驚くべきことに、この「40歳からのハローギター」の連載が始まった2016年5月14日から、単行本が発売された2017年10月25日までの間、私の部屋にはギターは1本増えただけなのだ。1本増えれば十分だと、遠くで声が聞こえてくるが、私にとって、それは本当に快挙なのだ。楽器店に行ったり、音楽雑誌を見れば誘惑は数知れず、油断すると「この出会いは運命だと思うの」と囁くギターの声が聞こえるのだ。

 連載中は、あまり具体的にギターの型番なんかを書くと生々しくなるし、趣味性が強く出過ぎると思い、単行本では長く読んでもらいたいので、時事ネタは抑えたので、「このギターがいいんですよ」とか、「このギターが今気になってるんですよ」とか、「初めて買う一本にいいなあ、これ」とか、そういうのは具体的には書かないできた。もちろん、私のオススメなんて、ただの私の好みに過ぎないのだけど、これでもモノ系の記事を気が遠くなるくらい書いてきたライターなので、モノを見る目だけはそこそこあるような気がしている。ギターなんてモノの良し悪しよりも本人との相性の方が重要だったりするので、私のお勧めは参考程度にしかならないのだけど、楽器店で試し弾きするときの目安くらいにはなるのではないかと思う。

 まずオススメは、エピフォンの「SG Special VE」。何といっても安い。13500円+税。15000円でお釣りが来るのだ。そして、SGはネックが薄くてテンションが低くて押さえやすい。弾きやすさという点ではストラトキャスターと双璧を成すギターなのだ。しかも、ちょっとフレットが狭めで、指が届きやすく、高音部も押さえやすいから、かなり楽に弾ける。何よりコンパクトで軽い。とりあえずの入門機としては、価格とのバランスもいいし、デザインもカッコいいし、意味もなくビンテージっぽい仕上げになっているから大人っぽいと言えば言える。SGのデザイン(たかしま君言うところの「鬼っぽい」形)が好きなら、買ってみても良いと思う。挫折しにくいギターだから。

 続いて、Squier by Fenderの「Affinity Series Telecaster」。とりあえず、私が試奏した範囲の安いテレキャスターでは、これが一番スムーズに弾けた。価格もメーカー希望価格32000円+税。実売で税込み3万円程度。テレキャスターは、やっぱりジャキジャキと硬い音で弾きたいのだけど、その感じがちゃんとあると思った。ネックも細目で、適当に押さえても結構ちゃんと音が出るから初心者向きのような気もした。色も色々揃ってて、クリッシー・ハインドみたいに白のテレキャスとか、渋くバタースコッチ・ブロンドとか、色によってがらっとムードが変わるのもテレキャスターの特徴だ。この連載の「ギターを改造する」編でもちょこっと書いたけど、テレキャスターの2つのピックアップを直列に繋いで、ちょっとパワーのある音が出るようにしよう改造は、その「ちょっとだけ迫力が出る」感じが気持ち良いので、こういう安いテレキャスターで試すのも良いかも。

 個人的に欲しいのは、Fender USAの「American Professional Jaguar」。オリーブグリーンがいいなあ。こういうの欲しがると、周りの人たちに、「お前はまだキワモノを買う気か」と怒られるけど、キワモノって言っても19万くらいするのだ。フェンダー純正のジャガーだし。スイッチがいっぱい付いてるギターの中で一番まともだと思うんだよ、ジャガーって。指が届きやすいミディアムスケールで22フレットと、普通のフェンダーより1フレット多いのも好き。最初から、二つのピックアップを直列にするスイッチも付いてるし、トレモロアームも付いていて、とにかく楽しそうなギターなのだ。80年代ニューウェーブのギタリストがよく使ってたというのもポイント高い。こういうのが好きなのは、一生治らない私の業のようなもの。立川談志風に言えば「音楽は業の肯定」なのだ。

 アコースティックギターでは、ずーっと欲しいと思ってるのがテイラーの「GS mini」のマホガニーモデルにマイク付いてる奴。実売8万くらい。何度も、日和って、マーチンの「LXME」(6万円くらい)とか、ヤマハの「LS6 ARE」(6万円くらい)を買ってしまおうかと思いつつ、音が一番気に入っているので、結局、どれも買うに至らず。実は、「40歳からのハローギター」単行本発売記念、トーク&サイン会というのが芳林堂高田馬場店で行われる際に、アコースティックギターを弾くのだけど、私が現在持っているまともなアコースティックギターは、マーチンの「バックパッカー」という、細長いトラベルギターのみ。なので、イベント用に1本、新しいアコースティックギターを買ってしまおうかと思うのだけど、この3本のどれが良いのか悩んでいるのだった。コンパクトで抱えやすい「LXME」も魅力だし、新しい木をあっという間に300年前の木の状態にしてしまうヤマハの「ARE技術」を使ったという1点で「LS6 ARE」も欲しくてたまらない。結局、3本も欲しいギターがあるから結局1本も買わないという、蛇、蛙、蛞蝓の三すくみ状態になっているのだ。三すくみ節約術と名付けよう。

 他にも、ヤマハが正規代理店となって、11月に日本でも発売が決まった、ハンドメイドのオリジナルエフェクターメーカー「アースクエイクデバイセス」のリバーブ系のエフェクターも欲しいし、Cheezyのリッケンバッカー型ウクレレだって欲しい。が売れたら印税で買えるかな、とも思うが、そこまで売れる気もしない。面白いから多くの人に読んで欲しいとは思うけど、本当に面白く仕上がったからWebで読んでくださった方にも買ってもらいたいけど、1200円+税は安いから、電子書籍版はさらに安いから、うっかり間違って2、3冊買ったりしてもらいたいけど、無理は言わない。でも、読書の秋に、見開き単位で気軽に読めるコミック&エッセイは似合うと思うんだ。ギターが弾けてもモテないけど、面白い本を知ってるとモテるぜ、多分。きっと。

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この連載が本になりました!

絵・たかしまてつを、文・納富廉邦『40歳からのハローギター』
→試し読み・電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)

実際に初心者からギターを学び始めた著者(たかしまてつを)が、ギターの師匠(納富廉邦)に学び、次第にギターの魅力に取り憑かれていく様を、そしてギターを弾く楽しみを体得していく軌跡を描くコミック&エッセイ。
「楽器屋さんでどう振る舞って良いのか分からない」「どんなギターを買えばいいの」など、ギター初心者が抱く様々な疑問を網羅した人生を楽しくする一冊です。


 

イベント開催決定!

11月9日(木)19時より、芳林堂高田馬場店(東京)にて、「トークショー&サイン会」を開催することになりました。

たかしま氏が「40歳を過ぎてギターを始めた動機」や「ギターを買う前と買った後で変わったこと」を語れば、納富氏が「簡単なギターの選び方」、「意外に簡単に弾ける曲が多い事実」、「1曲弾けるとどんどん弾ける曲が増える」ことなどを熱く語ります。

そして今回は超初心者だけでなくギターに触ったことのない人も楽しめる、参加者の方々の中からギターに触れてみたい方を募っての参加型ワークショップを開催予定。

新しい趣味をお考えの皆さま、是非ともご参加ください。

→イベントの詳細はこちら(芳林堂書店さんのサイトへ)

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