香川さん、デビュー5周年だそうで、ニューアルバムも出たそうで。
やっぱり、そんなときは、感慨深いようで。
そんなときに、スピード違反の切符を切られたり、あれやこれやが故障したり……?
がしかし! 神様に守られているのであーる。
“これからもよろしくお願いしますエッセイ”をどうぞ。

エッセイ
宝箱

『すみません……。バタバタしてて原稿書く暇が見出せません……。』

 エッセイをお休みさせてもらうときは、大体そうひとこと、編集さんにLINEを送信する。業務連絡にLINEは必須の時代である。“グループLINE機能”、メッセージの確認のしやすさ、どれをとってもメールよりLINEが便利だ。ちなみに、レコーディングの音源データのやりとりも、ほぼLINEで行った。ただしこれ、40代後半以上の方にやると、たまに「仕事にLINE使うな!」と怒り出す人もいる。でも……仮想通貨もたちまちメジャーになってるし、時代はすごい勢いで変わっているのだ。便利な物は上手に使うべきだと僕は思っている。

 先週、ツアー前は、それはそれは本当にバタついた。その原因は、日本全土を覆った大寒波と大雪にある。

(写真 iStock/​Arkadova)

 なんと、締め切りギリギリに仕上げたニューアルバムが、予定通りに届かなかったのである! 寝ても覚めても一向に届かない。工場から出荷されてはいるが、雪の影響で、どこかの配送センターで足止めを食らったらしい。“レコ発ライブツアー”と謳っているのに、肝心のCDがないのでは大変だ。

 しかも今回はバンドツアーだったため、機材も多い。移動手段は車だ。にもかかわらず、僕の車は、“冬用タイヤ”を履いていない。てか、持ってすらいなかったのである。

 とりあえず買いにいったのだが、みんな考えることは同じなので、何処に行っても在庫がない。仕方ないので中古品を探して、なんとか装着した。

 そして、ツアー出発当日。

 結局CDは届かなかった。

 仕方がないので、そのまま出発し、後追いで誰かに新幹線で持ってきてもらおうと思っていた矢先、高速道路のインター手前で、最寄りの配送センターから「届きました」と連絡が!

 間一髪、ダッシュで一度帰り、積み込んでから関西へ向かった。

 お陰で、予定より出発が2時間以上遅れてしまった。本番までに間に合うだろうか……。

 焦りと不安から、ついついアクセルを踏んでしまう。下り坂にさしかかり、思っていたよりスピードが上がっていたので、ブレーキを踏んで減速した瞬間だった。

 ウウ~~~ゥ!!!!!『そこの車、スピード落としなさい!』

 赤いサイレンを鳴らしながら追いかけてきたのは、シルバーの“覆面パトカー”だった。

 あ~……。やってしまった。人生初のスピード違反である。

 近くのパーキングエリアに誘(いざな)われ、一人でパトカーに乗り込むと、

「運転手さん、危ないよ! 人の命も預かって走ってるんでしょ!?」

 とお説教をされた。

 確かにそうだ。急いでいたとはいえ、スピードを出し過ぎて事故しようものならそれこそライブなんてできない。反省した僕は

「このまま走っていたら、きっと事故って死んでいたと思います。刑事さんは命の恩人です。ありがとうございます」

 と深く頭を下げた。予想以上の反省を見せる僕に警察官は驚いた顔を見せ、

「いや、わしらは刑事ではないけど……。気をつけんさいよ!」

 と、手際良く切符を切った。計測データは109km。80km制限だったので29kmオーバーだそうだ。原点3点と18000円の罰金。

 まぁ事故るよりマシだし、むしろ命が助かってラッキーだと思おう。あらためて安全運転を心がけなければ。

 こうして、出鼻こそ挫かれたが、なんとか会場に到着し、我々は無事ライブを行うことができた。

 “レコ発”だけに、ライブ後にたくさんのお客さんがCDを購入してくれた。僕への応援がそこには込められている。みんなの大切なお金と引き替えに、ニューアルバムが次々と旅立っていった。しかし残念なことに、回り回ってそのお金の1部は罰金として吸い取られてしまう。これは非常に申し訳が立たない。再びあらためて安全運転を心に誓った夜である。

 * * * * * *

 トラブルはそれだけにとどまらなかった。

 その後、東京へ向かう道すがら、名古屋あたりで、なぜか“左前のウィンカーが故障”した。なんだか恐ろしい……。何かの前兆なのだろうか……。

 幸い、すぐに修理してもらえたし、事故はなかったのだが、今度は、機材運搬中に僕のギターケースの肩紐と、エフェクターケースの取っ手がちぎれた。

 これはなかなかありえないことで、やはり何かもっと悪いことが起こる前兆なのか、虫の知らせなのか、祖父母あたりに何かあったかもしれないと思い、連絡入れた。

 すると、雪道でタイヤが滑り、事故を起こしたのだという。幸い“一人事故”で、車は故障したものの、誰も怪我はなかったそうだ。

 にしても、やはり何かおかしい。しかし、だ。考え方を変えれば、どのトラブルも怪我はないし、ギリギリのところでふんばっている。何かに助けられているのかもしれない。いや、むしろラッキーである! 守護霊なのかご先祖様なのか、はたまた昨年末にお参りした出雲大社の神様のお陰なのか、分からないが感謝である。

 トラブルは続いたが、東京での大きなコンサートは大成功だった。本当にたくさんのお客さんが来てくれたし、会場スタッフのみなさんと出演者が一丸となって、過去最高のライブができたのではないかと思っている。お座なりだが、応援してくれる方々と、仲間達、みんなのお陰である。終演後、賑やかな打ち上げを終え、ホテルのベッドに横たわると、感謝の気持ちがじんわりと胸から溢れて、こっそり涙が出た。

 幼い頃から「歌手になる!」と心に決めていた僕は、「ゆず」や「ミスチル」が大好で、新譜が発売されるのを指折り数えて待った。発売日前日に入荷してくれるCDショップまで自転車を走らせ、買いに行った。聞くのが待ちきれなくて、お店を出るなり開封して、歌詞カードを読んで、どんなメロディーか想像しながら自宅までペダルを漕いだ。息を切らしたままラジカセの前に正座して、歌詞カードを前にアルバムを聴いていた頃が懐かしい。

 今は、昔ほどCDというものは売れない。ダウンロードや、Youtube等で、もっと手軽に音楽を聴くことができる便利な時代になったためだ。今の僕は、かつて憧れていたアーティストのように、ドームだのスタジアムだので歌えるようなビックアーティストにはなっていないけど、それでも、僕の作った歌を、幼い頃の僕のように「早く聴きたい!」と想ってくれる人達が、全国各地にいてくれる。それが何より嬉しい。

 “夢を叶える”ということは、“船に乗って冒険して、宝箱を見つける”ことだと思っていた。しかしいつの間にか、“僕の船そのものが宝箱になっている”ことに気がついたのである。

 長年続くファンタジー漫画のエンディングみたいだが、多分そういうことなのだろうと思う。これからも仲間を増やしながら、この宝箱に乗って、航海は続くのである。スピードの出し過ぎには注意しなければならないけどね。これからものんびりマイペースに旅を続けていこうと思う。

 東京の大きなコンサートで、僕の音楽活動はひとつの節目を迎えた。今年は活動5周年だし、ニューアルバム『BGM』も、これから全国各地のたくさんの方に届けていきたい。

 あと全然関係ないけど、『ONE PIECE』のラストは、誰もが納得できるような“宝箱”を見つけてほしい。

 この場を借りて、今回のコンサートを応援してくれたすべてのみなさんに感謝申し上げる。

 ありがとうございました!!

 ということで、ニューアルバム「BGM」できました!2月7日発売ですよ!

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