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脱・草食系男子フェア

2017.12.31 公開 ツイート

被害者続出!「彼氏面男子」に気をつけて 宮崎智之

藤沢数希さんの小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』のドラマ化(2017年12月28日に放送)を記念して、各電子書店で「脱・草食系男子フェア」を開催しています!その中から日替わりで"脱・草食系男子本"をおすすめします。

あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 恋愛編 宮崎智之
男と女の間には、新しい現象が次々と生まれ、かつての常識は通用しなくなり、男女ともに新しい価値観の間で戸惑っています。本書は「恋愛の当たり前」を解体した、現代を生きるための必読書です。

iStock/Zinkevych

彼氏面男子の3つの特徴

 人間観察をライフワークにしている著者が、長い間、温めていたモヤモヤがある。飲みの場、職場、学校、街中など、至るところでそのモヤモヤは姿を表した。男が女に見せる、ある姿勢とでもいうのだろうか。偉そうではあるのだが、亭主関白とも違う。なぜなら、彼らは結婚もしていなければ、付き合ってすらいないからだ。そして、ある時、天啓のように、このモヤモヤに適切な名前をつけることができた。そう、彼らは「彼氏面(づら)」をしているのである。

 適切な名前をつけることで、モヤモヤに対する見通しが一気に晴れることがある。筆者は、彼らのことを「彼氏面男子」と名付けた。彼氏面男子とは、交際してもいない女性に対し、あたかも自分が彼氏であるかのような妙な振る舞いをする男性のことだ。この彼氏面男子のウザさに悩まされている女性は多い。

 筆者の元には、かねてより彼氏面男子による被害報告が女性から寄せられていたが、その現象に「彼氏面」と名前をつけることができてからは、より一層、その存在が引っかかるようになった。気になってさらに取材を進め、SNSでもエピソードを募集したところ、女性からの熱いタレコミが大量に集まってきた。彼氏面男子がこんなにもいて、迷惑している女性が多い現状に驚きを隠せない。

 

 筆者が女性からのタレコミを分析したところによると、「彼氏面男子」を批判する意見にはいくつかの共通点がある。「クソバイス」「お前じゃない感」「無駄な当事者意識」の3つである。これから順に、その特徴をチェックしていこう。

 

 最初に指摘しておきたいのが、「彼氏面男子がなぜ面倒くさいのか」ということである。当然、好きでもない男性から彼氏面されると、女性としては不快であることこの上ない。

 しかし、それだけではないのだ。彼氏面男子は、特定の女性に対してだけではなく、周りの人間に対しても彼氏面する。「あいつは俺の女だから手を出すな」と、言葉や態度で示すのである。そうなってくると、ただの「勘違い男」として放置しておくわけにはいかない。特に意中の男性がいる女性は、すぐに対処しなければならないだろう。彼氏面男子は「マーキング男子」でもあるからだ。マーキングされたままにしておくと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまうことになる。

 

 それでは早速、筆者の元に集まった被害者たちのエピソードを紹介していきたいと思う。寄せられた声は匿名とし、年代だけ付記することを、あらかじめ断っておく。

 

「出会ったばかりの男友達から、『○○は、その髪型は似合っていないよ』とか、『俺の好みの服装は、もっと女の子っぽいやつだから』とか言われた。なんで私が、あなたの好みに合わせなければいけないの?」(20代/女性)

 

「まだ若い頃の話。私が薄着していると、付き合ってもいない男性から『みっともない!』と怒鳴られました。女友達の服をはおったら、『怒鳴ってごめんな。お前が軽い女に見られるのが許せなかったんだ』と甘えた声で話しかけてきて……。他にも会ったこともない私の両親の誕生日にプレゼントを勝手に送って、『お前が気が利かないから、送っておいたよ。ちゃんと両親を大切にしろよ』と説教されたり。私がいない飲み会で、『あいつは俺がいないとダメな女なんだ』と語り出したこともあったそうです」(40代/女性)

 

 まずツッコミたいのが、「なぜそんな上から目線なのか」ということである。女性のことを呼び捨てや「お前」呼ばわりするのも、彼氏面男子の特徴だ。

 2つのエピソードに共通するのが、「クソバイス」(クソみたいなアドバイス)というキーワードである。これは、エッセイストの犬山紙子さんが提唱した言葉で、男性からのクソみたいなアドバイスに辟易している女性が多かったのか、たくさんの共感を呼び、瞬く間に世間に広がっていった。

 クソバイスをする男性は、「俺は、お前のためを思って言っている」と思い込んでいるからタチが悪い。百歩譲って自分の彼女に言っているのならまだしも、相手は付き合ってもいない女性である。なぜ、そこまで強気に出られるのか、筆者にはまったく理解ができない。

 さらに、「仕事大変そうだな。今日は早く帰ってゆっくり寝ろよ」「夜遅いんだから、気をつけて帰れよ。女の子の一人歩きは危ないんだから。家に帰ったら、ちゃんと俺に連絡しろよ」といった、比較的ライトなものも、相手との関係性によっては、彼氏面のクソバイスとして受け取られてしまうこともある。

 

圧倒的な「お前じゃない感」

 続いては、こんな「彼氏面男子」のエピソードをご紹介しよう。

 

「知人の男性から、いきなり1ヵ月間の予定がLINEで送られてきて、『空いている日程はある?』って聞かれました。怖いし、気持ち悪いので、『その日程は、どこも空いていません』と返信したら、『いつも、忙しくてごめんな』と何故か謝られた。彼氏でもあるまいし……。その後もしつこく予定が送られてきたけど、完全に無視しています」(30代/女性)

 

「ある男性から、『これからお付き合いも含め、前向きに考えてもらえる?』と聞かれました。食事とお酒をおごってもらった手前もあり、付き合うのは無理だけど濁しておこうと思い、『まぁ……今後、考えるくらいなら』と答えたところ、次に会ったとき相手の馴染みのBarに連れて行かれ、平然と『彼女』と紹介されてびっくり。人前なので、彼の面子を潰すわけにはいかず、その場は適当に話を合わせたけれど、『自分のほしい物を買える分だけ働けばいいからね』と完全に彼氏面。こいつじゃなかったらなー、と思いました」(20代/女性)

 

「別に好きでもない男性と食事に行ったとき、突然、『お前、どれだけ俺のこと好きなんだよ』と言われて、頭ぽんぽんされたことがあります」(20代/女性)

 

 なかなか、ナイスな彼氏面っぷりである。3つのエピソードに共通するのは、圧倒的な「お前じゃない感」だ。

 男性の草食化が嘆かれて久しい。男性のほうから恋愛をリードしてもらいたいと思う女性も多いが、草食系男子たちはなかなか積極的にアプローチしてくれない。そうした状況のなか、ガツガツと来てくれる肉食系男子の存在は女性にはありがたい側面もある。

 この3つのエピソードに登場した男性たちは、おそらく肉食系男子なのであろう。ただし、積極的になってほしいのは「お前じゃない」のである。彼らの勇気は評価するが、人はそれを勇気と呼ばない。ただの蛮勇である。何度も言うが、女性からしてみれば圧倒的に「お前じゃない」のだ。

 

「無駄な当事者意識」は、本当に無駄

 お次は、「無駄な当事者意識」が強い「彼氏面男子」のパターンを見ていこう。

 

「彼氏ができたので、共通の友人たちに報告しました。すると、1人の男性が私の近くに寄ってきて、『付き合ったんだってね。俺の立場はわかると思うけど、俺はお前に幸せになってもらわなきゃ困るんだ』って。その友人とはなにも恋愛沙汰がなかったはずなので、『俺の立場』っていうのがまったく理解できなかったし、『別にあなたに言われなくても普通に幸せだよ!』と思いました」(20代/女性)

 

 実際には、相思相愛の男女が付き合っただけなのにもかかわらず、三角関係の一角を担おうと無理やり自分をねじ込んでくる。筆者は、それを「無駄な当事者意識」と呼んでいる。

 さらに、こんなエピソードも報告されている。

 

「私に彼氏がいることを知っている、Aという友人男性がいました。あるとき、共通の友人男性Bと親しく話していたら、Aから『過去にBと付き合っていたに違いない。黙っていてもわかる、正直に言ってほしい』と言われました。もちろん、そんな事実はないし、Aはただの友人に過ぎないので、なぜそんなことを言われなければいけないのか、まったく理解できませんでした。また、あるパーティに出席した際、Aが『別のフロアで俺の見ていない間に、他の男とイチャイチャしていたんだろ!』と怒ってきました。周りに誤解されたくないので私が強い態度に出たら、『隠さなくてもいい、絶対にそうだ! 嫉妬で狂いそうだよ』と言われ……。気持ち悪いを通り越して怖かったです」(20代/女性)

 

 この男性は、「無駄な当事者意識」がありすぎて、彼氏面に留まらず自らが本当の彼氏であると勘違いしてしまっているのだろう。一歩間違えば、ストーカーである。もはや笑えないレベルまで達している。

 さらに、次のエピソードは、彼氏面を通り越して、ストーカーやセクハラレベルにまで発展してしまっている事例である(他のエピソードもそうなのだが)。

 

「知り合い男性と初めて飲んだ帰り道、無理矢理抱きしめられました。すぐに逃げましたが、その後LINEで一方的なメッセージが……。内容は『今日は仕事で疲れた』という近況報告から、『好きだよ。愛している。返信ください』といったものまで。すべて既読スルーしているけど、何かあったときのためにログは取ってあります」(20代/女性)

 

あなたの「彼女」は、本当に彼女?

 それでは、彼氏面男子に粘着されないためには、どのような心掛けが必要なのだろうか。

 ある女性に聞いたところによると、彼女は「男性に困ったことをされると、怖くて思わず笑ってしまう」のだという。それを男性は、「喜んでいる」と勘違いしてしまうのだ。彼氏面男子を生まないためには、毅然とした態度を相手に示すことも必要であろう。なにも罪がない女性にとっては、迷惑な話である。

 

 逆に、男性にはこう言いたい。「女性が笑っているからといって、勘違いしないほうがいい」と。男性だって、上司や取引先に愛想笑いすることくらいあるはずだ。なぜ、自分のことになると、「相手は本心から笑っている」と思い込んでしまうのか。

 恋愛において肝要なのは、つまるところ「距離感」だ。ただし、自分から見た相手との距離を測ればいいというわけではない。距離感とは、あくまで相手と自分との距離であり、自分から見ると距離が近いように見えても、相手からすると視界に収まらないくらい、遥か遠くに見えているかもしれない。いわゆる「アウトオブ眼中」というやつである。そのことを忘れないでいただきたい。

 一方、女性が毅然とした態度を示しても、「口で言っているだけで、本心は違う」「こんなにズケズケ言うからには、俺に気を許している」と〝前向き〟な勘違いをする男性もいる。こうなってくると、もうお手上げだ。大きなトラブルになる前に、周囲の友人に相談して、説得してもらうしかないだろう。どうしても聞かない場合は、すぐさま縁を切るか、それでもしつこく粘着されたら、しかるべき機関に相談することをお勧めする。

 

 世間にはびこる彼氏面男子たち。男性諸君、あなたが「彼女」と思っているその女性は、本当に彼女だろうか。そして、女性諸君はくれぐれも注意してほしい。もしかしたら知らない間に、あなたは誰かの「彼女」になっているかもしれないのだ。

 

「お兄ちゃん男子」という悪夢

 前回の記事を読んだ女性から新たなタレコミがあったので、報告させていただきたいと思う。世に彼氏面男子の種が尽きるまでは、筆者の研究心が収まることはないのだ。今回のタレコミは、これまでのエピソードと一線を画している。彼氏面を超えた存在だと言ってもいい。

 

 まずは、簡単にタレコミの内容をまとめよう。

 

 彼女は20代後半。一年前の4月に転職し、営業職として働いている。問題の彼氏面男子は、同じ部署にいる30代の男性上司だ。この上司は彼女の教育係であり、入社当初は「面倒見のいい人」だと思っていたという。

 そんな心の隙を突かれてか、LINEを交換してしまったことから事態は悪い方向に進む。連日、上司から長文のメッセージが送られてくるようになったのだ。内容は仕事への熱い思いを吐露するものから、季節の移り変わりを詠ったポエムまで。常軌を逸しているのは、その長さである。とにかく長い。長すぎるのだ。職場の上司ということもあり、彼女も短文ではあるが返信していた。

 ある日、職場の飲み会が終わって彼女が帰ろうとすると、上司から「2人で二次会に行こう」と誘われた。しかし、彼女は彼氏持ちである。そのことをしっかり伝えて断ると、上司は「そうだったんだ」と簡単に引き下がったという。

 ここまでなら、職場でよくある「片思いで残念でした」のエピソードで済んだであろう。しかし、その後に上司がとった行動が、本当に不可解なのである。

 

 二次会に誘われた翌日、彼女は職場で別の男性社員と談笑していた。その後、自分の席に戻ると、上司からLINEメッセージが届いていた。恐る恐るメッセージを開いてみると、そこには「彼氏がいるのに、他の男と喋っちゃダメだよ」という衝撃の内容が書き込まれていた。彼女は、軽い吐き気を催した。さらに、ある時は、「Aが君に気があるらしい。彼氏がいるんだから、振らなきゃいけないね。なんなら、俺が断ってあげてもいいから」とメッセージしてきたという。

 極めつけが、「彼氏は職場のことまで目が届かないから、俺が頑張らなくちゃ!」という謎の決意表明。「お前は私のなんだというのだ」と、あまりの事態に彼女は悔し泣きしたという。当然、上司と彼氏は面識がない。なのに、なぜか彼氏に対して連帯感を抱いている。しかも、二次会を断って以来、上司は一切声をかけてこない。すべてがLINEのメッセージなのである。怖すぎる……。

 すでに指摘した「無駄な当事者意識」をこじれさせたパターンだと思われるのだが、この上司は「職場での彼氏的なポジション」という当事者性を獲得しようとしているのだろうか。いや、むしろ「彼氏」を超えて、「身内」になろうとしているようにさえ感じる。いわば、〝お兄ちゃん的存在〟になろうとしている。

 可愛い妹を外敵から守る頼もしいお兄ちゃん。妹の彼氏に対して理解がある優しいお兄ちゃん。「お兄ちゃんに任せておけば大丈夫!」と言いたいのであろうが、当然のことながらこの上司は赤の他人であり、お兄ちゃんでもなければ、仲の良い知人ですらなく、「当事者」として彼女の人生にかかわることは未来永劫ない。

 何度言っても理解しない男性がいるので念を押しておくと、それは、見事なまでに「ない」のだ。女性の人生に無理やり自分の存在をねじ込もうとする彼氏面男子の態度を、筆者は「無駄な当事者意識」と呼んで糾弾している。

 

 上司の“お兄ちゃんメール”は、その後もことあるごとに続いている。彼女は友人に相談し、「その上司はストーカーだから、会社か警察に相談したほうがいい」とアドバイスされた。しかし、「大ごとになって会社を辞めなければいけなくなる可能性を考えると、どうしても行動に移せない」と今も悩んでいる。

「女子を悩ます「彼氏面男子」が急増中」より)

 

***
あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 恋愛編目次抜粋

◆彼氏面男子の3つの特徴
◆「無駄な当事者意識」は、本当に無駄
◆あなたの「彼女」は、本当に彼女?
◆「お兄ちゃん男子」という悪夢

◆男性だっておごってほしい……
◆披露宴の記念撮影で悪夢が……
◆ホテルの窓の光で「L・O・V・E」は524万円

◆「押し付けプレゼント」は、彼氏面男子の特徴だ
◆「彼氏、彼女」はセックスの手垢がついた表現
◆『逃げ恥』がヒットした理由も「相方」にアリ?
◆多様性に配慮し尽くした、正しすぎる「相方」という表現

◆なぜホテルに行かずに駅のホームなのか
◆至るところで共振するカップル

 

◇今だけ20%引き!脱・草食系男子フェア対象タイトル一覧◇

ぼくは愛を証明しようと思う。』 藤沢数希
日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』 湯山玲子/二村ヒトシ
ルポ 中年童貞』 中村淳彦
ヤクザに学ぶ恋愛交渉術』 山平重樹
あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 恋愛編』 宮崎智之
恋愛で暴走しないための技術』 二村ヒトシ/アルテイシア/仲俣暁生/中野信子
男と女がいつもすれ違う理由』 はあちゅう/藤沢数希
日本一有名なAV男優が教える人生で本当に役に立つ69の真実』 加藤鷹
出世する男はなぜセックスが上手いのか?』 アダム徳永
「劇場版テレクラキャノンボール2013」が教えてくれる男と女とその時代』 湯山玲子/カンパニー松尾

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脱・草食系男子フェア

藤沢数希さんの小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』のドラマ化を記念して、
「脱・草食系男子フェア」と称し対象作品の電子書籍版をお得にご購入いただけるフェアを各電子書店で開催しております。
今回はその中から一部を紹介させていただきます。

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宮崎智之

フリーライター。1982年生まれ。東京都出身。地域紙記者、編集プロダクションなどを経てフリーに。日常生活の違和感を綴ったエッセイを、雑誌、Webメディアなどに寄稿している。著書に『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。
Twitter: @miyazakid

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