

新年あけましておめでとうございます。
お正月はとりたててすることもなく、ぬくぬくと過ぎていく。箱根駅伝を見るともなく見ながら「今年は青学が優勝じゃないのかなぁ」なんて思っていたら、母から「あなた、本当に結婚しないの? 年を取ってから結婚していないと意外と寂しくない?」と真顔で尋ねられた。私の年齢が理由なのか、それとも東京という都会に住む人の距離感がそうさせるのか、考えてみると、最近、ここまでの直球はまれである。
抽象的に結婚してみたいと思ってはいるけれど、30歳を目前にしたときほどの切実感はさほどない。というのも、ここ最近とみに「結婚」というものが揺らいでいるからだろう。
お正月に向けて帰省する移動中に立て続けに2つ、結婚に関するニュースを見た。ひとつは「事実婚」。最近の芸能人カップルが、特定のパートナーと安定した関係を築き、周囲にも隠すことなく互いの存在を認知させながら、「結婚」という法形式にこだわっていないという話。
つづいて「多夫多妻」。経済的に安定していて、精神的にも頼りがいのある男性はすでに結婚している場合も多い。「本妻」でなくてもいいから、もう一人二人のパートナーを公認させる制度があっても良いと思うという主張だった。
この「事実婚」も「多重婚」も、同性婚を含めて「多様な家族の形」を国家が認めていくべきだという、同じような内容におさまっていくことが多い。
1. 「事実婚」と「同性婚」や「多重婚」は全然違うんじゃない?
だが、私は「事実婚」と「同性婚」や「多重婚」は、全然目指しているところが違うと思う。特に「同性婚」と「事実婚」の主張はむしろ真逆に向かっているんじゃないかと思っている。
「事実婚」というのは、要は結婚の世俗化である。ベクトルとしては現実派の方へと向かう。
「結婚」というと人は何を思い浮かべるだろう。「富めるときも貧しきときも」と誓いを交わし、「皆様、席をお立ちになるのは自由です。お近くまで来て良いお写真をお撮りください」と司会が連呼し、そうまで言われて黙って席に座ってるのもなんか悪いかなぁとスマホ片手にウェディングケーキのそばに近寄った群衆を前に、どう見ても大きすぎるケーキを新婦が新郎の口にねじ込む……ちょっと結婚の捉え方に悪意がある?
とはいっても、「結婚」といって思い浮かべるのは、純白のウェディングドレスとか、一生を共に過ごす伴侶とか、この人と新しい家族を生み育てていこうとか、どこか抽象的なイメージではないだろうか。
間違っても、「結婚と言えばさぁ、まず配偶者控除を受けられることでしょ? それから、結婚だと相続の権利も生じるよね?」みたいなことを言うやつはいるまい。プロポーズされて、そんな答えが来たらドン引きである。
ところが、この、人がドン引く超現実派が、現代に生きる最先端の「事実婚」推進者である。結婚とは経済的な権利と義務の束なのである。誓いがどうの、戸籍がどうの、お墓がどうのと古臭いことはどうでもいいの。年金、税金に社会保険、そういった結婚に対して与えられる世俗の優遇措置をまるっと全部こっちにもくださいなっていうのが、今一番とんがった事実婚提唱者の主張。
そして、同性婚を求める人の主張はこれとはもろに逆行する。なんせ、私たちの愛による結びつきを国家によって承認してほしいというバリバリのロマンチストが同性婚主張者のメインストリームと思われるのだから。こういう方々に「税金でも年金でも結婚並みに優遇するから、もうそうやって形にばっかり拘(こだわ)らないで」と言ったところで、なんとも的外れ。むしろ逆に逆鱗に触れるだけ。
だから、事実婚と同性婚を主張する人々は手を取り合って家族の多様化を目指すどころか、むしろ反目し合う可能性すらある。片一方が教会での結婚、つまり結婚の象徴的側面にあくまでこだわり、もう一方が、役所が認める結婚上の優遇措置、結婚の経済的側面を重視するのだから、話がかみ合おうはずがない。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
関連書籍
関連キーワード
ハイスペック女子のため息

- バックナンバー
-
- 【居場所を考える】私は松居一代のことを笑...
- 【改元特集】シンデレラボーイ小室圭氏のは...
- 精子バンクをめぐる、女と男と子どもの言い...
- 美術モデル大原さんのセクハラ訴訟と、マッ...
- “浅はかな理解”にかみつく快感、楽しむ快...
- 事実婚、同姓婚、多重婚…制度へ求めること...
- 上沼恵美子さんの沈黙をふと考える年の暮れ
- 特捜部に楯突くつもりはございませんが、ゴ...
- 日本にも押し寄せつつあるポリコレの波
- 片山さつき先生から考える、女を解脱できな...
- 元貴乃花親方の苦悩――親になりきれない大...
- 樹木希林さんと内田裕也さん夫婦の「ミステ...
- シャラポワの悪口は言えるけど、セリーナに...
- 2つの“宮川選手”会見を比べて考えた。こ...
- 山根明会長、小室圭(コムケイ)氏……メン...
- 文科省の裏口入学はなぜ許せないのか?
- ジェンダーニュートラルになる親たち
- 勝間和代さんのカミングアウトについて思う...
- 女は男の瞳に映る自分を見ていた
- どこからセクハラ?
- もっと見る