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岸見一郎の幸福論 ~幸せとは表現するもの~

2018.05.18 公開 ツイート

書籍『成功ではなく、幸福について語ろう』発売記念

「人生100年時代」と言われる中、幸せな老後がイメージできず、長生きすることに不安を覚えています。【リバイバル公開】 岸見一郎

アドラー心理学の第一人者であり、大ベストセラー『嫌われる勇気』著者、岸見一郎さんによる最新刊『成功ではなく、幸福について語ろう』の発売を記念して、幻冬舎plusで反響の高かった人生相談の内容をリバイバル公開いたします。
また発売記念第2弾企画として、岸見先生へ直接悩みを相談できるイベントも実施いたします。

(写真 iStock/maroke)

◎「人生100年時代」と言われる中、幸せな老後がイメージできず、長生きすることに不安を覚えています。(38歳男性 会社員)

 近頃さかんに「人生100年時代」という言葉を目にしますが、そんなに長生きするかと思うとぞっとします。
 勤めている会社は斜陽産業で、これからは人工知能にどんどん仕事も奪われるでしょうし、高齢化社会、人口減、政治不信、考えれば考えるほど幸せな老後など期待できず、長生きなんてしたくありません。かといって自殺するほどの勇気もなく、岸見先生はこの高齢化社会をどうお考えでしょうか?

先のことよりも、今日という日に集中する

 以前、これから先四十年も同じ生活をするのは苦しいと自殺を試みた若者がいました。今の世の中、一年後ですら何が起こるか予想することは難しいので、この若者が後四十年も今と同じ生活が続くと思っていることに私は驚きました。
 しかし、同じ生活が続くとすればそれはありがたいことだともいえます。毎日、何が起こるかまったく予想もつかない波乱万丈の人生を望む人が多いとは思いません。
 
 さりとて、今日という日が昨日とほとんど変わらず、明日もまた今日の延長だとしか思えなければ、格別の不満がなくても、常に何かしら満たされない思いを持って生きることになるかもしれません。そのような思いと共に、これからも同じ生活が続くと思うと、漠然とした不安を感じるということはあるでしょう。
 同じ生活が続くのならまだしも、将来に対して希望を持てず、長生きをしても幸せな老後など期待できないのであれば、いよいよ先行きが不安になります。
 
 しかし、これからいいことがないのなら長生きしないというのはおかしいと思います。
 まず、社会が高齢化していくことに個人が何かできることがあるかといえば何もないかもしれませんが、そのような社会で生きることから逃れる前にその中でどう生きていくかを考えることはできます。

あなたの幸福は、社会がどう変わっていくかによって決定されない

 次に、幸福はこれからの社会がどうなるかによって決定されません。たしかに、社会のあり方は人が幸福に生きることに大きな影響を及ぼしますが、例におあげになっている政治についていえば、政治不信といってすませるのでなく、政治を変えていく努力はできます。
 政治家に幸福にしてもらおうなどとは私は思いませんが、政治家に不幸にされたくはありません。後は野となれ山となれではなく、きたるべき世代のことを考えることも必要です。
 
 さらに、長生きするかと思うとぞっとするということですが、今後長生きする人が増えていくというのは事実であっても、自分が何歳まで生きることになるかは誰にもわからないのです。長生きしたい、したくない以前に、そもそも長生きできるという保証はどこにもありません。
 そうであれば、こないかもしれない老年のことを不安に思い、幸せな老後など期待できないので長生きしたくないと思うのは、心臓はやがて止まるのだから今止めればいいと考えるのと同じように思います。
 
 これからも生きていこうと思うのであれば、先のことではなく今日という日を今日という日のためだけに生きていくことがあなたができることです。

 

岸見一郎『成功ではなく、幸福について語ろう』

成功と幸福を同一視しないことから始めよう。
アドラー哲学「嫌われる勇気」岸見一郎による幸福論の決定版
高校生へ語った伝説の講演「これからの人生をどう生きるか」も完全収録!

 

関連書籍

岸見一郎『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』

親子関係に効くアドラー哲学 アドラー心理学研究の第一人者にして大ベストセラー『嫌われる勇気』著者・岸見一郎氏による、 子どもとよりよい関係を築くためのアドラー哲学が凝縮された一冊。 もくじ 第1章 叱らない、ほめない子育て られてばかりのスケールの小さい子 誰もがやさしい言葉をかけてくれるとは限らない 親とて子どもの人生を決められない ありのままの子どもを見よう 子どもが失敗した時は子どもが責任を取る いつか親のもとを離れていく子どもたちへ 見ている人がいるからゴミを拾うのか? 無視されるよりられた方がまし 子どものことは親が一番よく知っているという思い込み 「悪い親」がいるのではない、「下手な親」がいるのだ 体罰に正義など何もない 第2章 勉強ができる子、できない子 知らないことを知る喜び 勉強がつらいとやめてしまう子、続けられる子 たしかに入試は競争だが、仲間もつくれる 医学部の勉強は入学してからが本当に大変 明日からダイエット! そんなセリフは聞き飽きた? 勉強は家事の手伝いより大切か? 受験生だからといって家族の中で特別視しない 子どもを上から目線で見ない もしもゲームをしなければもっといい成績が取れたのに!? 子どもにイライラしたら見ないようにする 教科を教えるのではなく、教科で教える 第3章 一生強く生きられる勇気づけ 自分にはできないと思い込まない 援助は受けるだけでなく与えてこそ喜びとなる メダルを取れなかったら、謝るのか 神に呼ばれたシュバイツァー 子どもの長所に光を当てよう 自分には価値がある、と思えるか 尊敬される十一歳の偉大な指揮者 劣等感は今の自分より前に進む原動力 地道な努力をしない成功は、すぐ失われる 子どもが自分自身の判断で、子どもの人生を決める

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岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

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