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天下一の軽口男 米沢彦八伝

天下一の軽口男 米沢彦八伝

笑いひとつで権力に立ち向かった男、上方落語の祖・米沢彦八を描く痛快時代小説
 

堺町の堀端で梅若が童たちと遊んでいるのを、彦八と鹿野武左衛門は柳の根元に腰を下ろして眺めていた。 今日は風に冷気はなく、気持ちいい。横にある梅の枝には蕾がたくさんついている。その…

2016.03.01

「ご存知のように、わたくし、かつては志賀屋左衛門という名乗りで、市村竹之丞大夫の一門に入っておりました」 鹿野武左衛門のこの一言で、ざわついていた場がしぃんと静まり返った。 行儀…

2016.02.27

料理屋の控えの一室には、辻咄の芸人とその弟子や付き添いたちが大勢座っていた。 異様な雰囲気である。火鉢はあるが、それよりも芸人たちが発する熱気がより濃く室内に籠っていた。 ある者…

2016.02.25

絵具が並んだ石川流宣の部屋で、彦八は寝そべっていた。時折、頬杖をついて考えこむ。目の前には『軽口男』と書かれた帳面がある。彦八の咄のひかえ帳である。半分ほどは、自分の考案した笑話…

2016.02.23

彦八が料理屋から出ると、空には黄金色の満月が傘を開くかのように輝いていた。薫酒で火照り、美味なる肴で蕩けた顔を夜風が撫でる。「いやぁ、さすがは鹿野武左衛門様、お呼びしたわたくし上…

2016.02.20

今日も商家の番頭らしき男が数人、葦造りの咄小屋に来ていた。難しい顔で、舞台を睨んでいる。彦八や客たちはしきりに腕をさすって、空高くから吹き付ける冷風に耐えていた。 皆が見つめる先…

2016.02.18

鹿野武左衛門の葦で囲まれた小屋に、今日も番頭風の男が来ていた。帳面を持って、睨むように鹿野武左衛門の芸を見ている。いつもと違うのは、今日はひとりではなくふたりいることだ。「あれが…

2016.02.16

「えー、蚤とりぃ、猫の蚤とりぃ」 彦八は腰に狼の毛皮をいれた袋を括りつけていた。 往来を歩きつつ、考える。 笑話の頂点はお伽衆ではない。それを、昨日まざまざと見せつけられた。伽羅…

2016.02.13

「噓やろ」 連れてこられた長屋を前にして、彦八は呆然と立ち尽くした。さすがに彦八が間借りする四畳板間の長屋よりは立派だが、造りは一間多い程度で簡素だ。格子の隙間から見える室内には…

2016.02.11

中橋広小路の辻の一角が、葦でできた簾で囲まれていた。その中に彦八はいた。鹿野武左衛門が、葦張りの小屋と言っていたものである。天を仰ぐと、澄んで高くなった冬の空があった。簾や筵で壁…

2016.02.09

梅若を肩に乗せて、彦八は小走りに進む。頭の上で「右」とか「左」とか言う梅若の指示通りに、江戸の寒風を突き破る。そのうち、じっとりと汗ばみ体が温かくなってきた。 梅若が案内したのは…

2016.02.06

志賀屋の左衛門が住んでいるという堺町界隈は堀が多く、雰囲気が少し大坂の町中に似ていた。水と潮の匂いが懐かしい。 そんなことを考えつつ、彦八は歩く。ふと足を止めた。五歳くらいの童が…

2016.02.04

「えー、蚤とりぃ、猫の蚤とりぃ」 粉雪が微かに舞う路地を歩きつつ、彦八は声を上げる。「ちょっと、兄さん。猫の蚤とりって、いくらなんだい」 長屋から出てきた中年の女房は、どてらを厚…

2016.02.02

「おいらは笑話を極める。そう、里乃と大阪城にも約束した」。武士に戻ろうという二代目策伝の前で、そう約束した少年彦八。時は流れ、青年となった彦八は、いよいよ江戸へ。笑いを武器に権力…

2016.01.30

「そうか、やっと決断してくれたか」 宿所の畳に手をついて、友である森四郎右衛門は策伝の顔を見上げた。「ああ、待たせて済まなんだ。大人しく飛騨高山に戻る」

2016.01.28

笑話の台詞を呟きつつ、二代目安楽庵策伝は準備に余念がない。聞くのは朱の塗料が半分剥げた祠と、まばらに植わっている木立だけだ。難波村の広場に、二代目策伝はひとり立っている。

2016.01.26

抑揚をつけようとする己の声帯を、策伝は必死に押しとどめる。癖で大げさな表情をつくろうとする顔を、石のように固くした。奈良の大仏の顔を思い浮かべつつ、語調も淡々と続けていく。

2016.01.23

二代目安楽庵策伝は、己を不思議そうに見つめる何十という瞳にさらされていた。どれもつぶらで丸いのは、難波村の童たちだからだ。大人と違い澄んだ瞳は、なぜか己の無能な芸を映す鏡のように…

2016.01.21

 二代目安楽庵策伝は、夕焼けに染まる大坂の道を歩いていた。あの彦八という少年と同じ十二歳の頃、師である初代安楽庵策伝のもとを訪れた。あの頃は、大坂全体が童のように未熟だった。道頓…

2016.01.19

堂島の辻に立っていたのは、長身の僧侶だった。袈裟の上からもわかる、引き締まった体躯と長い手足を持っている。歳の頃は、四十になったかならぬか。老いよりも、鍛錬で保った精悍さを感じさ…

2016.01.16

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