料理に満足できない彼は、その一皿ごとに、素材のおいしさを最大限引き出すためのため、最適のシチュエーションを求めてに自ら趣向をこらした。グルメ王としてのこのこだわりゆえに、渡部さんは文春砲に撃たれることになる。

女性を冷徹に値踏みし、釣り合う対価を支払う。せっかくなら最適のシチュエーションを整えよう(←彼にとってのね。女性にとってではなくて)。よく見てみると、各ピースには、部分最適の合理性が確かにある。

(写真:iStock.com/starfotograf)

だが、完成されたジグソーパズルは、我々の目前に、解読不能なほどに不合理な文様を提示する。仕事でも会食でも家庭でも、彼はスマートな人間として評価されてきたのだろう。スマートでフランクで話題も豊富で、自らを「芸能界のグルメ王」「美人女優の夫」とブランディングしてその価値を高めていける有能な渡部さん。だからこそ、我々はそのギャップにどよめいたのである。あれほどにスマートで合理的な人が、なぜ、これほどに不合理なリスクをとったのか。

がしかし、ここで我々は重大な事実に向き合わなくてはならない。スマートであることと、淡白であることは、恐らく、別のベクトルだったのである。「スマートで理知的な男は、淡白。泥臭く感情的な男は、粘着質なまでに貪欲」。このステレオタイプは、渡部建という男の存在により、見事に反証された。スマートに、しかし、人生を貪りつくしたいと考えた男・渡部建、ここにあり!!

そして渡部さんの最大の失敗は、自らの業の深さをキャラクターの一部として表に出すことができなかったことだろう。仕事でも会食でも家庭でも、理性によって、感情をある程度制御する。そういう人は、逆に、「合理性の罠」にはまるのだ。彼のような上昇志向の強い人は、たぎるような欲望を、もともと胸の内に秘めていたのだろう。押さえつけられた本能は、マグマのような熱量を溜め、やがて獰猛な衝動となって自らの肉体を貫く。スマートな人と見られたいというプライドが、本能に素直に耳を傾け、自分の愚かさを認め、それを笑い話として表現する機会を奪ってしまった。

さて、私は渡部建という男に急激に興味を持つに至る。小器用にまとめられた外見とは裏腹に、これほど深い慟哭の沼を、その奥底に抱えていようとは。彼がしたことはともかくとして、退屈に見えた男が、匂い立つほどに魅力的な観察対象として、今、浮かび上がってくる。

関連書籍

山口真由『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士が実践! 誰でもできる〈完全独学〉勉強術』(SBクリエイティブ刊)

桁違いの実績を実現したものこそ、「教科書を7回読む」という著者ならではの方法論。実際、塾に通ったり家庭教師についたりしたことは過去一度もなく、1冊の教科書にこだわり7回読み抜いてきたのです。そのシンプルにして合理的、かつ安上がりな独学法のすべてを惜しみなく公開。

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永田夏来/pha/藤沢数希/山口真由/酒井順子『「結婚・妊娠・出産」って最後の宗教みたい』

「子どもを持って初めて成長できる」。 印籠のようなこのセリフを否定するつもりはありませんが、でも、誰もが当たり前のように結婚して、子どもを産む時代は終わりに近づいているように思います。 それでも、非婚も子ナシもまだまだマイナーな選択なのでしょう。 王道のライフコースを選ぶ人生と選ばない人生。 そこにうずまく不安、安堵、諦念、自由……。 気鋭の学者、作家たちが、「結婚」と「出産」にまつわる社会の本音をあぶりだします。

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山口真由

1983年、札幌市生まれ。東京大学法学部卒。財務省、法律事務所勤務を経て、ハーバード大学ロースクールに留学。2017年にニューヨーク州弁護士登録。帰国後、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に入学し、2020年に修了。博士(法学)。現在は信州大学特任准教授。『「超」勉強力』(プレジデント社、共著)『いいエリート、わるいエリート』(新潮社)、『ハーバードで喝采された日本の強み』(扶桑社)など著書多数。『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』(PHP研究所)の文庫版も出版された。 山口真由オフィシャルブログはこちら

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