新刊『アルテイシアの夜の女子会』絶賛発売中である。
本書で対談している金田淳子さんに会った際、神戸在住の私が「また関西に旅行する時は連絡くださいね」と言ったら「旅行とかしないんで!」と笑顔で返された。

世の中には旅行するJJと旅行しないJJがいる。私はまあまあ旅行する派のJJ(熟女)だ。

去年も女子校の同級生三人で沖縄を旅した。かつての日本にはガングロブームがあり、我々も「太陽は友達!」とばかりにビキニでビーチを闊歩していた。

だがJJになると、紫外線を放射能のように恐れる。
沖縄ではシーカヤックに挑戦したのだが、全員が長袖のラッシュガード+足首までのスパッツ+サングラスを着用して、常夏の島でスピードスケートの選手みたいになっていた。
それだけ完全防備したのに、足の甲に日焼け止めを塗り忘れて、黒焦げになった。いつか天の川のようなシミができて「みんなで旅行したっけな…」と懐かしく思い出すのだろう。

カヤックを漕ぐ前に、ガイドさんが紐付きの麦わら帽子と白いタオルを貸してくれた。それで顔と首を覆って三人で記念撮影したら、完全に「生産者マークの農婦たち」だった。インスタ映えからは程遠いが、写真に写る我々は白菜が大豊作だったかのような笑顔だ。 

JJ旅は楽しい。最高に楽しい。前回「若い女は何かと注目されがちだ」と書いたが、おばさんは注目されないので、すこぶる気楽で自由なのだ。

若い女が三人旅していると、何かと声をかけられる。街中や飲食店でナンパされたり、新幹線でキャッキャウフフしてたら「おじさんたちと飲もうよ」と誘われたり。日頃の憂さを忘れたくて旅してるのに、なんでホステス役をせなあかんねんという話だ。

「わかります!ほっといてくれって思いますよね!」と20代女子も同意する。
彼女は国内をよく一人旅するそうだが、「温泉地に女1人で行くと悪目立ちするんですよ。宿の人にもやたら気を使われて、泥沼不倫をこじらせた女とかに見えるんでしょうね」とのこと。

「温泉街で試食のまんじゅうを食べてたら、店のおじさんが隣にいた男性客を恋人と間違えて『よかった!お姉さん、1人じゃなかったんだね!』と話しかけてきて。『いや1人ですけど?』と返したら『ご、ごめんな…これあげるわ…』とオマケでまんじゅうをくれました」

オマケでまんじゅうをもらうのは嬉しいが、「若い女が1人やとあかんのか?」と言いたくなる。その点、JJはひなびた温泉街に馴染むので単独行動しても目立たない。むしろ宿の仲居さんと間違われる可能性がある。

男の一人旅は「浪漫」「冒険」と語られるのに、女の一人旅は「孤独」「不倫」とネガティブな連想をされるのは頭にくる。一人旅を楽しむ女だって沢山いるのだ。
鉄道オタクの女友達は日本中の鉄道に乗りまくり、47都道府県を制覇している。

オタク=インドア、引きこもり等のイメージを持たれがちだが、現代のオタクは超アクティブだ。
フィギュアスケートオタクの友人は世界中を遠征していて「今はブカレストに来ています」とSNSにアップしている。私など「ハンガリー?ルーマニア?」とどこの首都かもわからない。

彼女いわく、空港の入国審査で「スケートの大会のために日本から来た?じゃあ選手か関係者なのね?え、違うの?」と追及されて「単なるオタクではるばる日本から来た」と理解されるのに時間がかかったという。
かかるのは時間だけじゃない。「スケート沼は一番金のかかる沼」と噂に聞くが、海外遠征は旅費だけで何十万もかかるし、試合やショーのチケット代も高いのだとか。

やはりこの国はオタクが経済を回している。

オタクの女友達は漫画『ハイキュー』の聖地巡礼をした時、通りすがりのおばあさんに「ハイキューさん?」と声をかけられたという。彼女いわく「ハイキューが町興しになってて、聖地巡りを推すホテルやお店もあって、ファンの受け入れ体勢がすごいです」とのこと。

特に有名じゃなかった地域にもたらされた経済効果は大きいだろう。我が町・神戸にも何かないか。神戸はウスターソース発祥の地なので、ソース作りに青春をかける若者の漫画をジャンプで連載してほしい。

新刊では20代の頃、沖縄の離島で島の若者とアオカンに及んだ話を書いた。ハブに噛まれたらどうするつもりだ。当サイトの金田さんとのはみだしトークで「アニマルパニック系の映画ではセックスしてる奴から食われる」という話をしたが、自分がスネーク・フライトになるところだった。

振り返ると、若い頃は命知らずだったと思う。
女友達とボルネオに旅行した時、キナバル山という富士山より高い山に軽装&スリッパで出かけて、どしゃ降りにあった。「木の実ナナになりきるんや!」と脚を出して決死のヒッチハイクを行い、どうにか軽トラを停めて帰ったこともある。

若い頃は分別がなかったが、体力はあった。現在は体力がないため、無茶もしなくなった。
友人たちは「ちなみに残業もしなくなった。ヘタに体力があると『もっとやらなきゃ』とか思うけど、今は体がもたないからサッと帰る。JJになってよかったわ~」と口をそろえる。
もちろん休日出勤などもせず、むしろ有給を根こそぎ使って旅に出かけるJJたち。

私は「旅行は女同士に限る」という意見だ。温泉などは特にそう思う。
女同士で湯につかって、テッカテカのすっぴんで部屋に戻る。部屋でさんざん飲み食いした末に布団に雪崩込み、翌朝は浴衣がはだけて帯一本、が理想の姿だろう。

20代の頃、彼氏と温泉宿に泊まり、夕食後にセックスを求められ「こんな腹パンパンでできるか!」と断ったらケンカになった。男は貸し切り露天風呂でもエロ行為をしたがるが、そんなもん死ぬほどのぼせるし、修行したくノ一じゃないと不可能だ。
私は貸し切り露天風呂に入ると「これは湯の花か?精液か?」とつい凝視してしまう。

以前も登場したカツラダカツオさんと付き合う友人は、温泉で彼がヅラを外した時に「抜け感を演出?」と聞いたら、ものすごく不機嫌になられたそうだ。

カップルで旅行してケンカした、という話はよく耳にする。その点、女同士は平和だ。みんなでシートパックを貼ってスケキヨ面でトークするのは至福の時間。

九州の温泉に行った時、湯の表面に長い丸太が平行に浮かんでいた。他に客がいなかったので「内村航平!」「ミッションインポッシブル!」とか言いながら遊んでいたら、手がすべって頭から湯につっこみ、リアル犬神家になった。

「ほんと女同士の方が平和ですよね」と20代の女友達もうなずく。「彼氏と二泊三日でグワム旅行した時、彼が張り切って薬局で精力剤を買ったんです。飲んでも特に変化は起こらなかったのが、帰国する飛行機の中で『いててて、ちんこがもげる!』と騒ぎ出して」

飲んで一日以上経過してから、突然ちんこがギンギンに覚醒したらしい。

「近場のグワムでよかったです、メキシコだったら16時間ぐらい飛行機に乗りますから」と語る彼女は、学生時代、メキシコでホームステイした経験がある。

当時、ホストファミリーに気をつかってパンツだけは洗濯機に入れず、風呂で洗ってこっそり干していたらしい。
「ホストファミリーは『あいつパンツ履いてないのか?』と謎だったでしょうね。それが帰国する日、脱ぎたてのパンツを忘れて帰ったんですよ。日本の伝統文化と誤解されたかもしれません」

けっして人にはパンツを見せず、最後に脱ぎたてのパンツを残して去る、和の心。「日本人は変態か?」とメキシコ国民に印象づけたことだろう。

彼女のような20代女子の母親は50代のJJ盛りで「子育ても終わって、人生を謳歌してますよ」という話をよく聞く。
「うちの母はママ友とジャズバンドを結成して、ライブハウスで演奏してます」とか「韓流アイドルにハマって、女友達と韓国ツアーに出かけてます」等など。
そんな母親をもつ娘たちは「世間は30過ぎたら終わりみたいに不安を煽ってくるけど、母を見てると『JJ、楽しそう!』と思えます」と口をそろえる。

我々アラフォーの母親世代は70前後のアラ古希だが、まだまだ元気な女性が多い。うちの義母もババ友たちとツアー旅行に出かけて「若い頃のような体力はないけど、早朝出発でも平気」「筋肉痛がくるのも遅いから、旅行中はわりと元気に歩ける」とBBAあるあるを語っている。

その娘世代が集まると「母親は女友達としょっちゅう出かけてるけど、父親はずっと家にいるみたい」「うちもそう。母親が旅行する時は『お父さんの世話よろしくね』と頼まれて、ペットシッターの気分」とJJあるあるが語られる。そして「マジで父親に先に死んでほしい」「わかる!」と頷き合っている。
娘に死を願われないためにも、お父さんたちは家事スキルを磨いて、自分の世話は自分でできるようになってほしい。

1人暮らしの高齢男性の調査で「自分は今幸せだ」と答えた人に共通するのは「会社であまり出世してないこと」…というのを読んで「なるほど!」とヒザを打った。
滅私奉公で働いてこなかったぶん、仕事以外の人間関係や趣味があって、毎日が充実しているのだろう。

老後に金がないと詰む。だが金しかなくても詰む。退職して抜け殻のように過ごすには、老後はあまりにも長い。人生100年時代を生きるには、仕事はそこそこでプライベートを充実させるのがベストなのかもしれない。

「100年もいらねえ」とボヤいたところで、寿命は自分で決められない。今や中学生すら「老後が不安」と語るそうだが、私は初老ゾーンに足を踏み入れて「これはこれで悪くない」と思った。

若い頃は隣の芝生が青く見えがちで、他人と自分を比べては、自分に無いものを持つ人を羨んだ。だが40を越えると、仕事・子育て・親の介護・自身の健康問題…等など、みんな何かしら抱えていて「それぞれ喜びも苦しみもある」と実感した。そして「苦しい時は支え合おうぜ!」と女同士の連帯が強くなった。

苦しい時もあるからこそ、旅先では最高に愉快に過ごしたい。将来薄毛になった暁には、温泉で女性用ウィッグを外して「抜け感を演出!」と笑い合いたい。
でもババアが頭から湯につっこむと心臓が止まるので、リアル犬神家にならないよう注意したいと思う。

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アルテイシア『アルテイシアの夜の女子会』

「愛液が出なければローションを使えばいいのに」「朝からフェラしてランチで口から陰毛が現われた! 」とヤリたい放題だった20代。「男なら黙ってトイレットペーパーを食え! 」「ヤリチンほどセックス下手」と男に活を入れていた30代。子宮全摘をしてセックスがどう変わるのか克明にレポートした40代。10年に及ぶエロ遍歴を綴った爆笑コラム集。

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