日本人成人の8割がかかっていると言われる最大の国民病をご存じですか?
 それは歯周病。そして歯周病は、皆あまり深刻だと思わず、ちゃんと治療しない病気の筆頭でもあります。
 でも!
 糖尿病、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎ほか、多くの重大な病気の発症が歯周病と深く関わっているとしたら?
 糖尿病専門医である西田亙先生が『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい~内科医が教えるお口と体の健康の新常識~』を執筆した背景には、先生の身に訪れた、人生の一大転機がありました。

 * * *

 私は内科医で、専門は糖尿病です。愛媛県の松山市で糖尿病の専門クリニックを開業していますが、この数年間は、全国の歯科医師会、歯科衛生士会、行政などからお声かけいただき、お口の健康の大切さをメインテーマに、ほとんど毎週末、講演活動を行っています。

 糖尿病の専門医が、なぜお口の健康を?

 みなさん、不思議に思われるのですが、そのきっかけは、私自身の8年前の体験にさかのぼります。

 8年前、愛媛大学医学部附属病院の糖尿病内科に在籍していた私は、立派な「歯周病男」でした。当時の歯磨きは朝に一度だけ、しかも5秒ほど。リンゴをかじると本当に血が出ていました。「口臭がひどい」と家族に文句を言われても何のその、小学生のとき以来、歯医者さんにお世話になったのは、むし歯治療と親知らずを抜いたときだけでした。

 さらに、当時は体重が92キロ! 血圧も血糖値も高く、糖尿病専門医であるにもかかわらず、メタボ(メタボリックシンドローム)の権化、糖尿病予備軍だったのです。おまけに重症の不整脈もあって、同級生の循環器医師からは「お前、このままだったら死ぬぞ。早く手術したほうがいいぞ」と本気で心配されていたほどです。

 そんなとき、愛媛県歯科医師会との共同研究を立ち上げることになり、言い出しっぺの私が歯周病男ではマズいと思い、やっと重い腰を上げて歯周病の治療をすることにしました。

 このときの歯医者さん・歯科衛生士さんとの出会いが、私の人生を大きく変えました。歯科衛生士さんに歯垢(しこう)と歯石(しせき)を取ってお口の中をピカピカにしてもらい、正しい歯磨きと歯間清掃(歯と歯の間の掃除)のやり方を教えてもらった私の体に、奇跡とも思えることが起こったのです。

 まず朝だけでなく、夕食後の歯磨きとデンタルフロスが習慣になると、長年の夜食が止まりました。

 それまでは、大学病院から夜の10~11時に帰宅すると、ケーキ、アイスクリームやラーメンなど食べ放題。ですが、夕食後の歯磨きとフロスでお口がきれいになると、夜食で口の中を汚したくないと思うようになりました。せっかく台所をきれいに片付けたあとで、家族に汚されたら、怒りたくなりますよね。これと同じで、お口の中も、一度きれいにすると、汚したくなくなるわけです。

 夜食が止まると自然に体重が減り始め、そうすると運動やウォーキングをしたい気持ちが起こり、約1年で18キロのダイエットに成功しました。

 そして、高血圧や高血糖、重症の不整脈など、抱えていた病魔はすべて退散。私は歯医者さんと歯科衛生士さんに、まさに命を救われたのです。

 こうして歯科医療の素晴らしさを体感した私は、それまでまったく興味を持っていなかった歯科の勉強・研究を始めました。そして、勉強を続けていると、糖尿病をはじめとする多くの体の病気が、お口の健康と深くつながっている科学的事実が次々と見えてきたのです。
 

イラスト 坂木浩子

 それと同時に、こんなに大事なことが一般の人たちに知られていないだけでなく、医療関係者でも知らない人が多いことも、わかってきました。

 そこで、私の体を救ってくれた歯科医療への恩返しとして、また、お口の健康と体の病気の関わりを1人でも多くの人に伝えなければいけないという使命感から、全国行脚(あんぎゃ)の講演や執筆活動を行うようになりました。

 ありがたいことに、ある小児歯科の先生から「日本でいちばん歯周治療にうるさい糖尿病専門医」と命名され、とても名誉なことだと思っています。

 本書では
◎日本の糖尿病の現状と背景
◎糖尿病と歯周病を結びつける大切なキーワード「慢性炎症」とは何か、歯周病はどんなに恐ろしい事態を招くか
◎いま歯周病治療のうえで注目されている乳酸菌・ロイテリ菌という乳酸菌の効果
◎お口を健康に保つための歯磨きの仕方
◎お口から健康になるために欠かせない5つの習慣
 についてお話しします。

 お口の健康は、さまざまな体の病気と関わりがあり、歯周病は全身の健康に暗い影を
落としています。とくに、糖尿病と歯周病の関係は、「コインの裏表」と言っていいほ
どです。この大事な事実を本書を通して知っていただき、さらにご家族や友人にもぜひ
伝えてほしいと切に願っています。

 * * *

『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい~内科医が教えるお口と体の健康の新常識~』の刊行を記念して、3月24日(土)14時から、三省堂書店池袋本店で、西田亙先生のトーク&サイン会(盛りだくさんのお土産つき!)が開催されます。詳細はこちらからどうぞ。

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西田亙『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい~内科医が教えるお口と体の健康の新常識』

こんな大事なこと、誰も教えてくれなかった!

■40歳以上男性の2人に1人、女性の3人に1人は糖尿病か糖尿病予備軍
■糖尿病と歯周病は「慢性炎症」でつながっている
■洗口剤やうがいだけでは、お口の汚れはとれない
■腸だけでなくお口にも効く、話題の乳酸菌・ロイテリ菌とは?
■歯間清掃が死亡リスクを引き上げる効果は、お薬以上