ギターにはいろんな種類があります。
香川さんは、アコースティックギターと、ガットギターの2種類がお気に入りの様子。
2つのギターの音色はどんな違いがあって、どんなふうに使い分けてるのでしょうか?
「めっちゃこだわって、その音色を使い分けてるのに、実はぜんぜんその違い、わかってもらえてない!?」というのは多くのミュージシャンの方が感じていることなのでしょうか……!
これからは、もっとギターの「音色」に注目(注耳)していこうと思います。

 

エッセイ
AとG

 暦の上ではもう春だという。にも関わらず、今シーズン最強の寒波が来ているらしい。僕の部屋にはコタツやストーブがない。コタツに入るとついつい怠けてしまうし、石油ストーブは暖かいが、灯油の管理や注ぎ足しが面倒だからだ。そんんわけで、今年はもっぱらホットカーペットとエアコンで冬を乗り切っている(電気代が超高い!)。

 乾燥のせいなのか、最近もっぱらお肌がカサカサである。割と自炊もするので、洗い物などで手もガサガサだ。ギタリストたるもの、指先は大切。あまり乾燥しすぎると、ひび割れたり、爪が割れたりしてしまう。風呂上がりにはクリームを塗って、しっかり爪先をマッサージしている(OLか)。

 そして今年は、全国的にもずいぶん流行っているようだが、まわりのスタッフやミュージシャンが、根こそぎインフルエンザにやられてしまった。バタバタと倒れ、仕事を休んだりライブを飛ばしたりしている。

 普通のサラリーマンなら、有給休暇を使って休めるのかもしれない。しかし我々ミュージシャンに有給休暇なんてものは存在しない。少々の体調不良なら熱が出ようがしんどかろうが、強引にステージに立つしかない。しかし、インフルエンザは他人に感染させてはいけないので、外へ出てはならない。ニュ-アルバムのリリースに伴い、これから僕は連日ステージに立たなければならない。なので“死んでもインフルにかかるわけにはいかない”。手洗いうがいはもちろんのこと、しっかり感染予防しなければ……!!

 そういうわけで、僕はよほどの用事がない限り、外に出ないことにした。

 休日は家でダラダラとギターを弾く。先週から約1週間、ほぼ家から出ずに、部屋でDVDやテレビを観て過ごしていたのは、別に怠けていたからではない。むしろ忙しかった。何に忙しかったといえば、インフル予防に忙しかったのである。

 努力の結果、至極、元気である。

 * * * * *

 久々にゆっくり時間ができたので、観たかった映画を観たり、本を読んだり、楽器の練習をしたりしていた。なんならギターがちょっと上手くなったかもしれない。

 ギターというものは、本当に奥が深い。基本“木”で出来ているため、湿度や温度によってコンディションが変わり、少しずつ音色が変化する。生きているとも言える。

 また木の種類や、年式によっても音色が変わる。“ヴィンテージギター”というのを耳にするが、あれはつまり“30年以上前に作られたギター”ということだ。古ければみな良し!ということではない。良い状態で保管され、良いプレイヤーに弾きこまれていた楽器は、新品にはない“味のある音色”がするということである。

 僕が使用しているギター「MartinD-28」は、購入してから今日までで10年くらい弾いている。新品の頃に比べ、随分音色が熟成されてきた。僕と共に、楽器も経験を積んで成長しているのだ。

 そんな可愛い相棒ギターのことを、今回しっかり紹介してみようと思う。

(写真:iStock.com/hardeko)

 僕は普段、ライブやレコーディングで、「アコースティックギター」と「ガットギター」の2種類のギターを使い分けている。“アコギ”、“ガット”なんて呼び方で読んでいる。アコギというのはいわゆる一般的なフォークギターのことで、「ゆず」や「福山雅治」や様々な人が使うギターだ。一方ガットギターの方は、クラシックギターのことで、主にギタリストがサイドギター(使い分け)として使用されることが多い。クラシックのギタリスト「村治佳織」や、海外アーティストの「ジェイソンムラーズ」、僕が個人的に大好きな「樽木栄一郎」というアーティストが“ガット”を演奏している。

 アコギには“スチール弦”(鉄の弦)が張ってあり、比較的明るく、煌びやかでスッキリした音色がする。一方、ガットギターには主に“ナイロン弦”が張られており、音が柔らかく、優しい丸い音色がする。ちなみに、“ガット”とは“羊の腸で作った細い紐”のことで、昔はホンモノのガット弦が使われていたらしい。フラメンコギター、スパニッシュギターとも呼ばれ、厳密にいうと、ボディーの厚みや形状によって様々な種類がある。僕が使用しているギターはK.Yairiというメーカーで、アンプに繋いで音も鳴らせる「エレガット」と呼ばれる種類の楽器だ。(アンプにつなげるアコギは“エレアコ”と呼びます!)

 ジャンルでいうと「アコギ」は、フォーク、ブルース、ロック、ポップス、ジャズ等、アメリカ寄りの音楽で使われてきたといえる。一方「ガットギター」は、ボサノヴァ、ラテン、フラメンコ等、ヨーロッパ寄りの音楽で使われてきたのである。

 現代は、ガットギターでジャズを弾くこともあれば、アコギでボサノヴァでもラテンでも弾く人は弾く。別にどのジャンルでどんなギターを使おうと、正解やルールなんてものはないし、はっきり言って好みの問題である。

 僕はライブやレコーディングで、曲によってこの二つの異なるギターを使い分けている。しかし、お客さんに「なんのためにギターを持ち替えているの?」と聞かれることがしばしばある。

 楽器を演奏しない人からすると、アコギとガットの違いなんて大差はないのかもしれない。それでも本人からすると“譲れないこだわり”があるのである。

 僕にとっては、スピード感のある曲にはアコギを使いたいし、逆に静かな曲や、言葉を伝えたい曲にはガットギターを使いたくなる。さらに、小さな子供達には優しいガットギターの音色を聞かせてあげたい。賑やかなお酒の場はアコギだ。

 例えば福山雅治さんや、斉藤和義さんなんて、同じアコギの中でも、楽曲によって、様々な年式やメーカーのヴィンテージギターを使い分けて演奏している。ライブで10本以上のギターを使用することもあるらしい(これは非常に羨ましい!)。

 そんなにたくさんのギターを持ち歩いたり、セッティングするだけで大変だし、そもそも普通は、そんなにたくさん高級ギターを買うお金がない。なんとも贅沢な使い方である。

 お出かけする時に「山ならSUV、海ならオープンカー、デパートはワゴン車で、コンビニは軽自動車で行くよ」みたいな使い分けである。

 いや、「魚は東芝の冷蔵庫、肉はシャープの冷蔵庫、野菜はパラソニックで、冷凍庫は日立の冷凍庫使ってます」みたいなものかもしれない。部屋中冷蔵庫だらけだ。羨ましい限りである。

 僕としては大いにこだわっている2つのギターなのだが、あまりに違いを分かってもらえないので、アコギばかり使った「A SIDE ALBUM」、ガットギターばかり使った「G SIDE ALBUM」と2枚のアルバムを製作したことがある。これなら分かってもらえるはず!!と息巻いたものの、それでも音色の違いを分かってくれたお客さんは、半分くらいだったのである。一般的に言えば微々たる違いしかないなのだ。

 誤解されてしまったかもしれないが、音色の違いがわからない人が悪いと思っているわけではない。ここまで書いておいて元も子もないが、聞き手のみなさんには、それぞれの楽しみ方で音楽に触れて頂ければ、それで幸せである。

 ちなみに、僕は、ギターはいっぱいほしいが、時計や車や冷蔵庫は一つあればそれでいい。作り手のこだわりなんて、人に押しつけるものではないし、ほんの“調味料”くらいのものじゃないかな。

 しかし、一見、誰にもわからないような“ほんのちょっとの塩加減”が料理の命運を分けたりするものなのだ。やっぱり作り手としては、たとえ伝わらないとしても、こだわり続けなければならない。

 このエッセイをきっかけに、ほんの少しでも、その音色の違いに耳を傾けてくださるようになると嬉しいです。

 さぁ新しいアルバムが全国発売された。10の楽曲が入っているが、色んなギターを使い分けて、こだわりにこだわり抜いて作った作品である。全国流通版と、ライブ会場でしか手に入らない「ライブ限定版」がある。それぞれジャケットやボーナストラックが異なっている。

 是非とも、山用、海用、デパート用、コンビニ用、家用、コタツ用、トイレ用、冷蔵庫に貼って飾る用……お父さん用、お母さん用と、10枚ずつくらい大量購入して、聞き分けて頂けたら幸いである。

  ※商品はどれも同じ音色です(^0^)


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