裁判経験豊富な弁護士が、世間で「トンデモ判決」と言われる48の裁判を読み解き、痛快にジャッジする『裁判官・非常識な判決48選』より、飲酒時に特に注意しなければならない事例をご紹介します。

※写真はイメージです。(iStock/evgenyatamanenko)

●訴えの内容

 被告人は、上司の定年退職送別会において、上司を胴上げし、誤って落下させた。その結果、上司は死亡したものであるから、被告人は過失致死罪で有罪である

●判決

 胴上げに失敗した被告人は有罪。罰金10万円の刑とする

(大津簡易裁判所平成22年5月20日判決)

意外と多い胴上げ事故

 結婚式や優勝祝いなどの席で、よく行われることの多い「胴上げ」。したことも、されたことも一度くらいはあるのではないでしょうか?

 この胴上げですが、体の大きな大人を地上から2メートル程度上空に放り上げる行為ですから、よくよく考えてみるととても危険な行為です。実際に、結婚式で新郎を胴上げして落下させ、腰を強く打ちつけ重傷を負わせてしまったり、半身不随となるケースもあったようです。

 安易に参加して、なんらかの事故が起きた場合に、責任を問われることはないのでしょうか。

 本件は、上司の定年退職送別会において、上司を胴上げした際、誤って上司が地面に落下してしまいました。当時胴上げの参加者は飲酒していたようで、これが影響したと思われます。

不幸にも落下した上司は、その時の怪我が原因で死亡してしまいました。そこで、胴上げに参加していた被告人たちが裁判にかけられたのです。

 胴上げに参加していた人たちが、故意に上司を落下させたということはないでしょう(もしそうであれば、場合によっては殺人罪や傷害致死罪になります)。

 そのため、なんらかのミスによって人を殺めてしまったという過失致死罪で起訴されました。

 結果として、胴上げに参加した同僚三人がそれぞれ罰金10万円という責任に問われています。遺族からすると、故人は定年退職まで仕事を勤め上げ、これから第二の人生を楽しもうという矢先の事故です。罰金10万円という責任ではとても納得できるものではなかったでしょう。

 しかし、逆の立場からすると、安易に胴上げに参加しただけで罰金10万円という刑罰を受ける危険があるということです。調べてみると、胴上げに失敗して死亡や重大な怪我をしたという事案は、思いのほか多く発生しています。本件の罰金10万円は刑事上の責任ですが、民事上の責任として莫大な損害賠償請求を受けることも考えられます。

 死亡事故も起きているほど危ないものだと肝に銘じ、酔った勢いや、その場のノリで胴上げするのは絶対に避けるべきでしょう。

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間川清『裁判官・非常識な判決48選』

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――裁判経験豊富な弁護士が、世間で「トンデモ判決」と言われる48の裁判を読み解き、痛快にジャッジ!