「インターネットで一番数字を持っているライター」と呼ばれるヨッピーさん初の本『明日クビになっても大丈夫!』が発売になりました。爆笑しつつも大共感、そして仕事について改めて考え直すきっかけとなる本書の試し読みを少しずつ掲載していきます。ためし読み最終回は、ヨッピーさんがネットで記事を書く時に、どうやってバズらせてきたか、その秘密を語ります!

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「面白いものを作る」と一言で言っても、その「面白いもの」が世間のニーズと一致していない限りは社会的な価値がないわけであります。そりゃそうだ。例えば白い壁を一日中眺めてるのが好き、という変態がいたとして、その人が「これは最高だ!!」とか言いながら白い壁が延々写ってるだけの動画をYouTubeにアップしても誰も見てくれない。だから「自分にとって面白いもの」と「社会的な価値があるもの」との折り合いをつけなければいけない。第一章の冒頭に僕は「好き放題している」とは書いたけれども、でも実は「純粋な意味での好き放題」ではないのであります。だって、マジで好き放題だったら毎日キャバクラにしか行かなくなるからね。つまり、考えかたとしては「自分が面白いと思うもの」である必要がまず最初にあって、そこから更に「ウケそうなもの」を選んで実行する、というような流れであります。やりたいものの中からウケそうなものを選んで記事を書くのである。

 じゃあそこで問題になるのが「そもそも何がウケるんだろう」という部分ですが、これを僕が方程式化したものがあるのでご紹介したい。

 広さ×深さ×距離感の法則

 というやつである。方程式、とか言うと一気に頭が悪そうに思われるかもしれないけど、その辺は我慢して聞いて欲しい。広さ×深さ×距離感という方程式のうち、まず最初の「広さ」について説明しよう。

 この「広さ」っていうのはつまり、世に出そうとしているものがどれくらいの人にとってニーズがあるか、っていう部分である。これだけだとわかりにくいので、例えば「うまいラーメン屋さん」の記事について考える。

「東京で一番美味しいラーメン屋」の記事と、「鳥取県で一番美味しいラーメン屋」の記事。どっちが「広いか」と言えばもちろん東京で一番美味しいラーメン屋さんの情報である。何故なら単純に東京の方が人口が多いからだ。別に細かく数字を見るところまでやらなくてもいいけど、感覚的に「こっちの方が広そうだな」みたいな事はわかって貰えると思う。

 石原さとみさんの水着と、久本雅美さんの水着を比べてもいい。もちろんどっちにもニーズはあるだろうし、「久本さんの水着の方が絶対見たい!!」なんていう人ももちろんいるだろうけど、でもやっぱり「広さ」があるのは完全に石原さとみさんの水着姿である。こうやって「この記事のターゲット層はどれくらいの人数がいるだろうか」と考える事がすなわち「広さ」の概念であります。

 そして次に「深さ」について考えたい。これは「広さ」に比べるとなかなか簡単に説明が出来ないのだけど、「その人にとって、どの話題がどれくらい刺さるか」という概念である。

 例えば、広さの概念の時にラーメン屋を例に挙げたのだけど、もし仮に鳥取県民全員が崇拝していて、満場一致で「ここ!」と言うくらいに絶大なる支持を集めているラーメン屋さんがあったとしたら、その記事は鳥取県民の中では死ぬほどシェアされて、東京のラーメン屋の情報よりむしろ読まれるかもしれない。

 実例として、僕はちょくちょく「テキストサイト」と呼ばれる文化の記事をインターネットで書く事がある。テキストサイトというのは、いわゆる「日記サイト」のようなもので、今のように画像や動画をばんばんアップする文化がない頃のインターネット文化で、「おもしろ日記」をみんながこぞって書いていたような時代があったのである。僕もその文化圏に属していたのでテキストサイトには詳しいし、知り合いも多い。ただしその「テキストサイトの話」は前述の「広さ」の概念で言えば全然広くないのである。

 当時のネットユーザーのメイン層と言えば、かなり時間も経っているので今では「30代以上、男性でオタク気質」みたいな人達である。むしろそれ以外の人達にとってはちんぷんかんぷんな話かもしれない。でもそんなテキストサイトの記事でも、書けばやっぱり数字を取るのだ。何故ならその「テキストサイトの話」には深さがあるからだ。思い入れ、と言ってもいい。青春まるごとつぎ込む、くらいの勢いで日記を書いていた人達がいるし、そういう人達にとっての「懐かしい話」だからこそ、そういう人達はみんな共感してシェアしてくれるのである。広さはそれほど広くないけど、深さがじゅうぶん取れるので数字が出る、という寸法である。

 この「深さ」の概念については「思い入れのあるもの」と言い換えてもいいかもしれない。そういうテキストサイトのような「懐かしい話」も意外と数字が取れるし、他にも「子育てネタ」なんかもいいと思う。現在進行形で子育てをしている人達はそういった記事を積極的にシェアしてくれるからだ。ターゲットが多少狭くても(もちろん狭すぎてもダメだけど)、ターゲット層にとって思い入れの深いジャンルであればかなり数字が取れるはずだ。

 そして最後に「距離感」の話である。これは「ターゲットにとって、どれくらい身近な話なのか」という概念だ。荒っぽい例えかたをすると、例えばレバノンでテロが発生しても日本ではそれほどニュースにならない。でもフランスでテロが発生すると大きなニュースになる。これは単純に日本人にとってレバノンよりフランスの方が心理的な距離感が近いからだ。企業の炎上でも似たような傾向が見られる事がわかる。

 過去の炎上事例を言うと雪印の食中毒問題があって、日本中から叩かれて会社が潰れるかどうか、くらいの瀬戸際まで行ったけど、電通が、トヨタから広告費を不正に請求していた、みたいな事件については世間の関心がそれほど高くない。これは単純に「牛乳」の話題の方が多くの人にとって身近なものだからだ。逆に言えば心理的な距離感が遠いものに対してはそれほど関心を示さない。この辺はなんとなく理解して貰えるんじゃないかと思う。

 そんなわけでこの「広さ」「深さ」そして「距離感」という三つの軸で物事を測り、「どれくらいウケそうか」というのを考えるのである。これは恐らく、僕みたいなライター業以外でも使える概念じゃないかと思っていて、例えばレストランをオープンする、となった時に、「好きな人が多くて、思い入れもあって、かつ身近にあるもの」という事を考えるとウケそうなものがわかってくるんじゃないか。カレー屋さんやラーメン屋さんがたくさんあるのはそういう理屈である。もちろんカレーやラーメンなんかは死ぬほどライバルがいるのでそう簡単には儲からないけど、同じように広さと深さと距離感が取れる食べ物ってまだまだあるような気がする。ちなみにこの本を出すにあたっても「広さ×深さ×距離感」というものについて企画を決めている。広さに関しては「大多数のサラリーマン向け」というボリュームゾーンを狙っているし、「深さ」については「お金の話」というみんなの関心が強そうなもの、そして「距離感」については僕に知名度がないのでなかなか難しいところもあって諦めたのだけど、でも基本的にはそんな感じで意思決定する事である程度の層には響く事が出来るんじゃないかと思う。

 

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ヨッピー『明日クビになっても大丈夫!』

「現役の千葉市長とゲーム対決をする」「AV女優と童貞を合コンさせる」「24時間テレビの100kmマラソンが本当に大変なのか試す」「大阪でひたすらたこ焼きを食べる」などの面白記事をネットで発信し続けているWEBライター・ヨッピー。

好き放題しながら楽しく稼いでいる彼による、
会社に寄りかからずに生き延びる方法。