気付いたら年末である。
 あっという間だった。あっという間過ぎる。今年になってまだ六か月くらいしかたっていない気がする。歳を取るとどんどん時間の流れが速くなると言うけれど、だとすると来年は三か月ないんじゃないかと思う。体感として。怖い。
 
 年末なので、一応今年を振り返ってみた。振り返ってもなにも見えなかった。
 今年わたしは、楽して生きてしまった気がする。
 もちろん、そのときそのときで自分ができることをやってきたつもりだ。でも本当はもっとできたかもしれない。死ぬ気で、目から血流して、睡眠時間削って心削って生きたか、そう問われたら、ぜんぜんだ。毎日九時間以上寝ているし。物を書く人間としてそれはどうなの? と言われたら耳が痛い。

 今年のテーマはノーストレスで生きる、だった。以前体を壊した理由がよくない関係性の人間と会い続けたストレスだ、そう気付いて、本当に行きたい場所、本当に会いたい人にしか会わないようにしてみた。舞台も映画もライブもお付き合いで行くのをやめて、自分の観たいものに一人で行くことにした。

 そうしたら、毎日がずいぶん楽になった。ストレス感じて作り笑いして社交するより、一人で部屋のすみでうずくまっているほうがずっと楽だ。一人でいる時間を増やしたので、一人遊びの種類が増えた。1000ピースパズルを完成させたし携帯ゲームのレベルがぐんぐんあがったし、海外ドラマはシーズン9まで観られた。家から出ないから新しい服を買ってもほとんど袖を通していない。顔の筋肉も退化した気がする。

 一生物の思い出アルバムに刻みたい出来事も一つ二つあったけれど、それ以外はほとんど家の中のひとりきりの記憶だ。なんだか冴えない一年である。
 冴えない上に体感半年である。残り寿命を考えると、もったいないことをしたかもしれない。

 でも、楽しい一年だった。一年間、わたしは大変に楽をした。楽をする、はネガティブな意味で使われることが多いけれど、楽をするとずるをするが同意語みたいに思われているからで、楽したってずるしなければ構わないと思う。たまには。毎年毎年だと、もうちょっと頑張れって未来の自分に怒られそうだけれど。

 「幸せな一年」や「充実した一年」より、「楽しい一年だった」と思える年のほうが少ないんじゃなかろうか。そういう意味では、わたしは今年に大変に満足している。

 そして、本当に会いたい人にしか会わない、そう決めたら、大切な人間が誰なのか明確に見えた。ここから先の人生は大切な人間だけ大切にしようと思う。
一生ものにしたい人間関係を自覚できただけでも、今年は意味ある一年だったと言える。

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