運動会の話の続き。

 僕らは不安を抱えたまま、運動会当日を迎えた。一生懸命やったけど、自分達がこれからやることに全然自信が持てなかった。死刑執行を待つような気分で、本番の時間を待つ。

 今日までの日々を思い返して、ひとつ意外だったのは、一軍のみんなが協力的だったということ。演舞を教えてくれたヤンキー先輩を紹介してくれたのは一軍のチサト君だったし、一軍の中で割とイジられキャラのキンヤ君は、練習に何度か顔を出してくれた(僕らの演舞に失笑してたけど)。きっと本当は、一軍のみんなも応援団、やりたかったんだと思う。「だりー」とか「意味なくね?」とか言いながら、本当は、心のどっかで何か打ち込めるものを求めていたんだと思う。

 本番1分前。不安は消えない。自信も湧いてこない。でも、今日まで俺たちは頑張ったんだ。何度も自分にそう言い聞かせる。
「次は、白団による応援パフォーマンスです」
 さあ、行こう。なるようになるさ。きっとうまくいく。

 惨敗だった。惨め、という言葉がよく似合う、大失敗だった。

 やること全てがグダグダだった。団員の動きが揃わない明らかなミスが、何度もあった。担任のリュウ先生のアドバイスで、僕らはヤンキー仕様の学ランではなく剣道の袴を着て臨んだんだけど、終始、そのことがどうしようもなく恥ずかしかった。演舞の最後に紙テープをみんなで投げる、という小細工を仕込んでいたんだけど、それも全然遠くに飛んでくれなかった。僕の心はずっと死んでいた。心のどこかから「お前、終わってるぞ」という声がずっと聞こえていた。演舞中、藤園中学校の校庭は、ただただ静まり返っていた。

 運動会が終わったあと、校庭にクラスみんなが集まり、その前であいさつをすることになった。みんなの前に立つ。一軍のやつらがいる。好きな女子の和泉さんがいる。応援団には入らなかった二軍の仲間がいる。僕は、一生懸命がんばりました、ということだけ言おうと思った。口を開いたら、それと同時に、涙が溢れだした。何もしゃべれなかった。涙がぼろぼろとこぼれ続けて、全然止まってくれなかった。

 僕は胴上げをされた。一軍と二軍のみんなが、胴上げをしてくれた。

 教室に戻って帰りの準備をしていたら、一軍のチサト君が、申し訳なさそうな顔で僕に近づいてきて、こう言った。
「柴ちゃん、先輩たちが体育館の裏に来いって言ってる」
 は!?なになになになに?割と感動的に応援団のことは終わったはずなんですけど?この期に及んで俺ら呼び出したりする?まじかよ、それがヤンキークオリティっすか、ちょ、ほんと勘弁してくれよ……。

 行きましたよ、体育館裏。僕とイマムとヒロ君の3人で。卒業したはずの一軍先輩ヤンキーが勢揃いでした。リーダー格のナカタ先輩(お洒落で笑いにも定評があるがキレたらまじ残酷なことをする狂犬)が、身体をゆらゆら揺らしながら、こう言います。
「柴ちゃんさあ、ダセえことすんなよ。藤園が舐められんだろ?」
 俺やっぱ一軍つうかヤンキー嫌いだわ!!!!!!!!

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