サッカーでは、なにが起きるか分からないから面白いとよく言われる。
 たとえば今回のW杯欧州予選では、イタリアとオランダが揃ってスウェーデンに破れてW杯出場が潰えてしまった。
 イタリアとオランダが出ないW杯なんて、松木とゴン中山が喋らないテレ朝の解説みたいなもので、薄味気味で静かなものである。
 南米王者のチリも予選敗退の憂き目にあっている。
 なにが起きるか分からないというのは、今回の欧州遠征でも日本代表にも起きた。
 まさかの、本田香川岡崎といった御三家が揃って招集外。
 2010年南アフリカW杯からの日本のサッカーを引っ張ってきたこの3人をまるっと外すというのは、予想外だった。
 そんななか抜け目なく自己アピールに成功した者はいる。
 圧倒的な実力差を見せつけられたブラジルから、なんとか1得点をもぎ取ったのが、まさかの槙野だった。
 日本がブラジルから得点を奪ったのは2006年W杯で対戦して以来の11年振りだそうだ。
 本当に何が起こるか分からないと、しみじみとさせられる。
 槙野のことならば、ブラジルから点を奪おうものなら満面の笑みで喜びそうなものだが、険しい顔でボールを抱えて「俺たちはまだ死んでいないぞ! 俺はお笑い担当だけじゃないんだぞ」と勇ましく味方を鼓舞していた。
 ベルギー戦後の槙野のインスタをチェックしてみると「チームとしても個人としても収穫がありました」と、ルカクと対峙している雄々しき自分の写真をしっかりとアップしていた。
 さすがは、便器を素手で洗う男である。
 彼を形容する言葉はいくつかある。
 チームのムードメーカー。
 左右ちがう色のスパイクを履く変な奴。(ロッベンの真似)
 ホリプロ所属のお笑い担当。
 ネオ七三分けのジェル頭は、90分崩れず雨にも強いと言い張る男。
 恵比寿で「友達よりも大事な人」剛力彩芽とカラオケ野郎。
 ブラジルから11年振りに得点したCB。
 ここまで書いてきた気が付いたが、我々日本人は槙野智章の神髄を正確に語れる修辞をまだ持っていないのかも知れない。
 もはや嫌いな選手筆頭だったはずなのに、2周くらい回って好きになりそうになっている。
 ブラジルとベルギーという強国との2連戦だから、もっと他に書くことがあるはずなのだが、その大事な2戦でスタメンを張り、見ている者の予想を遥かに超える働きを示した槙野智章でこれだけの文字数を費やしてしまう事が不意に犬の糞を踏んだようで悔しくもあるし、代表としては収穫である。
 しかし、ポカをすれば叩く準備は怠らないでおきたい。

 毎度のことながらブラジルと試合をすると、スピード・パス・トラップ・シュート・動き・身体の使い方・アイデアの閃きなど、ピッチ上におけるほぼすべての面においてため息がこぼれてしまう。
 そして、そんなブラジルと対峙する日本の選手に絶望しか感じないことも毎度のことでもう慣れてしまっている。
 万が一、いい勝負をしていたら、この先ザッケローニ時代と同じ轍を踏んでいたかも知れない。
 ベルギーとの試合も、守備はある程度できることは分かった。
 決定力が相変わらず乏しいことも再確認。
 もうこれから新しいFWが急に現れる可能性はほとんど無いだろうから、攻撃力アップをどうしていくのだろうか。
 海外組が呼ばれるのは来年の3月の親善試合である。
 そのときまでに御三家の3人は調子を上げて再び招集されるのだろうか?
 ベルギー戦後、「次の代表に選ばれるようにがんばります」と長友がコメントをしているのを見て、どんなベテランも呼ばれなくなるかも知れないという危機感を植え付けていたり、槙野や初招集の長澤が各ポジションに台頭させてくるあたりを見てると、ハリルホジッチのオーガナイズは上手くいっているのだろうと思った。

12月1日にはW杯の抽選が待っている。
このままでは本大会のグループリーグ突破は難しいことはよく分かった。
しかし、アントニオ猪木の言葉にもあるではないか。
「出る前に負けること考えるバカいるかよ!!!」
この言葉を唱えながら、本大会までの7ヶ月間、代表と槙野の動向に目を向けていこうと思います。

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