(写真:iStock.com/Cappan)

 新刊『北朝鮮がアメリカと戦争する日――最大級の国難が日本を襲う』の中で、アメリカと北朝鮮が軍事衝突するXデーは最も早ければ年内と分析する、元自衛艦隊司令官の香田洋二さん。国家体制存続のための唯一の手段として、核・ミサイル開発に国力のすべてを注ぎ込み、間もなく宿願を達成しようとしている北朝鮮。周辺諸国は、そしてアメリカは、なぜそのような暴走を許してしまったのでしょうか。

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1994年の妥協が問題悪化の発端

 北朝鮮の核が国際政治上の脅威として広く認識されたのは、1994年、国際原子力機関(IAEA)脱退に伴う第1次核危機でした。

 私はこのとき、アメリカ・クリントン政権が軍事オプションをとらずに金日成と「妥協」したことが、北朝鮮問題をここまで悪化させた経緯の発端だと考えます。

 クリントン大統領は当初、空爆に加えて地上軍投入を有力な選択肢としていました。その計画は、当時の在韓米軍約5万人に6万人を増派して加え11万人体制にし、北朝鮮の核施設を攻撃・破壊して将来の開発への芽を摘むもので、ベトナム戦争終結以来最大の、地上軍大規模増派案でした。

 国務省・国防省の戦略担当者にとっては、北朝鮮が、長年の目標である核保有へ実質的な「第一歩」を断固たる決意で踏み出そうというまさにそのとき、交渉でそれを廃棄しないことは明白でした。

 しかし、地上戦が起これば、韓国で100万人単位の民間人の犠牲者が出るという報告が上がったことにより、クリントン大統領は決断を躊躇しました。

 当時はクウェートにおける湾岸戦争(1990年8月のイラクによるクウェート侵攻を受けて、91年1月にアメリカがイラクを空爆。2月に停戦)の後処理で、朝鮮半島にそれ以上の兵力を割けないということもあったでしょう。

 また軍事的には、湾岸戦争では決定的だった空爆ですが、北朝鮮の核施設攻撃にどこま
で効果を挙げることができるか確信が持てなかったのかもしれません。

 さらに当時の韓国軍は今ほど強力ではなく、米軍との協力関係も、合同軍事演習「チームスピリット」こそ行われていたものの、共同体制は今日のように十分ではありませんでした。

 外交的には、これも全世界が賛成した湾岸戦争と異なり、軍事的手段に対するロシアや中国の支持を取りつけることも難しかったでしょう。

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香田洋二『北朝鮮がアメリカと戦争する日』

アメリカ全土を攻撃できる核ミサイル完成まであと半年。もはやアメリカが北朝鮮を武力攻撃しない理由はない。Xデーはいつなのか? 日本への攻撃はあるのか? そのとき自衛隊は? 元海上自衛隊No.2、軍事のプロフェッショナルが語る、リアルにして衝撃のシナリオ