皮下脂肪より危ない内臓脂肪。そのまま放置すると高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種のがんや認知症の原因になることもわかってきました。奥田昌子さんの最新刊『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』は、肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを最新の論文をもとに解説していて続々重版となり、反響を呼んでいます。

 今回は、奥田さんがおすすめする内臓脂肪を効率よく減らすための食事法をご紹介します。

 

iStock.com/runin

食事の工夫で肉の脂肪は減らせる

 健康を維持するには肉も脂肪も摂取する必要があるけれど、食べ過ぎてはいけません。家庭で肉を食べるときに、余分な脂肪をおさえるための工夫はあるでしょうか。

 肉は部位によって脂肪の量が違い、同じグラム数でくらべると、ふちに脂身が付いたロース肉にはヒレ肉の5倍以上の脂肪が含まれています。そのため、通常の大きさのローストンカツが460キロカロリーあるのに対して、ヒレカツは270キロカロリーです。こんなに違うのですね。

 鶏肉の皮も同様で、皮の裏に付いた脂が肉全体のカロリーの半分を占めています。肉の脂身も鶏肉の皮も、調理の前に半分くらい切り落としましょう

 肉に限らず、揚げ物はあまり小さく切らずに揚げるほうがよいのです。食材を小さく、薄く切るほど油と触れる表面積が増えて、そこから吸う油の量が増えます。たとえば食材を大きいまま揚げた天ぷらと、かき揚げをくらべると、かき揚げのほうが食材が細かく切ってある分、油をたっぷり吸っています

 さて、ここで問題です。ロース肉とヒレ肉に含まれる脂肪の量に5倍の差があるのに、トンカツにすると、カロリーが2倍も違わないのはなぜでしょう?

 答えは衣が油を吸うからです。これが揚げ物のやっかいなところで、ロースであれ、ヒレであれ、揚げると衣が130キロカロリーくらい油を吸います。このとき吸う油の量は衣の厚さで変わり、しっかりした衣をつけるフライがもっとも多く、天ぷら、唐揚げ、衣を付けない素揚げの順に少なくなります。

 もっとよいのは焼くことです。同じ脂身付きのロース肉でも生姜焼きにすると250キロカロリーで、脂身を食べてもヒレカツを下回ります。揚げるより焼く、焼くより煮ることで、料理に含まれる脂肪の量がぐんと少なくなります

 いろいろな料理のカロリーをいちいちおぼえるのはちょっと面倒ですが、こういう基本的な原則を知っておくと目安になります。

 大切なのは、トンカツを生姜焼きにすると胃のもたれ具合がこのくらい違うな、とか、ご飯を小盛りにするとおなかの張りがこのくらいになる、というふうに、摂取した脂肪の量やカロリーを体で感じられるようになることです。

 こうなれば、食べ過ぎたときは体が教えてくれますから、次の食事でひかえればよいのです。ひかえたら、今度は体が軽くなったのを感じてください。こうやって、自分が健康でいられる摂取量がわかってくると、細かい計算をしなくても、食事の内容を自分で調整できるようになるはずです。

基本は収入と支出のバランス

 細かいカロリーをおぼえる必要はないものの、内臓脂肪の退治に役立つ数字をここで押さえておきましょう。

 内臓脂肪、皮下脂肪をとわず、脂肪は脂肪細胞が集まってできています。1個1個の細胞の中に中性脂肪の形でエネルギーがたくわえられており、内臓脂肪がたまると腹囲が大きくなります。このとき次の式が成り立ちます。

 腹囲1センチ=内臓脂肪1キログラム=7000キロカロリー

 7000キロカロリーといわれてもピンとこないかもしれませんが、カツ丼一杯が1000キロカロリーちょっとですから、カツ丼を7回食べると内臓脂肪が1キログラム以上付いて、腹囲が1センチ大きくなるわけです。

 そんなにカツ丼ばっかり食べないよと言うかもしれませんね。でも、そこに落とし穴があります。たとえば、毎日ほんの少し、80キロカロリー多く摂取するとしましょう。お茶碗に普通盛りのご飯が約250キロカロリーで、これを大盛りにすると約330キロカロリーになり、ちょうど80キロカロリーよけいに食べることになります。

 さて、こんな生活を続けるとどうなるでしょうか。この人が過剰に摂取するカロリーは1年でこれだけになります。

 80(キロカロリー)×365(日)=2万9200キロカロリー

 これを先ほどの式に当てはめると、内臓脂肪が4.2キログラム、腹囲が4.2センチ増えることになります。4.2キログラムですよ! おなかにこれだけの荷物をくくりつけて生活すると考えてみてください。この習慣を10年続けたら、計算上は内臓脂肪が42キログラム増えることになります。ささやかな喜びがこんなおそろしいことになるのです。

 しかし、裏を返せば、摂取カロリーをちょっと減らすだけで、1年後に内臓脂肪をごっそり落とすこともできるわけです。先ほどの計算式にそって考えると、7000キロカロリー消費すれば、内臓脂肪が1キログラム落ちて腹囲が1センチ小さくなります。

 ということは、逆に、多めによそっていたご飯を普通盛りにする、もしくは、普通盛りのご飯を小盛りにすれば、1年後には内臓脂肪が4.2キログラム、腹囲が4.2センチ減る計算です。これだけのことで、おなかまわりがこんなにすっきりするのです。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花。おそろしい病気を次々に生み出すおなかの脂肪も、落ち着いて正体を確かめると意外にたいしたことがないものです。4枚切りのトーストと6枚切りのトーストも一枚あたりのカロリーがちょうど80キロカロリー違うため、4枚切りを6枚切りにするのでもかまいません。

 自分は腹囲が10センチくらいオーバーしているから、この程度ではちょっと、という人は、まずは現実的な目標として、内臓脂肪を2キログラム、腹囲を2センチ減らすことにしましょう。体重を2~3キログラム落とすだけでも、血液の中の善玉物質が増え始めることがわかっています。

 ありがたいことに、脂肪は減るとなったら内臓脂肪から落ちます。内臓脂肪も皮下脂肪も1キログラムにたくわえているエネルギーは同じですが、内臓脂肪は皮下脂肪とくらべて中性脂肪を活発に出し入れしています。あまった中性脂肪をまめに取り込む一方で、体内でエネルギーが不足すると、すぐさま中性脂肪を分解して細胞から吐き出します。意外に働きものなのです。

 このことから、「内臓脂肪は普通預金、皮下脂肪は定期預金」と表現されることがあります。普通預金は預け入れも引き出しも簡単で、お財布代わりに利用できます。これに対して定期預金は簡単にはおろせません。1年、2年と、こつこつ貯金するうちに大きな額になります。

 脂肪の定期預金では楽しみがありませんが、本当に危険なのは、引き出すことなくたまってしまった内臓脂肪の普通預金です。

 

内臓脂肪を最速で落とす』好評発売中!

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法

本当の恐怖(がん、生活習慣病、認知症 etc.)は、「皮下脂肪」ではなく「内臓脂肪」だった!
肉中心の食生活をしてきた欧米人と比べ、魚と穀物中心だった日本人は摂取した脂肪を「皮下脂肪」としてたくわえる能力が低く、より危険な「内臓脂肪」の形で蓄積しやすい。放置すれば高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種がんや認知症の原因になることもわかってきた。だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結するのだ。肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。読むほどやせる内臓脂肪の新常識。