2017年、幻冬舎plusでたくさん読まれた記事ベスト10を発表しています。
9位はご自身のtwitterでの人生相談も話題、『嫌われる勇気』でおなじみの岸見一郎さんによる「かけこみ人生相談」の記事です。ご主人が会社を辞めてしまうかもしれない、と悩んでいる奥様に「仕事をするしないは本人が決めること」とした上で、夫婦で話し合いする上で気をつけたい3つのことを教えてくださいます。


 

相談 (主人が会社を辞めたいと言います・主婦・53歳・大阪府)

 こんにちは。はじめまして。私は53歳の主婦で主人は55歳です。主人は建築設計の仕事をしているのですが4、5年前に部署が変わり、全くその仕事の内容が変わってしまいまして、老眼も増え今かなり仕事がやりづらいと本人は悩んでいるようです。定年まであと4年。私としてはわからないならわからないなりに周りの人に聞いたりして時間を過ごして欲しほしいと思っているのですが、主人はそれが耐えられないようです。

 大学生の息子も2人いてこれから高校に上がる娘もいます。今会社をやめられたら家のローンを払えません。子どもたちを学校に行かすこともできません。本当に困っています。本人は違う仕事をすると言っていますが、正直、今の収入よりも半分ぐらいなるのは目に見えています。会社がやめろと言ってるわけではないので、このままのらりくらりとでも在籍してくれたらそれで良いのではないだろうかと私は思うのですが。真面目な主人は耐えられないようです。私は辞めさせてあげるべきなんでしょうか?

お答えします。(今回の回答者:岸見一郎さん)

夫との話し合いでやってはいけない3つのこと

 教育のこと、家のローンのことを考えたら、今仕事を辞められたら困ると思われるのは当然でしょう。

 でも、彼もそんなことは百も承知で今の仕事を辞めたいと言い出されたに違いありません。とても現状では辞めることはできないことがわかっていながら、辞める決心をするのは勇気がいったはずです。

 違う仕事をするといっておられるのですから、決して一時の迷いではないでしょうね。実際、部署が変わったのは最近のことではなく、4、5年前のことです。それからずっと仕事内容が変わり、仕事がやりづらいと悩んでこられたのです。

 自分で決定したことを事後的に報告されたわけではありませんし、なお迷ってられるようにも見えます。いくつかのことに注意して話をしましょう。

 まず、あなたは意見をいうことはできますが、「彼に意見をいえることといえないことがある」ということです。本来、仕事をする、しないは本人が決めること、本人しか決められないことではありますが、彼が仕事を辞めれば家族は実質的な迷惑を被ることになりますから、「辞められること」についてあなたが意見をいうことはできます。
 その際、絶対辞めてはいけないと、最初からこの考えは譲れないと話してはいけません。結論を最初にいってしまえば話し合いにはならないからです。

 あなたが意見をいえるのは、今仕事を辞めたら何が困るか、困らないためには何をしなければならないかということについてだけです。もちろん、それについて話すことで、辞めることが現実的でないと納得されたら思いとどまられるかもしれませんが、これも話をしてみないとわかりません。

 次に、彼の仕事の仕方については触れてはいけないということです。「わからないならわからないなりに周りの人に聞けばいいではないか」というようなことです。仕事を辞めないでほしいというのはあなたの希望ではありますが、たとえ辞めることを思いとどまる決心をされたとしても、どんな仕方でこれから働くかは彼が決めることです。「のらりくらりとでも在籍」すると思われるかもしれませんが、あなたが働き方について口を挟むことはできません。

 第三に、話し合いをする時に決して責めないことが大切です。まずは、話を聞き、彼の考え方を理解することに努めましょう。理解することと賛成するということは違います。理解できるけれども賛成できないということは当然あります。大事なことは、あなたは自分の考えに聞く耳があり、理解しようとしていると彼が思えることです。

 仕事を辞める、辞めないということは目下のテーマではありますが、最初から理解しようとしない、話も聞かないということでは、たとえ彼が仕事を続け、経済的に支障をきたすことがなくなったとしても、今後の二人の関係はよくならないかもしれません。

 人は仕事をするために生きているのではありません。生きるために、さらにいえば幸福に生きるために働くのです。その意味では、現実的な問題は確かにありますが、意に染まない仕事をすることで彼が幸福ではなく、ひいては二人の生活も幸福と感じられなければ元も子もないように思います。

 話し合いは一度でなく、何度もしてもいいのです。「今日は結論は出なかったけれど、また話しましょう」ということでいいと思います。大切なことは、二人が問題の解決に向けて協力できるということです。

 どんな形であれ協力して問題を解決できたという実感が、これからの二人の人生にとって貴い経験になりますように。

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