脳科学者の中野信子さんの『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』と、ロザン・菅広文さんの『身の丈にあった勉強法』、そして菅さんの相方である宇治原史規さんの鼎談もいよいよ終盤。話は意外な方向へと転がっていきます!

『身の丈にあった勉強法』は、対人工知能の教科書?

中野 そうそう『身の丈にあった勉強法』を読んでいて思ったんですが、今人工知能に人間がどう対応するかという議論がすごくありますよね? 私、この本がそのヒントになるなと思ってるんです。

 え、なんでですか?

中野 人間は人工知能には絶対に勝てないですよね? 汎用性のある人工知能が出てくるのはまだまだ先だと言われてますけど、囲碁とか将棋といったように機能を限定したものはすでに存在していて、プロでも勝てない。人工知能を相手にするというのは新幹線と走って競争するみたいなもんですから、絶対勝てないんです。そのときに人間はどうすべきか、というのが議論になっているんですけど、「高性能勉強ロボ」の宇治原さんを前にして、菅さんは「身の丈にあった生き方をしろ」と書いてますよね。勉強ロボに対して、どう生きるべきか、という。

 はいはいはい。たしかに”対・宇治原さん”は、”対・人工知能”にどう接するかってことと同じですね!

宇治原 さっきの囲碁や将棋のプロがどうしても勝てない人工知能に嫉妬することはあるかもしれないですけど、普通の人は、自分が到底勝てない人工知能には嫉妬しないですからね。

中野 そうなんです。なので、例えばやらなきゃいけないつらい仕事はAIにやらせるというように、外部化できるものは外部化する。つまり菅さんが苦手なクイズ番組は宇治原さんにやらせるのと同じような(笑)。普通の人って、自分よりも高性能な人を見たとき、どうして私はああできないんだろうとか、そういうふうになりたいと妬み混じりに思うんですけど、冷静なサイコパスはそんなことは端から思わないんです。無駄だから。これをどうやって利用できるだろう、と考えるんです。

宇治原 あ、中野先生ももしかしてサイコパスちゃいますか?

中野 いやいや、私はサイコパスとは別種の人間だと思いますよ? 

 そうかもしれんね。だって先生、サイコパスはサイコパスだってことを否定するってさっき言うてましたやん(笑)。

宇治原 普通の人はなんとなく自分がサイコパスやって言われたら、ちょっと嬉しいという感情も湧いたりするんですよ。他の人とちょっと違う、って言われると嬉しいじゃないですか。

中野 あ、そういうもんですか?

 ほらほら、もうサイコパスや(笑)。

中野 いやいや……(苦笑)

宇治原 サイコパス同士、共鳴してますよ。さっきから耳鳴りしますもんね、僕ら一般人は(笑)。

 若者にしか聞こえない、コンビニのモスキート音みたいな(笑)。

中野 ちなみに一般的なサイコパスの割合は100人に1人程度のオーダーと考えられていますが、企業のCEOだと約5人に1人という高確率で存在するという研究結果もあるんですよ。例えば優しく希望を聞くよりも冷徹に適材適所で人を配置したりとか、この人はちょっと違うなと思ったときに迷いなく切る能力は、普通の人よりサイコパシー(サイコパス度)が高い人の方が向いているかもしれないですね。普通の人ならシャーデンフロイデを感じながら、あの人は自分より目立つから痛い目に合わせてやれと熱い憎しみを持って切りそうなところですが、それがないのはリーダーとしての強みといえますね。

 たしかに僕、「ロザン」という会社を経営している感じはありますね。

中野 そんな感じですよね。そもそもサイコパスは仲間なんて作らないんですよ。だから菅さんは、宇治原さんのことを仲間というよりも、自分の手下、あるいは「部品」と思っている可能性はありますね。リモコンで動くロボットのような(笑)。

 中野先生!(笑)

宇治原 でも僕は菅さんに使われるのは嫌やと思わないんですよ。リモコンで動くロボであろうと思ってるところはありますね。

中野 そこはやっぱりお二人とも冷静ですよね。身の丈にあってるんですよ。

宇治原 ただ菅さん以外がリモコン持ったら「待て」ってなりますけどね。僕はサイコパスではないので、そこまで冷静じゃないです。

中野 そういうふうに考えられるというのは、宇治原さんが菅さんの影響を受けている可能性はありますね。

 お互いがお互い、そう思ってるとこもあるんかなぁ。

宇治原 サイコパス液が飛んで来てるということやな。

中野 お笑い界だけでなく、仕事などでコンビを組むときは、ロザンのあり方を参考にするといいですね。

 ロボと人間のね。

宇治原 ロボとサイコパスや!(笑)

「勉強ができなくてもいい」と「勉強しなくてもいい」は違う

宇治原 いやぁ、中野先生のお話は本当にわかりやすいです。そうそう、最近いろんなところで「ハードルを下げる」みたいなことが流行ってるじゃないですか。

 ハードルを下げる?

宇治原 例えばお正月の新聞って、普段と違う紙面があるじゃないですか。今年は各紙とも、そこに芸能人がいっぱい出てきたんですよ。そういうことで表面的に読みやすくしてるんですが、「入りやすくするためにハードル下げるって、違うな」と思うんです。これは最近、活字とか、学校の教科書にも感じますね。それって「勉強ができなくてもいい」ということと「勉強しなくてもいい」というのがごっちゃになってることに原因があるんじゃないかなって。無知であることって、周りが馬鹿にしてはいけないと思うんです。でも自分が無知であると開き直るのもよくない。だって先人は誰も「勉強しなくていい」なんて言ってませんからね。そのためには、ちゃんと身の丈にあった勉強をせんといかんのです。そういった意味で中野先生と池上彰さんは、僕が言うのもおこがましいですけど、難しいことをわかりやすく説明する、よいハードルの下ろし方をされてるなって思いますね。

中野 ありがとうございます。難しいことをわかりやすく、というなら『身の丈にあった勉強法』もそうで、もっと多くの人が読むべきだと思いますね。特に受験生は読んだほうがいい!

菅 ありがとうございます! 今ちょうど受験シーズンですけど、受験生は試験が終わったら、中野先生の『シャーデンフロイデ』を読んだほうがいいですよ。大学行くとね、いろんな人がいるんで。

中野 いろんな人に「シャーデンフロイデ」を感じるでしょうしね。「なんであいつが受かって、俺が落ちたんだ」とか。

宇治原 僕からの受験生へのアドバイスは「失神しないように頑張ってください」(※)です。

菅 いやー、先生の話、めっちゃ面白かったです。ありがとうございました!

中野 こちらこそお会い出来て楽しかったです。

宇治原 いやー、今日は来てよかった! 菅さんがサイコパスだってことがわかってよかった(笑)。

菅 なんでやねん!

*  *  *

※……センター試験の数学で200点満点を取ろうと意気込んでいた宇治原さんは、後半の問題がまったくわからなくなって、失神してしまったそうです。詳しくは『身の丈にあった勉強法』で!

(取材・構成:成田全  撮影:菊岡俊子)

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