◆STORY◆肥大化し身動き不能となった巨大企業「T社」。社内調整専門部署「四七ソ」の香田と奥野に今日も新たな社内調整指令がくだる。オフィスの中のクソ野郎どもを、スタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ! テイルゲート! ショルダーサーフ! 禁断のオフィスハック技の数々を正義のために行使せよ!


◆1◆ 

 

 T社第六IT事業部、新規事業開拓課、第三フィンテック活用推進室の白大理石エントランスホールには、SuiCa改札のような磁気カード接触式のゲートが2つ。

 今は両方とも赤信号。ちょっと妙だった。誰も入れたくないのか。

「おはようございます、いらっしゃいませ」

 青いスカーフの受付嬢が、おれ達に気付いてインフォメーション台から声をかけた。

 どうも手元が怪しい。仕事をサボってファッション雑誌でも読んでいるのか。

「おはようございます」

 前を歩く奥野さんが、小さく一礼する。一方、おれは挨拶せず、手元のスマホをいじる。

「アポイントメントはございますか?」

 受付嬢が笑顔で問いかける。高天井のホールにいるのは彼女だけだ。

「はい。こちらは記帳式ですか?」

 奥野さんが答え、記帳台の方に向かった。受付嬢の目は当然、そちらに向く。

 そこでおれは動き出した。

「悪いけど、急いでるんで通らせてもらうぜ。四七ソだ

 おれは改札フラップを蹴り壊して、強引に改札ゲートをくぐろうとした。自分でも驚くくらい乱暴に、これ見よがしに。

「死神め……!」

 聞こえたのは、おっかない声だった。

 受付嬢が舌打ちし、海外ファッション誌の下に隠していた何かを掴み取っていた。違法に3Dプリントされたソードオフ・ショットガンだ!

 BLAMBLAMBLAM!

 ほぼ同時に、記帳台の前にいた奥野さんが、振り向きざま、受付嬢の頭を三点バーストで撃ち抜いた。

「ンアーッ!」

 BRAKKA!!​

 間一髪。ショットガンの狙いは逸れ、散弾はおれの斜め上のほうに飛んで、黒大理石の壁に掲げられた変な現代アート風の絵をズタズタに引き裂いていた。もっと現代アートっぽくなったんじゃないか。

「奥野さん、ナイッシューです」

「うまくいきましたね」

 連携もだいぶ板についてきた。

 奥野さんが上司という設定は鉄板だ。ただでさえ貫禄がある。見張りの目は、たいてい奥野さんの方に向けられる。おれはその後ろで目を盗んでスマホばかりいじっている、無能な若手社員ってとこだ。

 まあそれでなくたって、影が薄いんだが。

「受付嬢まで武装してるってことは、間違いなく、六三フィンはクロですね」

「踏み込まれれば徹底抗戦する構え、と」

「そうなりますね。シンプルだけど、力押ししかない案件ですよ」

「もうだいぶ慣れました」

 奥野さんは苦笑いした。

 おれ達は視線を交わしてため息をつき、足早にゲートを越え、向かいの壁に斜めに貼りつくエスカレータへと向かった。

 3階分くらい上がる長いエスカレータで、登りと下りが並んでいる。ここの構造はどうなってるんだ。T社複合社屋はまるでピラネージの迷宮だぜ。

 下を振り返ると、受付嬢の握っていたソードオフ・ショットガンが白大理石の床を叩き、血の染みが広がっていくのが見えた。さあ、始まりだ。

 おれたちは今日、六三フィンの社内調整にやって来たんだ。



◆to be continued......感想は #dhtls でつぶやこう◆

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