三日目はフィンランドから船に乗って、エストニアの首都タリンへの旅にチャレンジする。

 タリンの旧市街地は世界遺産にも登録されており、美しい中世の街並が残っているとか。船で片道2時間なので、日帰り旅行してみることに。

 ヘルシンキ駅前から9番のトラムに乗り、港がある終点の西ターミナル駅まで。昨日のうちに、西ターミナル駅まで行って乗船チケットの予約をしておいたので、心にもゆとりがある。

 ゲートを通りエスカレーターをのぼっていく。広々とした待ち合い場所があった。オープンカフェもある。予約したチケットを受け取る際にはパスポートを提示したが、乗船するときには往路ともチェックはなかった。

 午前10時30分出航。3000人近い人を乗せる大型客船である。席は自由なので、窓側からどんどんうまっていく。セルフの飲食店のカウンターがいくつもあり、席を確保した人々がビールや食べ物を求め、すぐに大行列になっていた。

 とりあえず、一旦、適当な席に座って休憩。日本語のカタログをもらえたので、目を通す。

 船名はメガスター号。

 土産物売り場、子供用のプレイルーム、ビジネスクラス専用のラウンジ。ブッフェスタイルのレストランもあるようだ。

 船内を探索しようと、土産物売り場まで行ってみたものの、歩くと船の揺れでふらふらする。席につき、生演奏のライブなど見た。

 若い女性ヴォーカルがラブソングを歌っていた。

 どういう経緯で、彼女はこの船で歌うことになったのだろう? 幼い頃からずっと夢見てきたのかもしれない。あるいは、まだ夢の途中なのかもしれない。わたしは彼女の歌を聞きながら、今とは違う自分の人生を想像してみた。

 どこか遠い外国の小さな街で暮らしている。冬には深い雪が降るようなところだ。

 町にひとつしかないキオスクで、わたしは販売の仕事をしている。店長兼、店員。わたしのお店だ。

 夕方になると店の鍵をしめ、海の見える道を歩き、口笛をふきながら家まで帰る。

 週末は家族でピクニックに出かけ、夏は、海辺へ。冬になると暖炉の前で友人たちとボードゲームを楽しみ、猫を飼い、趣味は、そうだなぁ、切手収集。おばあさんから譲り受けた古いピアノを大切に弾きつづけている。そんな、もうひとつのわたしの人生。

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