(写真:iStock.com/Cappan)

 新刊『北朝鮮がアメリカと戦争する日――最大級の国難が日本を襲う』の中で、元自衛艦隊司令官の香田洋二さんは、「戦争にならないという結論を導くほうが難しい」と述べています。国防の最前線に立ってきたからこそ、平和の重要性を誰よりも知っている香田さんが、そう断言するのは、今回の危機は、たんなる北朝鮮とアメリカの対立という二国間の問題に留まらないものだからです。

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「アメリカに攻撃意思はない」という早計

 アメリカは本音では、北朝鮮を攻撃する気がないのではないか。北朝鮮の核武装と大陸間弾道ミサイル(ICBM)保有を「しぶしぶ」認めるのではないか。このような推測をする軍事や国際政治の専門家が、ここに至っても多いように見受けられます。何が何でも戦争を避けたい反戦知識人は、愚かにも、それを喜んでいるようでもあります。

 ですが、はっきり申し上げて、こうした観測はあまりに早計です。

 そもそもアメリカには初めから、北朝鮮の核武装と、アメリカ本土へ届くICBM保有を許すつもりは、全くありません。そして、アメリカは、自国の安全が直接脅かされても敵地攻撃すらできない日本とは違います。北朝鮮が核ミサイルを保有するのであれば、時機が来れば、何の前触れもなく、静かに、しかし電撃的に北朝鮮に対する攻撃を始める。アメリカは、ただ、その時機を待っているだけなのです

 そのことは、2016年からの米軍の動きを見れば、はっきりと分かります。

 たとえば米軍は同年10月、ネバダ州で核爆弾投下訓練を行い、その事実と写真を公開しました。核兵器の運用に関わるこの種の訓練は非公表で行われるものなのに、なぜ公表したのか。「アメリカは核を使うことも辞さない」という、北朝鮮に対するメッセージだったとしか考えられません。

 北朝鮮は同年9月に、5回目の核実験とICBM用新型ロケット・エンジンの実験に成功しています。米軍の核爆弾投下訓練は、その直後に行われています。それは行動による、アメリカの強力な意思表示です。

 振り返れば、国際社会は、1994年の北朝鮮のIAEA脱退以後、23年間にわたって、核開発放棄のための有効な策をとれず、北朝鮮の行動を実質的に追認してきました。中国、ロシア、韓国、日本も含めた6カ国協議や国連経済制裁などで、核開発の放棄を促したものの、主役のクリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権のいずれも、軍事攻撃で強制的に開発を中止させることは避けました。北朝鮮がこのようなアメリカの弱腰を見透かし、高笑いしながら長期間にわたり開発を続けてきたことは、前回も述べたとおりです。

 しかし、北朝鮮が2016年に2回の核実験を行い、ミサイル発射を繰り返したことで、アメリカは明確にそれまでの姿勢を変えました。その証拠に、米軍は、アメリカ本土から北朝鮮を射程に収めるICBMミニットマンⅢの発射実験を、2016年から17年にかけて、5回以上実施しています。ミニットマンⅢは、射程1万キロメートルの弾着精度が約80メートルと言われています。必要な場合には、北朝鮮が誇る地下基地も、ピンポイント核攻撃により容易に破壊することができます。その威力は、通常の、地中貫通型爆弾であるバンカーバスターをはるかに上回ることは当然です。

 普通、ミニットマンの発射実験は、性能や作動確認及び練度の維持のため、年に1〜2回程度しか実施しません。この時期の連続発射は、北朝鮮の核ミサイル開発阻止のためには核の使用も辞さないという、アメリカの毅然とした意思表示であることは明白です。

 アメリカ本土が核ミサイルの脅威にさらされるまで、ほとんど時間は残されていません。北朝鮮に核ミサイル開発をやめさせる最終手段がアメリカの北朝鮮攻撃であることは、アメリカ国民が最もよく分かっています。

 このように述べると、本稿冒頭のような、「ならば、なぜアメリカは一刻も早く攻撃しなかったのか」「攻撃しないのは、戦争を回避したかった証拠じゃないか」という反論があるかもしれません。しかし、アメリカは北朝鮮のミサイル実験に反応して、軍事攻撃を始めるわけではありません。北の挑発に乗って攻撃するのでもありません。

 では、いつやるのか。

 簡単です。アメリカにとって、最大の攻撃成果を挙げることができる最適な時機を選ん
で始めるのです。したがって、前触れもなく突然始める可能性も十分あります。今まで米軍が動いていないから「攻撃する気はなかった」という考えは、全くの誤りなのです。

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