皮下脂肪より危ない内臓脂肪。そのまま放置すると高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種のがんや認知症の原因になることもわかってきました。奥田昌子さんの最新刊『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』(幻冬舎新書)は、肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを最新の論文をもとに解説していて、続々重版となる大反響です。

 今回は、奥田さんの考える「内臓脂肪を効率よく減らすための生活習慣」をご紹介します。朝晩ひと駅分、今より30分多く歩くだけで10ヵ月後には腹囲が約9センチ小さくなる!?

 

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あと3000歩多く歩けば脂肪が落ちる

 体を動かす習慣が、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防と改善に役立つことを示す研究は無数にあります。とくに有酸素運動は行えば行うほど内臓脂肪が減少するため、厚生労働省は以下のいずれかの方法で有酸素運動を実施するよう、すすめています。

・息がはずむ程度の運動を30分間、週に5日以上行う。

・1日の歩数をそれまでより3000歩増やす。これは、おおむね30分の歩行に相当する。

 どちらかにこだわる必要はなく、運動できない日は遠回りして歩いて帰る、というふうに、柔軟に実施すればよいのです。大切なのは続けることです。日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会も、これと同程度の有酸素運動がそれぞれの病気に有効だとしています。

 健康ブームのなかで、有酸素運動という言葉はすっかり有名になりました。ここでおさらいしておくと、有酸素運動とは、酸素を十分取り入れながら、あまり強くない運動をじっくり行うことをいいます。

 その代表がウォーキングとかジョギング、サイクリング、水泳です。ウォーキングといってものんびり散歩するくらいではいけません。厚生労働省の提案に「息がはずむ程度の運動」とあるように、かなり速足で汗ばむくらいの速度で歩いてください。一緒に歩いている人と、かろうじて笑いながら話ができるスピードが目安です。

 では、この運動でカロリーをどのくらい消費するでしょうか。体重60キロの人が有酸素運動を30分間行うと90キロカロリー使います。普通盛りのご飯を小盛りにするのと同じくらいですね。

 運動によって消費するエネルギーはその人の体重によって変わり、同じ運動をしても、重い人ほどカロリーを使います。それだけの荷物を背負っているのと同じなので、その分、エネルギーが必要だからです。

 これに加えて、脂肪をひかえ、炭水化物を摂り過ぎないようにして、食事からの摂取カロリーを1日110キロカロリー減らしたとしましょう。運動による消費カロリーと合わせると200キロカロリーの減少になります。なんと大きなバナナ2本分です。

 これを10ヵ月続けると、カロリー消費は60000キロカロリーに達します。あの公式を思い出してください。

 腹囲1センチ=内臓脂肪1キログラム=7000キロカロリー

 これに当てはめて計算すると、10ヵ月で内臓脂肪が約8.6キログラム取れて、腹囲が約8.6センチ小さくなります。これはもう、やるしかないでしょう。

 ウォーキングとジョギングでくらべると、ジョギングのほうがカロリーを消費しますが、細かいことにこだわるより、無理せず長く続けることが大切です。

 帰る時間が遅いから、ウォーキングするのは難しいですか? ご心配なく。厚生労働省の2番目の提案を見てください。特別な運動の時間を設けなくても、1日の歩数をそれまでより3000歩増やせばよいのです。

日本人は意外に運動している?

 毎年、世界人口の10パーセントにあたる人たちが、運動不足に関連する病気で死亡するといわれています。とくに肥満による健康障害は深刻で、先進国でも途上国でも大きな社会問題になっています。日本も例外ではなく、男性の肥満率が高止まりしています。

 そんななか、米国スタンフォード大学の研究者らが、世界111の国と地域で暮らす72万人近い人を対象に、1日あたりの平均歩数を調べました。

 これほど大規模な調査を実施できたのは、スマートフォンを活用したからです。歩数を計測できるアプリをスマートフォンに入れている人のデータを集め、年齢と性別、ならびに身長と体重から計算したBMIと合わせて分析しました。

 こうして発表された論文によると、世界の人の平均歩数は1日4961歩でした。5000歩弱ですから、思ったより少ないですね。1日の歩数がもっとも多かったのは6880歩の香港で、もっとも少なかったのが約3500歩のインドネシアでした。

 さて、日本はどうだったでしょうか?

 なんとびっくり、6000歩も歩いていて、おもな国のなかでは中国の約6200歩に続く世界2位でした。米国は4800歩、ブラジルは4300歩です。米国人はジョギングやエアロビクスに打ち込む人が多いイメージがあるだけに、1日の歩数が世界の平均以下というのはちょっと驚きです。

 この研究とは別に、運動不足の人の割合を調べた世界保健機関(WHO)の統計があります。これによると、運動不足の米国人が43パーセントだったのに対して、日本人は65パーセントにのぼりました。この統計では、ジョギングなどの適度な運動を行う時間が1週間に30分未満の人を運動不足としています。肥満大国である米国より運動量が少ないという結果は日本でも大きく報じられ、医療関係者に衝撃を与えました。

 それなのに、今回の調査で日本人の平均歩数が米国を大きく上回っていたのはなぜでしょうか。

 おそらく米国は、しっかり運動する人がいる一方で、まったく動かない人もかなりいて、この人たちが肥満率を押し上げているのでしょう。もしくは、ジムで鍛えてはいても、普段は車ばかり使う人が多いのかもしれません。

 この研究では、それぞれの国の人の歩数にどのくらいばらつきがあるかも調べており、これによると日本人は歩数のばらつきが少なく、男女の歩数もほぼ同じでした。

 つまり、日本はジョギングをしたり、ジムに通ったりするなどの運動習慣を持つ人は少なくても、誰もが日常生活のなかで意外に歩いているのです。大変よいことです。ただし、内臓脂肪を落とそうと思うと、あと一歩、足りません。すでに6000歩、歩いているのですから、あと3000歩、せめて2000歩増やすのが理想です。

 駅までバスを利用しているのを自転車に代えてもいいですね。片道10分として往復20分乗れば、あと10分だけ歩くなり、ジョギングなりすればいい。小型のエアロバイクを持っているなら、テレビを観るときは必ずこぐことにすれば、30分なんてあっというまです。

 

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奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法

本当の恐怖(がん、生活習慣病、認知症 etc.)は、「皮下脂肪」ではなく「内臓脂肪」だった!
肉中心の食生活をしてきた欧米人と比べ、魚と穀物中心だった日本人は摂取した脂肪を「皮下脂肪」としてたくわえる能力が低く、より危険な「内臓脂肪」の形で蓄積しやすい。放置すれば高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種がんや認知症の原因になることもわかってきた。だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結するのだ。肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。読むほどやせる内臓脂肪の新常識。