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それでも猫は出かけていく

2018.03.16 公開 ツイート

薬・くすり 思想家・吉本隆明氏の家に集う猫の話 その9 ハルノ宵子

思想家・吉本隆明氏の家に集う猫と人の、しなやかでしたたかな交流を綴った『それでも猫はでかけていく』より、試し読みをお届けします。

 病気になった時、薬に頼る人がいます。新薬にはすぐに飛びつき、副作用が出ればまたその副作用を抑える薬を追加したりします。一方西洋医学の薬を敬遠し、漢方や気功、民間療法で病気を治そうとする人もいます。

 そんな飼い主の趣味嗜好は、そのまま飼い猫にも持ち越されます。迷惑(?)なのは猫の方で、何も知らぬまま飼い主のシュミと一蓮托生です。

 私はどちらにも偏らないよう心がけているつもりなのですが、やはりイザという時は西洋医学に頼らざるをえません。よく長期間ステロイドや抗生物質を使っていたせいで、焼いたらお骨がボロボロだった、などと怖がる人がいますが、死んでからお骨がボロボロで「なんぼのもんじゃい!」と思います。短い猫の一生、まして我家には難病や大病をかかえて来る猫も多いので、生きている間が華なのです。いかに苦痛が少なく、飼う側の負担も最小限で、快適に過ごせるか……が、すべてです。

 我家のかかりつけ「D動物病院」は、どちらかというと薬好きです。ただ院長の観察眼が優れているのと、薬量や抜き方などの匙加減が絶妙なので、投薬ミスや副作用で危険にさらされることは、まず無いと安心しています。

 よくD院長が取る方法に、あてずっぽう投薬があります。どこが痛いの苦しいのと、症状を説明できない動物たち。通り一遍の検査データにも特に異常が出てこない場合、まずは当て推量で2、3日投薬してみるのです。それで症状が改善すれば当たりで、そこから逆に病名も推察できる訳です。

 この方法は決して人間には許されません。病名が確定されるまでは治療にも入れず、とにかく検査検査の毎日で、お年寄りや重病人などは、それだけでまいってしまいます。
 病名なんぞは後からついてくればいい。「まずは症状の改善ありき」という動物の医学の方が、よっぽど人道的だよなぁ……などと思ってしまいます。

 とは言うものの、現在我家はものすごいことになっています。シロミが神経回復のステロイドと尿酸化サプリ、クロコが抗生物質と体内毒素を吸着させる炭素剤、フランシス子とヒメ子が白血病の発症を抑えるインターフェロン。夏の休暇で、数日間全員を「D動物病院」に預かってもらうため薬の説明を始めたら、「うぇ? めんどくせーなー!」と院長。……って……「全部あんたの指示やろがー!」。

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