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オスマン帝国英傑列伝

2019.08.26 更新 ツイート

ヒュッレムを越えて、オスマン史上最も権力を持った女性とは【偉大な母后キョセム(1)】小笠原弘幸

およそ600年という史上まれに見る長期間、繁栄を誇ったイスラムの盟主「オスマン帝国」。前代未聞の大帝国を築いたのはどんな人物たちだったのか。
ベストセラー『オスマン帝国』(中公新書)の著者小笠原弘幸氏がオスマン帝国の傑物10人を考察する新連載。
今回は、オスマン帝国史上、女性として最長にして最大の権力を有したといわれる、偉大な母后キョセム。大ヒットドラマ「オスマン帝国外伝」続編の主人公としても今注目の存在です。

母后キョセム。胸に抱く幼児は、息子のムラトもしくはイブラヒム(写真:Wikimedia Commonsより)

聖母マリアのように描かれたイスラムの后

豪奢な衣装をまとった、白皙(はくせき)の肌を持つ貴婦人が、じっとこちらを見つめている。そのはだけた右胸では、年齢には不釣り合いなほど華美な服を着た幼児が乳をはんでいる。

この絵が、西洋の芸術家たちが数え切れぬほど描いてきた、聖母マリアとイエスの肖像を範にとっていることは疑いあるまい。その一方で、母子が身にまとっている被り物や靴の意匠は、このふたりがイスラム世界の貴人であることをうかがわせる。

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小笠原弘幸『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史』

オスマン帝国は1299年頃、イスラム世界の辺境であるアナトリア北西部に誕生した。アジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸に跨がる広大な版図を築くまでに発展し、イスラムの盟主として君臨した帝国は、多民族・多宗教の共生を実現させ、1922年まで命脈を保った。王朝の黎明期から、玉座を巡る王子達の争い、ヨーロッパへの進撃、近代化の苦闘、そして滅亡へと至る600年を描き、空前の大帝国の内幕に迫る。

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小笠原弘幸

1974年北海道北見市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、九州大学大学院人文科学研究院イスラム文明学講座准教授。専門は、オスマン帝国史およびトルコ共和国史。著書に『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容――古典期オスマン帝国の系譜伝承をめぐって』(刀水書房、2014年)、『オスマン帝国――繁栄と衰亡の六〇〇年史』(中公新書、2018年)。編著に『トルコ共和国 国民の創成とその変容――アタテュルクとエルドアンのはざまで』(九州大学出版会、2019年)。
 

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