皮下脂肪より危ない内臓脂肪。そのまま放置すると高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種のがんや認知症の原因になることもわかってきました。奥田昌子さんの最新刊『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』は、肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを最新の論文をもとに解説していて、発売1週間で重版となる大反響です。

 今回は「朝食を抜くと太る」「寝る前に食べると太る」というウワサの真相について、奥田さんの見解をご紹介します。

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夜遅い時間に食べると本当に太るのか

 ある調査によると、帰宅が遅いために、夕食から寝るまでの時間がわずかしかない人が男性は6割、女性は4割にのぼるそうです。

 朝から夕方まで働く一般的な仕事についている正社員の人を対象に、平日の夕食開始時間を調べた統計からは、30代に入るころから夕食の時間が遅くなることがわかります。もっとも遅いのが30代後半から40代後半の働き盛りの世代で、平均で夜8時近くなってから夕食を食べ始めています。

 残業に追われ、気がついたらおなかに脂肪がたっぷり付いていたという人もいるでしょう。仕事で遅くなるのはしかたないとはいえ、理想としては、夕食は早めにすませるほうがよいのでしょうか。

 夕食の時間が遅かったり、夜食を摂ったりすることで、夜間に摂取するカロリーの割合が1日の摂取カロリー全体の25パーセントを超えると、健康によくない影響がおよぶといわれています。これを夜食症候群といい、厚生労働省はメタボリックシンドロームにつながるおそれがあると注意を呼びかけています。

 ところが意外なことに、遅い時間に食べるとなぜ太りやすいのかについては、完全に解明されているとはいえません。それどころか、食事内容も運動量も体格も同じ人が2人いるとして、片方の人だけ夕食の時間が遅かったら、その人だけ太るのかについても、厳密な研究で確かめられているわけではないのです。

 いくつかある説明のなかで注目されているのが、脂肪細胞から分泌される善玉物質、レプチンが減るというものです。レプチンは、普段は脂肪がたまると分泌が増えて、食欲をおさえる働きをしています。ところが夜遅い食事が続くと、レプチンの作用が低下して食欲が高まってしまうのです。

 また、脂肪の合成を促すBMAL(ビーマルワン)という蛋白質があります。面白いことに、このBMAL1は夜になると濃度が上がります。そのため、夜間にエネルギーを脂肪の形でたくわえて、翌日の活動に備えているのだろうと考えられています。遅い時間に食べたものは、BMAL1の働きで脂肪に変わりやすいかもしれません。

 さらには、食事誘発性熱産生(DIT)が低下するという説明もあります。DITは食べたものを分解する際に出る熱のことです。食事をすると体が温かくなって、なかには汗をかく人もいますね。これがDITで、遅い時間に食べるとDITが低くなるようです。こうなると消費するエネルギーが少なくなるので脂肪が増える可能性があります。

 これに加えて、夜は腸の消化活動が盛んで食べたものが吸収されやすいとか、インスリンが脂肪の合成を促進するなどの主張もあります。どの説明にも科学的なデータがあり、おそらくは、いくつもの現象が重なって起きていると思われます。

 しかし、長い目で見て実際に内臓脂肪が増えるかは別問題です。

 それは、どんな時間に食べたって、100キロカロリーは100キロカロリーだからです。夜の100キロカロリーが、グリコーゲンの形で筋肉にたくわえられる代わりに内臓脂肪になったとしても、翌日エネルギーを使えば同じことです。脂肪の蓄積は家計と同じで、基本は収入と支出のバランスです。摂取したエネルギーから消費したエネルギーを引き算して、残った分しか脂肪になることはありません。

 夜遅い時間に食べて太ったとしたら、食べ過ぎによるものだと思います。遅くまで仕事して、ようやく帰宅できた解放感から、ビール片手に脂っこいおかずを食べたり、自分にごほうびとアイスクリームを平らげたり、冷たい果物を食べ始めたら止まらなくなったりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。これだけのものを食べれば脂肪が付いて当たり前です。

 こんなことにならないようにするために、本来の終業時間である夕方に、何か口に入れておきましょう。アルコールのところで書いたように、炭水化物は満腹感を与えてくれますし、素早くエネルギーになります。ここでも便利なのがおにぎりですね。

 帰宅してから食べる夕食は、おにぎりの分だけカロリーを減らします。脂肪が少なく、野菜からビタミンを摂取できるような料理にすれば、胃腸に優しく、ぐっすり眠れます。

「朝食を抜くと太る」に医学的根拠はない

 夜ふかしして朝起きられず、朝食を食べずに登校する子どもが問題になっています。こんなニュースを聞くと、それじゃ授業に身が入るわけがないと感じる人が多いでしょう。大人だって一緒だ。食べなきゃ仕事にならないし、朝食を抜くと太るっていうよね。だから、時間がないときはコンビニで買って、会社で急いで食べるようにしているよ。

 ご飯とお味噌汁であれ、トーストとコーヒーであれ、朝の食卓の香りは頭をすっきりさせ、食欲をかきたてます。家族の笑顔があって、ささやかな幸せを感じるひとときです。しかし、日本で誰もが朝食を摂るようになったのは300年くらい前のこと。朝食の歴史は意外に浅いのです。

 日本は夏が蒸し暑いので、農民は夜明けとともに田畑に出て、気温が上がる10時くらいになったら家に戻り、そこで朝と昼をかねた食事をしていました。そして夕方に晩の食卓を囲み、暗くなると床についていたのです。身分の高い人も同様で、1300年代の記録によると、後醍醐天皇は朝食を正午ごろ、夕食を夕方4時ごろ召し上がっていたそうです。

 そんな日本人が1日3食食べるようになったのは元禄時代、西暦1700年ごろといわれています。その理由として、1657年の「明暦の大火」のあと、江戸の町を復興するために多くの職人さんが集まり、外食産業が栄えたこと、そして、照明用の菜種油の普及により、夜遅くまで活動できるようになって、生活パターンが変化したことがあります。

 では欧米はどうかというと、米国で朝食が当たり前になったのは、1910年にエジソンが電気トースターを発明したのがきっかけという説があります。このトースターで大もうけしようと考えた業者が、朝食の大切さを説いて回ったというのですね。

 ただ、ヨーロッパでは、16世紀には朝食を食べる習慣が定着していたようですから、エジソンのトースターの話は、そのおかげで朝の食卓が豊かになったという意味でしょう。中世以前のヨーロッパでは、朝食は子どもや高齢者、病人など、弱い人が食べるものと考えられていたようです。

 人の体が数百年で大きく変わることはないでしょうから、朝食を食べないだけで病気になるとはちょっと考えられません。実際に、朝食を食べる習慣がない人がときどきいます。子どものころは普通に食べていたものの、大人になってから、むしろ食べないほうが体調がいいことに気づいた、というのがその理由です。

 もちろん、この逆に、朝食を抜くと集中できないという人も大勢いますが、それは、ずっと朝食を食べてきたことで、体のリズムがそれに合わせてできているからです。

 でも、朝食を抜くと脂肪が付きやすくなるのでは?

 いえ、その心配もないと思います。先に述べたように脂肪の蓄積は収入と支出のバランスで決まります。摂取したエネルギーより、消費したエネルギーのほうが大きければ太ることはありません。1日に摂取するカロリーが同じであれば、これを2回に分けて摂っても、3回に分けて摂っても、たいした違いはないはずです。

 問題は食べ過ぎなのです。朝食を抜いたら太ったという人は、その分、昼食でドカ食いしていないか、かえりみてください。

 朝食を食べるかどうかは、これまでの習慣や生活パターン、そして、食べるのと食べないのとで、どちらが体調がよいかにもとづいて、それぞれ判断すればよいでしょう。

 ただし、小さな子どもは胃が十分に発達していないため、1回に少しずつ、何回かに分けて食べる必要があります。子どもがおやつを食べるのは、このためです。健康な大人であれば、1日2食でも3食でもかまいません。

 大切なのは、自分が何をどれだけ食べているか頭のすみでチェックすることです。目の前の1食だけを気にするのではなく、1日単位、1週間単位、1ヵ月単位で考えてください。昼に食べ過ぎたら夕食を軽くすればよいし、飲み会があったら、それから3日くらいひかえればいい。月初めに歓送迎会が続いたら、月末まで用心して過ごせばよいのです。

 内臓脂肪は普通預金です。付きやすいけれど落ちやすい。手綱を放してしまわない限り、いっとき増えても、まもなく消えていくはずです。

 

 

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次回は3月25日公開予定です。

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奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法

本当の恐怖(がん、生活習慣病、認知症 etc.)は、「皮下脂肪」ではなく「内臓脂肪」だった!
肉中心の食生活をしてきた欧米人と比べ、魚と穀物中心だった日本人は摂取した脂肪を「皮下脂肪」としてたくわえる能力が低く、より危険な「内臓脂肪」の形で蓄積しやすい。放置すれば高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種がんや認知症の原因になることもわかってきた。だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結するのだ。肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。読むほどやせる内臓脂肪の新常識。