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オスマン帝国英傑列伝

2020.01.20 更新 ツイート

ミュシャが描いたトルコのジャンヌ・ダルク【女性革命家 ハリデ・エディプ(1)】小笠原弘幸

およそ600年という史上まれに見る長期間、繁栄を誇ったイスラムの盟主「オスマン帝国」。前代未聞の大帝国を築いたのはどんな人物たちだったのか。
ベストセラー『オスマン帝国』(中公新書)の著者小笠原弘幸氏がオスマン帝国の傑物10人を考察する新連載。今回はトルコ共和国の独立運動に身を捧げ「トルコのジャンヌダルク」と呼ばれた女性、ハリデ・エディプを取り上げます。

ミュシャが描いたハリデ・エディプの肖像(1928年作)

ミュシャが描いたトルコ人女性革命家

チェコ人の画家アルフォンス・マリア・ミュシャは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した、アール・ヌーヴォーの代表的画家のひとりである。ベル・エポック華やかなりしパリでサラ・ベルナールなど高名な舞台女優のポスターをデザインして名を成した彼は、画歴の後半においては大部の連作『スラヴ叙事詩』を描き、民族主義の画家としても知られる。日本でも人気が高く、2019年の夏にも、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで展覧会が開催されたばかりだ。

ミュシャは1914年、『スラヴ叙事詩』の一枚として、オスマン帝国のスレイマン一世(位1520-1566年)によるハンガリーの要衝シゲトヴァル攻略(1566年)の場面を描いた。この戦いにおいて最終的に城塞は陥落するが、その直前にスレイマン一世は病没している。ミュシャはこの絵で、帝国に抵抗したスラヴ民族の英雄的行為――城塞の司令官はスラヴ系だった――を描いたのだった。

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小笠原弘幸『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史』

オスマン帝国は1299年頃、イスラム世界の辺境であるアナトリア北西部に誕生した。アジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸に跨がる広大な版図を築くまでに発展し、イスラムの盟主として君臨した帝国は、多民族・多宗教の共生を実現させ、1922年まで命脈を保った。王朝の黎明期から、玉座を巡る王子達の争い、ヨーロッパへの進撃、近代化の苦闘、そして滅亡へと至る600年を描き、空前の大帝国の内幕に迫る。

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小笠原弘幸

1974年北海道北見市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、九州大学大学院人文科学研究院イスラム文明学講座准教授。専門は、オスマン帝国史およびトルコ共和国史。著書に『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容――古典期オスマン帝国の系譜伝承をめぐって』(刀水書房、2014年)、『オスマン帝国――繁栄と衰亡の六〇〇年史』(中公新書、2018年)。編著に『トルコ共和国 国民の創成とその変容――アタテュルクとエルドアンのはざまで』(九州大学出版会、2019年)。
 

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