ベストセラー『サイコパス』の著者である、脳科学者の中野信子さんの最新刊『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』。その中野先生が絶賛するのが、菅広文さんによる目からウロコの勉強法をまとめた『身の丈にあった勉強法』で、ロザンのお二人も中野先生の本を「面白い!」と絶賛している、ということから今回の鼎談が実現しました。宇治原史規さんは何やら中野さんに質問があったようで……

『身の丈にあった勉強法』は、すごく気持ちのよい本

中野 菅さんの『身の丈にあった勉強法』を読ませていただいて「こんな本が出たんだ!」と思って、ロザンのインタビュー記事をフェイスブックでシェアしたんです。

菅・宇治原 ありがとうございます!

中野 エアー授業しろとか、頭のいい人向けの勉強法をやっても意味がないとか、非常に理にかなったことがいっぱい書いてあって、すごい観察眼だなと。人間って自分に向いてないことをやると嫌いになってしまうんですけど、それが丁寧に書かれてますよね。しかも宇治原さんのことを「高性能勉強ロボ」っていじるのが面白くて(笑)。

宇治原 僕、中野先生が書かれた『脳内麻薬』を読んで、自分にとって気持ちのいいことをすると脳内で報酬があるという話を「ああ、わかるわ」って思い出したんが、小学校のとき「早くテスト来い! できるだけ抜き打ちで来い!」と思ってたな、ってことだったんです。

 気持ち悪ぅ! それって「次の授業、自習になればいいな」というのと同じ?

宇治原 ああ、そうなんかなぁ。抜き打ちであればあるほど他人と差がつけられる、と思ってたし。

 気持ち悪ぅ! それ先に聞いてたら、コンビ組んでなかったかも(笑)。

中野 普通の人は「努力すれば勉強できるようになる」と思っているんですよね。だけども、それが努力と思ってる時点でもう負けなんです。勉強好きな人は、努力だと思ってないので。東大や京大を受ける人は勉強ロボになるんですよ、受験の前は。そういう人たちと、日常生活をバランスよく送れている人は、やっぱり違うんです(笑)。なので勉強ロボと普通の人を一緒にして勉強法を語るのは間違ってる、とずっと思っていたんですが、そのもやもやが『身の丈にあった勉強法』でクリアになりました。

 そう言っていただけて、すごい嬉しいです。でも中野先生も中学生のときに「どうしてみんなテストでいい点が取れないの?」と言って、ドン引きさせたんですよね?

中野 はい(笑)。勉強がすごく気持ちよくて仕方がなくて、難しいテストほど気持ちいいとか、ゲームをクリアするようにしてましたという話って、そういう経験がない人に話すと「え?」という反応されるんですよね。たぶん宇治原さんも感じたことがあると思うんですけど。

宇治原 そうですね。だからそれを菅さんがフィルターを通して話したり、本にしてくれてるんかなと。

中野 とても羨ましい。それって、宇治原さんには高校時代から菅さんという「インターフェース」があったってことですよね。私はそういう存在がいなかったので、ちょっと変人道へ行かざるを得なかった部分があるんです。

 そうそう。僕、宇治原さんのインターフェイスなんですよ(笑)。

宇治原 一回も思ったことないやろ、自分がインターフェースやって!

中野 世の中に勉強の本っていっぱいあるんですけど、だいたいが「ミクロの視点」なんですね。こうしたら集中力が上がりますよとか、こうしたら解決できますよ、というトピックスはいっぱいあるんだけど、「そもそも何で勉強するの?」とか「自分はどういう立ち位置なの?」ということにまで言及した本ってあんまりないんですよね。

 僕の行ってた高校がすごい賢い人の集まりやったんですよ。で、僕だけ普通で浮いてた、みたいな感じで。そのときに「努力してもできないことってあるんやな」って身に沁みてわかったんです。もちろん努力してる人が頑張ってない、というわけじゃないんですけど、「元々できる人がすごい頑張ったから東大・京大行ってんねんで」みたいなところも伝えたかったんですよ。

中野 パリコレに出るモデルさんがスッピンで出るかといったらそんなことはなくて、ちゃんとメイクもするし、体型も維持する。けれども私がいくら頑張ってもパリコレには出られない、というのと同じ話です(笑)。それにしてもこの「身の丈にあった」という絶妙な言い回しって、みんなが天才になる必要はちっともなくて、生き延びていくために必要な勉強をしよう、ということなんですよね。そして自分がどれだけ勉強ができようができまいが、どんな人にとっても「学ぶ喜び」はある。この本には「その立ち位置から見えるものを大事にしよう」というメタメッセージが散りばめられていて、本質がちゃんと書かれている。しかも読みやすい。すごく気持ちのよい本なんですよ。

菅さんには「シャーデンフロイデ」がない?

 実は僕らもトークイベントで、中野先生の『サイコパス』に出てきた「最後通牒ゲーム」をネタで使ったんですよ。それっていうのは、「目の前に1万円があって、それをどう分け合うかは宇治原さんに提案権がある、でもその提案を僕が拒否したら1円ももらえない」というゲームですよね。僕の場合、もし宇治原さんが7000円で、僕が3000円しかもらえないとなっても、たとえ1円だったとしても「絶対に受け取るな」と思ったんです。そしたらそういう考え方の人は「サイコパス」ってあって、「え、ほんなら僕、めっちゃサイコパスなんちゃうん?」と。

中野 相手の損得やズルをしているかどうかはどうでもよくて、自分の損得だけに関心を向け、冷徹な判断を下す、というサイコパス特有の感情ですね。あの……『身の丈にあった勉強法』を読んでいて、菅さんは宇治原さんにまったく妬みのかけらもなく、冷静にいじっていて、それが最後まで続きますよね?

 はい、妬みのかけらもないですね。宇治原さんのことは漫才でも、僕が書いた『京大芸人』『京大芸人式日本史』でもずっといじってきましたし。

中野 ですよね? それってひょっとして、と思って……

宇治原 先生、はっきり言ってください! 菅さんはアレですよね?

中野 菅さんはサイコパスかもしれない(笑)。

宇治原 今日僕は中野先生にお会いできるということで、それだけを聞きに来たんです! 間違いないですよね? もう聞きたいこと聞けたんで、帰ってもいいです!

 薄々「そうかな~」と思ってるフシはあったんですけど(笑)。

中野 菅さん、宇治原さんがクイズ番組で優勝して賞金を稼いでくることを「馬と馬主の関係」に例えてるじゃないですか。人のことを馬に例えられる人って……

 いやいや、それは仲いいからですよ! 宇治原さんのことを上やとも下やとも何とも思ってないですよ!

宇治原 いくら人が笑うと言ったってね、自分の一番仲のいい人間を馬に例えるっていうのは、やっぱりサイコパスですよね?

中野 ロザンはギャラが折半だから宇治原さんに頑張ってほしい、ということを何のてらいもなく「馬と馬主の関係」と書いていらして……普通だったら、もうちょっと「自分よりも頭がいい」ということに対して妬みがあってもいいのかなと思うんですけど、菅さんには全然ないんですよね。隠してる感じもなくて。だからやっぱりそうなのかなと、昨日から言うべきか言わないべきか悩んでました……

宇治原 言ってください! もうなんだったら各方面で言ってください!

 いや、あります、妬み!

宇治原 ないない!

中野 そういう否定の仕方とかも、サイコパスっぽいんですよ(笑)。

宇治原 ですよね! ちょいちょい否定するんですよ、自分で。

中野 普通、人には「妬みの感情」があるものなんですよ。それについて書いたのが『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』です。「シャーデンフロイデ」という言葉は耳慣れない人が多いと思うのですが、ドイツ語から来てる学術用語で、フロイデは「喜び」、シャーデンは「損害・毒」という意味なんです。本来は隠しておくべき後ろめたい感情である、相手を引きずり下ろしたい、自分よりも上だと思っている人が失敗したときに感じる喜びのことを「シャーデンフロイデ」と言うんです。

宇治原 僕ね、なんでそんなに他人のことを叩くんやろう、無意味やのになぁとか、なんで誰かを引きずり下ろしたいって感情が生まれるんやろうとか、自分の中で結構大きな疑問だったんですよ。僕はどっちかと言うとそういうことを考えることが少ない人間やと思うんで、わからなかったんです。でもその「シャーデンフロイデ」が社会を作るためには必要だということがこの本に書いてあって、ああそういうことなんかと思ってすっごい納得したんです。長年の疑問が一気に理解できました。

中野 ありがとうございます。

 僕は先生の本読んで、「僕にはシャーデンフロイデないな」と思いました(笑)。

*   *   *

宇治原さんが「自分の中の大きな疑問が一気に理解できた」と言う、中野信子さんの最新刊『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』。なぜシャーデンフロイデは人間に必要なのか? 次回、じっくりとお話を伺います!

(取材・構成:成田全  撮影:菊岡俊子)

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