土方歳三を手に入れた私は、迫りくるミサイルと出社時間をかわし、イヤフォンとスマホを握りしめシェルターという名の便所へ駆け込んだ。

勢いあまりすぎて便所の扉は、控えめに言って全開であった。いよいよ便所に来た意味がないが、これから爆発四散予定なので、一番汚れても良い場所、という点では適所だ。

早く、早くprprしなくては。
しかし、そうは言ってもまだ、この土方さんは入手して間もない、生まれたての、湯気が出ている、剥きたての玉子のような、まだ誰にも踏み荒らされていない新雪、無垢な、穢れを知らぬ、少女の、膝のような。

快進の勢いで気持ち悪くなっているのでこのへんにしておくが、とにかく出たばかりなので、堪能すると言っても全てを見ることはできない、これからレベルとか色々上げて、見られる姿もボイスも増えていくのだ。

しかし、今見られるものは今のうちに見届けておかねばならぬ、今日上った太陽が明日も見られると思うのは甘えだ。

さっそく土方さんをお気に入り登録した、こうすることにより「マイルーム」という自分の部屋に、お気に入りのキャラがいる、という設定になる。

土方歳三が部屋にいる。

すごい。

土方さんがマイルームにいるのを見ただけで、語彙が絶滅した。
土方さんのいないマイルームに舞っている埃に「土方さん」と呼びかけ続けて半年、ついに現実に土方さんがいる、よく知らないが、おそらくこれが「ひきよせの法則」という奴だろう。
しかも、舞っている埃と違って、呼びかけ、つまり画面をタップするとしゃべってくれるのだ。
土方さんが部屋にいて、話しかけても無視されない。奇跡の連続だ。
画面をタップすると土方さんがしゃべる、その声はイヤフォンを通じ直接、耳、脳に流し込まれる。

つまり「電気椅子と大体同じ仕組み」ということである。
唯一の相違点は「電気椅子の方が大人しく死ぬ」という点だ。
土方さんがしゃべるたびに、私は激しく体を痙攣させ、そして「ふざけるな」「バカか」と何かに怒り続けた。

怒りしかわかない。

良さみが高まりすぎたオタクにはよくあることだ。だがこれはオタクは悪いわけではない、正気を疑う良さみがありすぎる二次元が悪い、つまり二次元の社会、治安、政治が悪い。つまり圧政に対する怒りだ。

これはもう、明日にでも一揆を起こすしかない。そう思った瞬間私は突然、爆発四散した。これは『ノルウェイの森』で主人公が最後の方のアレで、突然射精した、みたいな、つまりハルキの世界観を感じてほしい。

何故、突然爆発したか説明しよう、心配しなくてよい、誰にも求められていない説明をするのはオタクの十八番、カラオケで言うと残酷な天使のテーゼだ。

FGOにおける土方歳三はかなり土方歳三なのである。
死んだ語彙が一向に息を吹き返さず申し訳ないが、土方歳三含め新撰組にはクソほど多彩な創作が存在する、そして創作の数だけ土方歳三がいる。
土方歳三は人のロマンを駆り立てる存在なのか、大体「鬼の副長」イメージのままカッコよく描かれていることが多い、しかしやはり作品によってそのキャラクターは違う。

FGOの土方歳三はその中でも、かなり土方歳三なのだ。
今、王大人が語彙に対し正式に「死亡確認」と言ったので、これ以上の説明は無理なのだが、厳しく、苛烈、戦餓鬼、な面がかなり押し出されており、戦闘ボイスなどは、物騒かつ絶叫系も多い。

それを立て続けに聞いた後に、優しい声を聞かされたら爆発するしかないだろう。

誰だって、40度の発熱をしている体に、2トンの氷塊を鉄球式にぶつけられたら木っ端微塵になる、それと同じことだ。

「おだやかにしゃべる時が特にやばい」
「!」が大量についているセリフの後に、突然語尾に「…」が肉眼で見えるセリフを言われたら、人は死ぬしかない。

「しんどい」
これもオタクが良く使う言葉だ、しかし私は今までこの言葉の意味を本当に理解せずに、おもしろいから使っていた、ということを痛感した。

マジでしんどいのである。キツくて、辛いのだ。

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