中川右介著『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』(幻冬舎新書)――日本全体が動揺し、今なお真相と意味が問われる三島事件。文壇、演劇・映画界、政界、マスコミ百数十人の当日の記録を丹念に拾い時系列で再構築、日本人の無意識なる変化をあぶり出した新しいノンフィクション。

 

死んだ作家は、かれ自身の全体が生者へのメッセージにかわる。生き残った者たちは、望むと望まぬとにかかわらず、滅びた肉体の遺したメッセージを受けとめねばならぬ。

      ──大江健三郎「死者たち・最終のヴィジョンとわれら生き延びつづける者」より

 

 はじめに

 

 一九七〇年=昭和四十五年は、昭和のオールスターが揃っていた年だ。

 昭和天皇はまだまだ元気だったし、内閣総理大臣は最長在任記録を持つ佐藤栄作、自民党幹事長は田中角栄、防衛庁長官は中曽根康弘、警察庁長官は後藤田正晴だった。最強の布陣ではないか。

 文学界も芸能界も、老壮青それぞれの世代にスターがいた。さらにその下にやがて芽を出す無名の青少年たちもいた。

 そのなかで、最前線にして最高位にある人が、突然、死んだ。

ここから先は会員限定のコンテンツです

幻冬舎plusの会員登録(無料)をすると…すべての会員特典を見る
  • 会員限定の記事が読み放題に
  • 会員限定イベントに参加できる
  • プレゼント抽選に参加できる
  • ストア利用でポイントが貯まる

会員の方はログインして続きをお楽しみください

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

中川右介『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃

昭和45年11月25日、三島由紀夫、自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹、介錯される―。一人の作家がクーデターに失敗し自決したにすぎないあの日、何故あれほど日本全体が動揺し、以後多くの人が事件を饒舌に語り記したか。そして今なお真相と意味が静かに問われている。文壇、演劇・映画界、政界、マスコミの百数十人の事件当日の記録を丹念に拾い、時系列で再構築し、日本人の無意識なる変化をあぶり出した新しいノンフィクション。