ハロウィンも終わり、空気が澄んできました。
寒い日が増えてきたのにあわせて、見上げると、夜空がきれいですね!
せっかくのこの季節、島根県津和野にある天体観測所まで行ったという香川さん。
これを読んだら、行ってみたくなることウケアイ!!

■  ■  ■

エッセイ
爆発

 さんむぅ~~~!!

 秋はどこへやら、すっかり冬らしく北風が鳴きはじめた。

 例年通り、巷では「ハロウィンハロウィン」言っていたようだ。しかし僕は仮装の“か”の字もないまま11月になってしまった。そればかりか、ハロウィン当日に血まみれの女子高生とコンビニですれ違い、思わず普通にビクッとしてしまった。まったくついて行けていない。エッセイ用に渾身のハロウィンネタをストックしていたのにも関わらず、レコーディングでバタバタしていたら、締切をすっかり逃してしまった。毎週楽しみにしてくれている方、関係者の皆さんに詫び申し上げたいと思う。ハロウィンネタは来年に持ち越しだ。1年間温めさせて頂くこととしよう。

 どうにもバタバタと忙しい。この商売は気楽ではあるが、なんだかんだ、そう簡単には怠けさせてはもらえない。先日、ようやくまとまった休みをとれたので、1年ぶりくらいに田舎の祖父母の家に顔を見せに行ってみることにした。島根県は津和野町、田んぼと山と川しかないド田舎である。たまにはガチガチに凝り固まった羽を伸ばしにいこうじゃないか。

 * * * * * *

 津和野の城下町は、昔からそんなに変わり映えしない。僕が幼い頃から同じような建物がそのまんま立ち並んでいる。『ポォーーー!!』と、けたたましい音を鳴らし、煙を吐きながらSL(蒸気機関列車)まで走っている。SLはもともと古き良き時代を彷彿させるための“復刻列車”だったはずだが、金曜ロードショーで『ハリーポッター』をやったせいだろうか、ユニバーサルスタジオにでも来たかのような“ハイカラ感”が出ている。素晴らしい。子ども達がぴょんぴょん跳ねながら喜ぶ様子を見ていると、なんだか誇らしい気持ちになった。「9と3/4番線」どころか、上りと下り線しかないが、是非ともお立ち寄りいただきたい。

 ちなみに、ワタクシ香川裕光がプロデュースするとしたら、こんな「津和野町ツアー」を組みます。

 ★香川といく!島根、津和野ぶらり旅★

(1) 駅でSLを観る。

(2) 商店街のそば屋で十割そばをすする。

(3) 近くの米屋に入って「鯉見せてくださーい!」とお願いして、裏手の池の鯉に餌やり。

(4) 竹風軒の源氏巻を買って囓りながら散歩。(ここの焼きたての源氏巻がうまい!)

(5) 稲荷神社にお参り。(まるで京都の伏見稲荷!)

(6) リフトに乗って津和野城城跡、本丸へ。

(7) 道の駅ゆららで温泉

 これくらい廻れば、しっかり津和野を堪能できる。素晴らしい所なので是非とも観光してみていただきたい。

 そして、もうひとつ、僕の大好きな場所がある。それは津和野の隣町“日原”という町にある「天体観測所」である。山の山頂付近に、とても立派な施設が建っており、1億円相当の天体観測ドームと秘密兵器みたいな大きな天体望遠鏡があるのだ。

 今回、僕が祖父母の元へ帰省したのは他でもない、何も考えずぼんやり星が見たかったのである。

 時刻は22時。天体観測には申し分ない、渇いて澄んだ空だった。

 険しい山道を越えてようやく観測所にたどり着いたら、駐車場に車がほぼなかった。「あれ?やってるのかな?」と不安になったが、週末だし営業はしているはずだ。

 しかし、車から降りてある異変に気づいた。“めちゃくちゃ明るい”のである。それもそのはず、夜空には眩しいくらいに、太陽光を反射したまん丸い月が浮かんでいた。秋の名月、大きな大きな、満月である。

 睨み付けるように光々と夜空を照らしてくれるもんだから、星なんか全然見えないじゃないか……。本来なら、見たことないくらいような満点の星空が見られるはずだったのに……悔しい。

 悔しいが、せっかく満月なのだ。であれば、急遽方向転換だ。こんな日こそ、“月面観察”ができる。どうせならと、最高の満月を拝ませてもらうことにした。

 二階建てになっているドームの中に入り、らせん階段を上っていくと、暗いドームの中には大きな天体望遠鏡が設置されていた。

「こちらにどうぞー。今、ちょうど月をサーチしているところです」

 小さなドームの中でしゃべっているせいか、係員の方の反響した声が、自分のすぐ耳元でしたようでびっくりした。

 声の主がどこにいるのかよくわからない。暗闇で目を懲らすと、月明かりに照らされて、青白い顔の“お兄さん”が望遠鏡にしがみつくように立っている。

『ウィーーーーーーーーーーン』と低い音を立てながら、ドームの天井の“のぞき穴”と望遠鏡が、ゆっくりと月を追尾していた。オートで設定してくれているみたいだ。

 お兄さんは、暗がりで良く見えないが、僕とそう変わらない歳だろうか。すらっとしていて、今風で細めな方だった。

「今、月に照準を合わせました。今日は星はあまり出てませんが、その分、月は綺麗ですよ」

 そっと望遠鏡を覗くと、眩しくて直視できないくらいの満月がはっきりと映っていた。大きすぎて、レンズに入りきらない。すごく鮮明で、クレーターの1つ1つを数えられるほどだった。

「綺麗ですよね。星は毎日みられますが、満月は月に1度しか観ることはできません。ラッキーですよ」

 お兄さんは優しい声で囁いた。

 その後お兄さんは、満月の夜でも観ることのできる“明るい星”や“星雲”を、いくつかサーチして見せてくれた。

 10年前に来たときも、こうして色んな星を見ながら宇宙の話を聞いた。

 どんなに時が流れようと、人間の一生くらいでは星の光は微塵も変わらない。この夜見た光も、あの頃に見たのと同じ星の光だった。きっとこれから先も、僕がこの世にいなくなったあとも、同じ光が地球に届き続けるのだろう。

 果てしない宇宙に、当時は少し怖い気持ちがしていたが、今夜はなんだか優しい気分だった。

「ちなみに、目の前にある2つの星が、『ベガ』と『アルタイル』俗にいう“織り姫と彦星”です」

 お兄さんは淡々と説明を続ける。

「この二つの星は実は、そんなに大きな星ではないので、後に星雲になるような、派手な爆発はしない星なんです。静かに、地味に死んでいく星ですよ」

 へぇ~。お兄さん、博学だな。ってか星って最終的には爆発するのか……。

 月明かりにもだんだん目が慣れてきた。さっきまであんまり良く見えてなかったが、このお兄さん、スラリとしているばかりか、目鼻立ちも良く、ずいぶんイケメンだ。僕はずっと、このイケメンのお兄さんと二人きりで星を眺めていたのだ。なんだか変な気分である。

「織り姫と彦星って愛し合ってるいわゆる“リア充”じゃないですか?でも、爆発しないんです……。クックック……」

 お兄さんは何故か必死に笑いをこらえている。

 ネット用語で、リアル(現実)が充実している人へのひがみで、『リア充爆発しろ!』という言葉がある。きっとそのことを言っているのだろう。

「リア充なのに爆発しない……。ぶふっ!!あはははは!!」

 お兄さんはついに大笑いしはじめた。

 何これ、怖い。

 お兄さんがひぃーひぃー腹抱えて笑っている姿が月明かりに浮かびあがった。非常に不気味だ。ハロウィンはもう終わったはずである。そろそろ帰ろう。

 しかしとても綺麗な満月であった。流れ星が見えたら、お兄さんのリアルを充実させてあげてくれますようにと願おうと思ったが、月が明るすぎてムリだった。星の数ほどの女性達。誰かよろしくお願い申し上げる。

 

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