「クレーム集中病院で、若い女性医師が“モンスター・ペイシェント”に狙われた!?」
デビュー作『サイレント・ブレス』が各紙誌で好評を博した南杏子さんの待望の第2作『ディア・ペイシェント』に、全国の書店員さんから届いた感想をお送りします。


ヒューマンドラマ+ミステリー(やや)とても好きです。医療にも接客の時代がきて、お医者さまが患者とコミュニケーションをとるための本、ハウツー本があると聞いたことがありますし、実際、買っていくかたもいて、ものすごく忙しい医療現場でスキルアップの他に学ばなければいけないことがあることに頭が下がる思いをしていました。医療ものはつい敬遠しがちなのですが、主人公である千晶が等身大でためらいなくひきこまれました。お仕事はどんなお仕事でも大変。これからも千晶も私も生きていかなくてはいけないけれど、上を向こうと前向きになれました。ロシアのことわざのように。
(三省堂書店名古屋本店 大屋恵子さん)

作者の方がお医者さんとあってとてもリアリティがあり、普段患者の側として見ていたことのお医者さんの視点を感じることができました。重い内容ですが、読みやすく、現代社会が抱える問題に、なんでこうなってしまったのだろうと思いながら読んでいました。主人公の先生が相手を思い自分の理念を持って働いていても、患者と分かりあうことは、こんなにも難しく、傷つき、自問自答する姿に切なく、エールを送りたくなりました。千晶医師は、きっと良いお医者さんになりますね。
(知遊堂三条店 広川和美さん)

現役医師ならではのリアリティ、医療用語とかも出てくるのに難しくなく、スラスラ読めて、知らなかったことを知れて、ドキドキして、泣けて、思いっきり感情移入して読める……満足感満点でした!! でもこの作品を現役医師が書いていると意識して読むと、本当にこんな事態が起こりえるのかもしれないと、空恐ろしいような気持ちになりました。座間の存在が気味悪すぎて、嫌な感じのまま終わると思いきや、後半は泣けて泣けて……。千晶が悩む場面では一緒に悩み、前を向く場面では一緒に前を向き、読後は温かく晴れやかな気持ちになりました。登場人物がそれぞれに感情移入しやすく書かれていて、キャラクターがよかったです(とくに院長とか、警備の蓮見さんとか、千晶のお父さんが、なんだか、イザというときに頼れて、カッコよかったです……ついでに言うと、絶対ドラマ化してほしいです!!)。医療小説ですが、一人の女性の成長物語としての印象が強く残りました。最後の千晶の願いがいつまでも守られますように。読者として「おもしろかった!」と思ったのと、書店員として「売りたい!」と思ったので、今は早く誰かにオススメしたくてソワソワしています。
(勝木書店本店 樋口麻衣さん)

いつからだろう。病院で患者が「様」付けで呼ばれるようになったのは。それまでの、患者は病院に対して何も言えない、医療者の言うがまま、という状況から、きちんと質問ができる、不満があれば伝えられる対等な立場になったことは良いと思う。が、この小説にあるようなまさにモンスター・ペイシェントへの対応に医療従事者が疲弊しているなんて、あり得ない。なにか勘違いしているんじゃないか。過剰に下手に出る必要はないけれど、けれどやはり自分の身体や心を診てくれる医者たちへ最低限の敬意は持つべきだろう。患者が傲慢になることで、最終的に自分たちへの医療の質が落ちていくのだ、となぜわからないのだろう。医者や看護師、その他コメディカルの人たちが、一般的なサラリーマンとは違う「矜持」で働いているのは確かだ。けれど、それに対してそれを当然だと思ってしまうのは患者の身勝手以外の何ものでもない。医者だって看護師だって、人間なのだから。医者が患者の求める医療を求める範囲できちんと対処できること、その当たり前が当たり前にできる医療であって欲しい、そう思いました。
(精文館書店中島新町店 久田かおりさん)

「いかがですか患者様、これが医療業界における現実ですよ!?」と終始言われている気分だった。いつからこんなにサービスを過剰に求める時代になったのだろう。怖いのは、どれもが妄想でも空想でもなく本当に今この瞬間どこかで起きているのだろうと容易に想像出来てしまことだ。他人事じゃない。サービス業に身を置く自分はいつでも当事者になり得るのだ。クレームを言われる側にも。でもどの業界にも本書の先生のようにその仕事に信念を持って取り組んでいる人が必ずいるのだと信じたい。わたしも誠実であり続けよう。あたたかい言葉で満たそう。そう思った。

(ジャック鷲津駅前ブック館 山本幹子さん)

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南杏子『ディア・ペイシェント』

クレーム集中病院で、若き女性医師が“モンスター・ペイシェント"に狙われた!?
失敗しようと思う医師はひとりもいない。けれど、医師と患者が解りあうのは、こんなにも難しいのか――。現役医師が、現代日本の医療界の現実を抉りながら、一人の医師の成長を綴る、感涙長篇。