エッセイスト・石黒由紀子さんちの「コウハイ」と、シンガーソングライター・山田稔明さんちの「ポチ実」。SNSで繋がっていた(?)二匹が、初対面しました。

 

 

 通い猫チミママが去ったあと、ポチ実とコウハイくん、そして人間たちは憩いのティータイム(まあポチ実とコウハイくんは緊張の拮抗状態なのだけど)。僕は由紀子さんの『猫は、うれしかったことしか覚えていない』を読んでいて、由紀子さんは僕の『猫町ラプソディ』を読んでいるので、エッセイに出てきたあの話は実は……、と裏話やネタばらしも可笑しくて話が弾む。そこにいるみんながポチ実とコウハイくんを「チミちゃん」「コウちゃん」と愛称で呼びあうのもなんだかとても平和でいいなあと感じる。

 抱かせてもらったコウちゃんは思ったより軽い。ふわふわの毛のなかの身体はシュッと締まっているのだ。女の子なのにチミのほうが体重が重いという衝撃。ムチムチと実の詰まったその体を眺めながらダイエットを決意したのは飼い主の僕。猫町にはいつも通り時間が過ぎていき、だんだん日が傾いてきた。

「チミちゃんはこの庭に運命的にやってきたのね……」そんな顔をして由紀子さんが紫陽花の立ち枯れた我が家の小さな庭を見つめたので、「コウちゃんとお庭に出てみますか?」と戸を開けた。ポチ実は部屋のなかより庭のほうがリラックスできると思ったのか、リードのついた首輪を自ら志願し、トコトコとモミジの木のほうへと駆け出していく。由紀子さんの肩に必死にしがみつくコウちゃんは家のなかにいるときより小さく見えて、一方のポチ実は俄然いきいきしてきて「この庭はアタシのものよ!」という自慢げな顔を見せるから面白い。

 庭のある家に猫と住むのは素敵なことだ。人間も猫も楽しくて幸せ。脱走とか事故のないように細心の注意を払わないといけないけれど、四季折々の風景のなかを駆け回る姿は微笑ましく力強い。コウちゃんにもうちの自慢の庭を体験してもらえてよかった。ちょっと緊張させたけどね。

 最後にみんなで記念写真を撮ろうということになり、嫌がる猫たちを胸に抱いてまたひと騒動。シャーシャーニャーニャー大騒ぎして、チミちゃんとコウちゃんの人見知りは解消せず、恋に落ちるにはいたらなかったけど、僕らはとても楽しい時間を共有したのだった。バイバイ、コウちゃん、由紀子さん。また会いましょうね。こんどは僕らのほうから会いにいけたら。

 無数にシャッターを押した写真が切り取ったポチ実とコウハイくん、そして僕と由紀子さんの顔が最高で、すぐにメールで画像を送信した。ポチ実はお客さんが帰ったあとはケロッといつもの表情に戻って、毛づくろいをしたり、いろんな場所の匂いをかいだり、パトロールにも余念がない。愛すべき日々の暮らしのなかで、昨日と今日が少しずつ違うのがいい。たまにはこんなスパイスの効いた一日があっても楽しい。愛猫との楽しく穏やかな暮らしがずっと永遠に終わらずに続けばいいなあ、と心から思う。世の中のすべての猫にも同じように幸せであれ、と切に願う。

 

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石黒由紀子・文/ミロコマチコ・絵『猫は、うれしかったことしか覚えていない』

ありがとう、猫たち。
今を生きることを教えてくれて。
「センパイコウハイ」シリーズのエッセイストと、『ねこまみれ帳』の画家による、くすっと笑えて、しみじみ沁みる、猫のはなし。