今年はW杯イヤーだというのに、浮かれることもなく盛り上がることもなく、逆に重苦しい気持ちがのしかかっているのはなぜだろうか。
 周りのサッカー好きの人間に日本代表の話を振ってみると、苦虫を噛み潰したような顔を見せる者や、胸ぐらを掴んでくる者、ガールズバーで暴れる奴までいた。
 どうやら皆心が荒んでいるらしい。その理由も分かる。
 まず、昨年のブラジル/ベルギーと今回の欧州遠征で、最多得点者がDFの槙野智章だという事実に戸惑いを隠せない。
 攻撃陣がチグハグとして停滞しているのを尻目に、ブラジル戦で得点を決めるかと思えば、ベルギーのストライカー、ルカクを抑え込み、調子に乗った彼は勢いを付けて美人女優の高梨臨と結婚というゴールまで決め込み、また今回の遠征でも得点を決めるという、順風満帆そのものである。
 四六時中、荒涼とした氷原で遭難寸前の生活を送っている私にとっては、ハワイのワイキキビーチの映像を見せつけられているようなものである。
 槙野をクサすつもりで書き始めたのに、気づけば妬み嫉みしか書いていない自分が嫌になる。
 ここ最近の試合を振り返ってみると、アジア圏外の国に対して長らく勝ち星がない。
 ハリル・ホジッチは本番に向けて手の内を明かしていないのか。それともこれが精一杯なのかが我々には分からない。
 そんなモヤモヤとした不安が、人々の心を荒んでいるようである。
 当然、今回の欧州遠征には、W杯の対戦国である各国のスカウティング担当者が視察にきていたであろう。
 日本の弱点をあぶり出して本国に持ち帰ろうと躍起になっているはずだが、彼らの脳裏には間違いなく「勝利確定」の文字が浮かび上がっていたはずだ。

 W杯前の強化試合に関しては、2006年のジーコJAPAN、2010の岡田JAPAN、本番直前までは調子が良かったザックJAPAN然りで、強化試合の結果に一喜一憂するのは無意味である。
 常に世間の予想を裏切る結果ばかりになっているではないか。
 香川(怪我&私服が変)や乾や岡崎が呼ばれなかった日本代表を誰が想像しただろうか。
 はじめて高梨臨を見たときに、一体誰が槙野と結婚すると予想したであろうか。
 結婚式、神父の前で永遠の愛を誓ったときに、離婚することを予想するカップルがいるだろうか。
 世の中は、予想もつかない出来事が多々起きるもの。
 W杯本番前にはガーナ・スイス・パラグアイという強化試合が組まれているが、見ないふりをして過ごすしかない。
 そして、もしかすると本番では、これまでの姿は仮の皮を被っていただけで、雄々しく剥き身をさらして、確変を起こすかも知れない、という一縷の願いだけにすがるしかないのである。

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定