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生き抜くための恋愛相談

2017.11.25 公開 ツイート

過去いた彼氏は3人。すべて1ヶ月半しか続かなかった35歳の私に長く続く恋愛はできるのでしょうか? 尾崎ムギ子

ライター・尾崎ムギ子、35歳。「彼氏いない歴5年」――そう言うと、あたかもその前に長く付き合った彼氏がいるように聞こえるが、その前は1ヶ月半。その前も1ヶ月半。その前も1ヶ月半。“人生で彼氏いたことある歴”4ヶ月半……。以前、恋愛相談のカリスマにアドバイスを求めたところ、「あなたは恋愛できないよ」とさじを投げられ、自分でも一生、恋愛できない気がしている。

最後の頼みの綱として、『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)の著者である桃山商事の清田代表と森田専務に、ガチ相談することにした。本書を読んで、「この2人なら、恋愛不適合者の心理を解明してくれるのでは?」と思ったのだ。桃山商事さん、どうすれば、わたしは恋愛できますか――。

一方的に付き合って、一方的に振ってしまう

相談する尾崎ムギ子さん

清田 我々は普段、相談者さんと2時間お会いして、いろいろ質問などしながら一緒に考えていく感じで話を進めています。本を読んでもらったからわかると思うけど、ズバッと回答することはできないので、まずは尾崎さんの状況を共有させてください。

ムギ子 よろしくお願いします。とにかく恋愛ができないことに悩んでいます。これまで3人の方とお付き合いしてきましたが、全員1ヶ月半しかもちませんでした。

清田 なるほど、長く続かないことが問題になっているのかな。ちなみに、過去の3人はどういう人たちだったの?

ムギ子 1人目は、大学4年のとき、友だちの紹介で知り合ったサラリーマン。2人目は、27歳のとき、合コンで知り合った弁護士。3人目は、29歳のとき、会社の元先輩です。

清田 付き合うことになったきっかけや、別れることになった原因などはどんな感じだったんですか?

ムギ子 わたしは基本的に白黒ハッキリさせたい性格で、男性といい感じになったら「付き合う気はあるんですか?」「ないならムダな時間を過ごしたくないのでハッキリ言ってください」的なことを言うんですよ。そうすると、「じゃあ付き合ってください」という感じになって付き合い始めるという……3人ともそんな感じでした。

森田 自分から決断を迫れるのはすごい。

ムギ子 始まるときはいいかもしれませんが……問題は別れるときで、いろいろあって「もういいや」ってなって、わたしから一方的に振ってしまうんです。

清田 えっ、尾崎さんが振る側なんだ! ごめん、今までの流れから振られた側だと勝手に思い込んでた……。

ムギ子 そうなんです。例えば1人目の彼氏は優しくて大人しい人だったんですが、社会人で忙しく、付き合ったはいいもののあまり会えなかったんです。わたしはものすごい好きになっていたんですが、それだけに会えない状態が苦しすぎて、「好きすぎてツラい」「もう耐えられない」となって別れを告げました。2人目の弁護士は、何かと結婚願望を匂わせてくる人で、わたしのことをいろいろ褒めてくれたんですよ。最初の頃は急速に好きになったんですが、愛情表現もやたらとすごくて、あるとき人が密集する大衆酒場で「愛してる」を連呼され……引いたというか、怖くなったというか、とにかくイヤになって別れを告げました。3人目に付き合った会社の先輩は、彼氏になってすぐくらいのときに突然「会社を辞めて世界中を旅するつもり」という夢物語を語り始めまして……わたしは当時30歳で、そんな人を待っている余裕はないなって思い、自分から別れを告げました。

清田 なるほど。別れるときはすんなり納得してもらえるものなの?

ムギ子 弁護士の人には、「お前の人生でこの先、俺よりスペックの高い男と付き合えると思ってんの?」とキレられました。でもその3日後に「彼女できた」と連絡があり、わけがわからなかったです(笑)。

清田 うわっ、モラハラのニオイ……それは無事に別れられてよかったよ。最後の彼氏と別れてからは、今に至るまで付き合いたいと思う人はいなかった?

ムギ子 結構いました。わたしは惚れっぽくて、恋をすると仕事も手に付かなくなっちゃうくらい恋愛体質でして。わりと自分から行くんですが、最近は「すぐ好きになる→告白する→フラれる」というパターンの繰り返しで……。

清田 なるほど。「熱しやすく冷めやすい」タイプの気もするけど、それとも微妙に違ってる感じもあるね。

「わたしに性欲を抱く人なんているんですね!」

森田 具体的に、どういう人のことを好きになるんでしょうか? 外見でも性格でも、何か共通する特徴はあったりする?

ムギ子 そうですね……面白い人が好きですかね。あとは、フィーリングが合うというのも重要かもしれません。『生き抜くための恋愛相談』には〈言いづらさを伴う自己開示は精神的に裸になるようなもの〉〈こういった自己開示の相互作用が色気とムードの正体〉という記述がありましたが、わたしにとってもそれを重要視しています。

森田 互いに自己開示できた感じが出ると、気持ちが一気に盛り上がったりしますよね(笑)。

ムギ子 そうなんです! 外見で一目惚れということはなく、むしろ好きになる人は見た目もタイプもバラバラなんですが、2時間くらい一緒にお酒を飲んで、「わかり合えた!」と感じた瞬間、すぐ好きになっちゃいます。

清田 彼氏ができないことに悩む人は、「出会いがない」「好きな人ができない」「振られてしまう」が要因になっているケースが多いけど、ムギ子さんの場合、そのどれにも当てはまらない。何が原因なんだろう。例えば「関係を築いていくのが苦手」とか?

ムギ子 それはあると思います。この間、イケメンの男性と二人で飲みに行く機会があったんですけど、「こんなにイケてる男性と、こんなにイケてないわたしが一緒に時間を過ごしていていいのだろうか……」と申し訳ない気持ちになってしまい、恋愛に発展するどころか逃げ出してしまいました。

清田 「こんなにイケてないわたし」って!

ムギ子 自己評価が低すぎですよね。人からよく言われるし、自分でもそう思います。以前ハプニングバーに潜入取材したとき、男性に声を掛けられたんですが、感激して「わたしに性欲を抱く人なんているんですね!」と言ったら逃げられました(笑)。

清田 すごい話だね……なんでそんなに自己評価が低いの?

ムギ子 わたしは中高6年間女子校育ちで、大学に入って初めて男性と接するようになったんですけど、そこで「お前って色気ねーな」と言われたり、サークルではいじられキャラだったりで、まったく“女扱い”されなかったことが原因ではないかと考えています。当時のイメージが、いまだに残っているんだと思います。

森田 なるほど。自分で原因をハッキリ言語化しているところは、さすがライターさんという感じがする。さっき面白い人が好きと言ってたけど、それは具体的にどういう感じなんですか? 面白いといっても、笑いのセンスが高いとか、話題が豊富とか、人として興味深いとか、いろいろ種類があると思うんですが。

ムギ子 何と言うか、「funny(ファニー)」な感じの人が好きですね。楽しい雰囲気を作れる人で、その人といると笑いが絶えない、みたいな。そういう人がふと女扱いしてくれたりすると、「もう好き!」ってなってしまいます。

清田 早いな(笑)。そのパターンだと、例えばワンナイトみたいな感じにはならない?

ムギ子 それがまったくならないんです。好きになった人に誘われたらわからないですけど、なにしろ誘われないので……。そういうのもあって、わたしは女扱いされない女なんだなあと思います。

条件反射的に好きになっている?

分析する清田代表

森田 ちょっと話は変わるけど、同性でも異性でも、仲良しの友だちにはどういう人が多いですか? やはりfunnyな人なの?

ムギ子 そこはちょっと違うかもです。何というか、悪口のツボが合う人ですね(笑)。共通のことでムカつける人って感じでしょうか。

清田 わかる、そこ大事だよね(笑)。仲良くなる人と好きになる人はタイプが異なっていて、とにかくfunnyな人と出会ってお酒を飲んで、盛り上がって自己開示し合えた感じが生まれるすぐ好きになる。でも、告白して振られるか、付き合っても短期間でイヤになって自分から別れてしまう──というのがムギ子さんの現在地というわけだね。

ムギ子 そうですね。それで、この先もちゃんと恋愛できる気がしないんです。1ヶ月半しか続いたことがないから、また次付き合っても、1ヶ月半で終わっちゃうんじゃないかという恐怖心もあります。

森田 ムギ子さんの中には「funnyな人が好き」という認識があるけど、もしかしたら逆という可能性もある。というのも、好きになる人はタイプがバラバラで、共通してるのは「ムギ子さんがfunnyな気持ちになっている」という点だけなんですよ。そう考えると、funnyな気持ちになることを、ムギ子さんは「好き」という言葉で認識しているのかもしれない。そういう気持ちにさせてくれる人を条件反射的に好きになってしまう、というか。

ムギ子 なるほど……言われてみれば確かにそんな気もします。「この人、面白い! ああ、この感じ! 好き!」みたいな(笑)。

森田 仲の良い友人には「悪口のツボが合う」人が多いということでしたが、おそらくその人たちはムギ子さんにとって「一緒にいたい人」だと思うんですよね。その感じと、funnyで好きになるということとの距離が大きい点が気になりました。

清田 自分の感情体験のほうにひな形があって、そこに「好き」というラベルが貼られている……。「好みのタイプ」と呼ばれるものの正体って、実はこういう構造のような気もする。ムギ子さんの場合は「funnyな気持ち」がひな形だったけど、人によってそこにはいろんな感情が代入されるはずで。

森田 それが条件反射的な恋愛感情を引き起こすってのは、わりとよくあることだと思う。ムギ子さんが重んじている「funny」や「フィーリングが合う」というのは、どちらかというと内面的な要素だよね。これがことをわかりづらくしているんだけど、それは多分、イケメン好きの女性がイケメンを見て好きになるのと構造的にはすごく似てると思うんですよね。言わば“内面的な一目惚れ”というか。内面的だからこそ、2時間という短い時間であっても、気持ちが盛り上がれば相手との心理的距離がすごく縮まったような気がするのではないだろうか。

ムギ子 内面的な一目惚れ……本当にその通りだと思います。

清田 だとすると、極論すれば「今のままでいい」とも言えるかもしれない。というのも、感情の高まりって慣れなどによって徐々に目減りいくものだから、もしそれをずっと味わっていたいと思うなら、恋人や結婚という関係はフィットしていないかもしれない。いろんな相手と出会い、常に新鮮なfunnyを味わい続けるというのも一つの手かもしれない。

ムギ子 いやいや! 彼氏ほしいし、できれば結婚もしたいです!

森田 よく、「恋愛相手と結婚相手は別物」みたいなことが言われますが、今日の話に引き寄せて表現するなら、「瞬間的な気持ちの高まりのある相手が、長い時間一緒にいたい相手とは限らない」ということだと思うんですよ。ただ、「別物」とかって二元論的に分ける必要は全然なくて、両立する場合だってもちろんあるはずです。ムギ子さんの場合は「瞬間的な気持ちの高まり」が激しいうえに、それを引き起こすのが内面的な要素だから、「一緒にいたいかどうか」とごっちゃになってしまっているのかもしれない。少し整理するだけで変わってくるのではないかと思います。

ムギ子の恋愛観は「飲酒型」

清田 って、こんな風に冷静に分析してるけど、このお兄さんもかつては完全にムギ子さんと同じタイプだったからね(笑)。

森田 そうなんだよ。スーパー惚れっぽかったんですよ。だから、ムギ子さんの話がまったく他人事に思えない(笑)。自分の場合は、好きになる人の外見も内面もタイプがバラバラだったんだけど、その場で感情が高まるかどうかが何よりも大事で、話が合うとか、長い時間一緒にいたいかとかは二の次だったんですよ。それで実際に付き合ってみると、話が合わないからお互いあまり楽しくないし、行きたい場所や時間の過ごし方も合わなかったりで、すぐに振られたり振ったりということを繰り返していた。それで「こんなことを繰り返していてもしょうがないな」とふと思った瞬間があって、そこから変わったような感覚がある。

清田 この森田の恋愛観を、当時桃山商事では「飲酒型」と呼んでいたのね。これは専務が「酒に酔ったときのようなふわふわした気持ちになること」を好きと認識していたことに由来するんだけど、誰にでもこういう型はあると思う。このあたりの話は1冊目に出した『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)に詳しいので、ご興味ある方はぜひ(宣伝)。ところで、ムギ子さんはプロレスが好きなんですよね? プロレスを観て感情が高まるのと、funnyな気持ちになって恋愛感情が芽生えるのって、構造的には似ていると思うんだけどどうだろうか。

ムギ子 確かに! あと、プロレスラーにインタビューする連載をやっているのですが、毎回、プロレスラーに恋してます。もちろんその場限りで、その後は接点もないですけど。

清田 感情の高まりを「好き」という風に認識しているとするなら、やはりそうなるよね。すげえわかる。さっきの話で言えば、俺の恋愛観は「自立支援型」という名前がつけられていて、「悩める女子の役に立てた!」って感じられた瞬間、条件反射的に相手を好きになっちゃう傾向がかつてはあった。でも、友達としてはうまく行っても、それと恋愛はまったく別物だといくつかの痛い経験を経て気づき、少しずつ変わっていった感じがあります。

ムギ子 それで言うとわたしも完全に飲酒型ですよね。だとすると、一生まともな恋愛ができないような気がしてきました……。

森田 凹まないで! さっきも言いましたが、感情の高まりと関係を築くことは別に矛盾するものではなくて、両立するんですよ。funnyな気持ちになれる人が長い時間一緒にいたい相手であることだって絶対あるはずだから、感情の高まりを捨てろということではまったくない。ただ、感情が高まったときに、いったん引きで見てみるのが大事なような気がします。2時間で高まった気持ちを、一度持ち帰って冷静に振り返ってみるだけでも、全然違ってくると思いますよ。

(後編に続く)

◆桃山商事とは……
清田隆之(代表)と森田雄飛(専務)による恋バナ収集ユニット。2001年結成。恋愛の悩みに耳を傾ける「失恋ホスト」を始め、これまで1000人以上の男女から見聞きした話をコラムやラジオで紹介している。「日経ウーマンオンライン」で連載している恋愛相談が人気を博すほか、『anan』『Numero TOKYO』『FRaU』『毎日小学生新聞』『精神看護』など、幅広いメディアに寄稿。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)、『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)がある。ニコニコ生放送で「桃山商事の恋愛よももやまばなし」を毎月放送中。
Twitter:@momoyama_radio
公式サイト:http://momoyama-shoji.com/
ニコ生:http://ch.nicovideo.jp/momoyama-shoji

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尾崎ムギ子

ライター、編集者。1982年、東京都生まれ。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。 2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスファンに。炎上騒動を乗り越え、 現在、日刊SPA!にて「最強レスラー数珠つなぎ」「小橋建太の青春おすそわけ」を連載中。 関本大介自伝『劣等感』(ワニブックス)の編集を担当。 初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。 Twitter:@ozaki_mugiko

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