子育てが一段落したから、旅をしたい。そう思って、準備運動的にツアーに参加。苦手な集団行動だけど、「郷に入っては郷に従え」と唱えながらの旅行で、出会った人、見た景色、感じた風は……。待望の旅フォトエッセイ『こういう旅はもう二度としないだろう』から試し読みをお届けします!


 旅行の準備運動として私が選んだのは、Kツーリズムの「世界遺産の街ホイアンに4連泊! 中部ベトナム充実の5日間」というツアー。2016年1月18日から22日まで。
 ベトナムという近さ、しかもホイアンまで車で数十分のダナン空港へ成田から直行便(約6時間)、そして同じホテルに4連泊という無理のないスケジュールが決め手になった。
 ホイアンという街を私は知らなかったのだが、世界遺産に指定されていて風情ある木造家屋が立ち並び、かつてアジアとヨーロッパの交易の中心地として栄え、16~17世紀には日本人街もあったそう。ふむふむ。これだけ読んでもピンとこないが、とにかく4連泊というのがとてもいい。

 申し込み後、締め切り日に旅行会社から連絡が来て、参加者が2名しかいないという。
「現在のところ、参加者が2名しかいらっしゃらないのですが、こちらとしては遂行したいと思います。もうひとりは男性ですがよろしいでしょうか」
 と聞かれた。
 どうしよう。男の人とふたりだって。
 食事はどうなるのか聞いたら、その人とふたりだけで食べるのだそう。ガイドは別の料理なのでと。
 嫌だ……。
「男性の方に聞いたところ、私はいいですよとのことでした」
 きゃあ~。まるでブラインドデート。
 冗談はさておき、そんなことで旅行の計画を断念するのも嫌なのでOKした。今から申し込む人がいるかもしれないしね。少し緊張しながら出発の日を待つ。

 2016年1月18日(月)1日目
 成田空港15時25分発なのでゆっくり家を出る。
 他の参加者や現地ガイドさんとはダナン空港で待ち合わせで、チケットだけ団体カウンターで受け取り、行きの飛行機はひとり。窓際だったけど隣にものすごくよくしゃべるおばちゃんふたりが座ったのでとても苦しかった。飛行機も古くて席ごとのスクリーンもない。おばちゃんたちは床に新聞紙を広げて靴を脱いで、ビールを飲み始めた。ワイワイと楽しそう。私はひっそりとストイックに禁酒の本を読む。でも途中で後ろの席がけっこう空いてることに気づいたので移動させてもらった。
 それからは天国。
 海外旅行では飛行機の席は毎回、賭けだ。まわりにどういう人が座っているかで大きく気分が変わるから。うるさすぎる人、大きすぎる人、赤ちゃんの号泣など……。

 19時50分到着。時差は2時間。
 荷物を取って出たところで集合。ちょっと緊張する。現地ガイドさんがいた!
 そして……、参加者は全部で5名、ということが判明。女性もひとりいる。よかった~。ホッとした。おじさん、おじいさん、おじさん、同年配の女性、私。おじいさんとおじさんと女性は3人組。そのおじさんと女性は夫婦。

 外はもう暗くなっている。ミニバンに乗り込んでホイアンへと向かう。ガイドさんの名前はニャットさん。予定ではホテルに行く前に夕食をレストランで取ることになっている。
 暗い道を1時間弱走り、ホイアンの街に近いレストランに着いた。お客さんはだれもいない。閉店後のようだ。活気もなく、うす暗く寂しい。ベトナム料理がコース風に大皿で出てきた。一瞬、「わあ~っ」と思ったけど、どれもおいしくなかった。いったいこれは? と驚くほどの味。これがツアーか……と思う。とりあえず私はちょっとだけ食べる。まだどの人にも親しみがわかず、気が沈む。
 食事を終え、夜のホイアンの街へ入った。興味津々。でも暗くてあまり見えない。川の方に明るい電飾が見えただけ。

 ホテルへ。
 私はホテルをランクアップしていたので、みなさんが降りたあと、数百メートル離れたすぐ近くの他のホテルへ移動してチェックイン。みなさんのホテル「タン・ビン・リバーサイド・ホテル」(4つ星)も悪くなさそうだったが……。
 私のホテル「ホテル・ロイヤル・ホイアン・Mギャラリー・コレクション」の部屋はモダンできれいだった。けど、ちょっと張りぼてっぽい。底が浅いというか。形だけというか。
 でもお風呂に入ったらやっと落ち着いた。どうしても初日は気持ちが落ち着かないものだ。12時に就寝。まだ楽しくない。……うすら寂しい。

象の形に刈り込まれた木

ダンハー陶器村 つまんなそうに足でろくろを回す女性

私の人生の旅が始まる

夕暮れのホイアンそぞろ歩き

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