57歳となる今も、一世を風靡したピチカート・ファイヴ時代と変わらぬおしゃれさ、輝きに満ちている、シンガーの野宮真貴さん。「今が最高の私」でいるために続けていることは、実は、「まったく特別じゃないこと」なのだそう。
そんなおしゃれカリスマがたどりついた「見た目」の方程式を『おしゃれはほどほどでいい~「最高の私」は「最少の努力」で作る~』として一冊の本にまとめました。野宮さんのおしゃれのコツとは? 一部を抜粋してお届けします。

料理が一汁一菜でいいならおしゃれだって同じ。

 正直に申し上げますと、私は料理が得意ではありません。

 食べる方はかなりのレベル(つまり食いしん坊)と自負していますが、作るとなるとどうも怪しい。息子に言わせると私の得意料理はカルピスだそうです(水と原液の配合だけは上手いので認める、ということ。失礼しちゃうわ!)。

運動神経だけでなく、おしゃれ神経もあれば、料理神経もあるのでしょう。私は、料理神経が発達していないようです。

 息子のお弁当作りも6年間続けましたが、ほとんど3パターンのおかずのローテーション。毎朝土鍋で炊く銀シャリ(つまり水と米を配合して炊くだけ)をたったひとつのアピールポイントとしていました。それでも息子は、料理下手な母を持ってもグレることなく、特に病気もせずに健やかに育ってくれました。

 おしゃれに関しては、イメージを膨らませてさまざまなコーディネートを思いつきますが、料理の献立となるとさっぱり想像力が働かないのです。その結果、同じような茶色の甘辛いおかずばかりが並んでしまったり、お刺身とカレーライスといった謎の組み合わせが登場したり、と家族を驚かせてきました。

 苦手、興味がない、できることならしたくない家事──それは料理。一人の女性として、妻として、母として、料理下手がいつしかコンプレックスになっていました。

 実家がいろいろなおかずをつまみに晩酌する家だったので、品数へのプレッシャーがありました。いつもたくさん作らねばならないと思っていました。

 私の周りには、料理上手の女友達がたくさんいます。手料理が得意な女性はそれだけで美人です。胃袋をつかむ、という表現もあるように、男性にもモテます。〝食〟と〝おしゃれ〟を比較すれば、生きていくのに不可欠な〝食〟の方に軍配が上がります。

 パーティ好きな私ですが、唯一苦手なのがポットラックパーティ(手作り料理の持ち寄りパーティ)です。私の手料理を食べさせて余計な気を使わせては申し訳ないので、決して自宅用には買わない高級マンゴーとシャンパンを事も無げに持参することに決めています。

 そんな私が最近、料理研究家の土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)という本に出会い、目から鱗(うろこ)、雷に打たれたような衝撃を受けました(大袈裟ではなく本当に)。

 土井先生が、家庭料理の研究の末に行きついた〝一汁一菜〟とは、基本の形さえ持っていれば、食事作りに悩むことはない、というもの。「家庭料理は、ご飯と一汁一菜でいい」と言ってくれたのです。

 冷蔵庫にある食材を見繕って具だくさん味噌汁を作れば、それが立派なおかずになる。しかも、出汁をとらなくてよい、具材も有り合わせでよい、これまでの味噌汁のルールすらもなしです。味噌が濃くても薄くてもそれなりの味わいがあり、どちらも美味しいのだと先生は書いています。

 なんて楽ちん、なんて素敵! そして、お椀の中の世界だけを自由な発想で考えればよいとわかった途端に、私のコンプレックスは消え、おしゃれと同じような想像力が俄然湧いてきました!

 冷蔵庫の中の、余ったベーコン、玉ねぎ、じゃがいも、コーン缶、牛乳、仕上げにバターも加えて、題してオリジナル「どさんこスペシャル(私の故郷)」の完成です。チャレンジする楽しさと、意外な美味しさの発見があり、栄養豊富で、手間暇もかからない、夢のような「一汁一菜」。そこに炊きたての白いご飯、お漬物。気分に合わせて、お刺身や焼き魚をプラスしてもよい。外食の機会が多い我が家には、日常のご飯はこれで十分です。しかも発酵食品のお味噌と野菜も摂れてとてもヘルシー。

 これなら私にだって上手に、時間を取られずに、悩まずに、不ま味ずいものを作ってしまったと落ち込むこともなく、毎日料理ができる! この提案によって私は料理コンプレックスから解放されたのでした。

 そして、「どさんこスペシャル」を飲みながら、ふと、ジェーン・スーさんのことを思い出しました(スーさんは江戸っ子です。念のため)。

 彼女と対談した時に、「自分はおしゃれがわからないし、おしゃれがわからない女性は多い。どうすればおしゃれが上手になりますか?」と、かなり本気に質問されたのです。

 私はその時「好きなものを着ればいいんです」と答えたのですが、スーさんから「その〝好きなもの〟がわからない場合はどうすればよいのですか?」と詰め寄られました。

 スーさんの気持ちは、苦手な料理を作る時の私の気持ちだったのです。私はそれまで、「おしゃれがわからない」という方の気持ちを、本当の意味で理解していなかったのかもしれません。

 結論からお伝えしますと、あることに対して苦手意識を持つ人、下手な人というのは、センスというよりも「自分の軸」や「自分の型」を持っていないことが多いのです。判断する基準がないから、どうしていいかわからなくなってしまう。

 料理が苦手な私は「一汁一菜」という型を授かったことで、料理上手にならずとも、料理に対する苦手意識はなくなりました。

 それをおしゃれに当てはめるならば、まずは「おしゃれの自分の型」を持つことで、クリアできるはずです。

物事を上手にこなすにはセンスではなく、「型」が必要です。「型」を知り、身につけましょう。

「一汁一菜」=「シンプルで簡単で上手にできるもの」と定義するならば、「おしゃれの一汁一菜」とは何でしょうか?

 残念ながら、お味噌汁のようにひとつの型を挙げることはできませんが、例えば、シンプルなワンピースやアンサンブルは、それに当てはまるかもしれません。

 まずは自分に合いそうなファッションブランドを決めて、店員さんと相談しながら、おしゃれの型を見つけてください。それが見つかったら、もう大丈夫! 少なくとも、苦手意識はなくなります。気分に合わせて小物で色を加えたり、アクセサリーをプラスしたり。遊び心を発揮して、コーディネートのテーマを決めても楽しいでしょう。

 一汁一菜のおかげで、ひとつ賢く生きる術すべを見つけられたようです。

 土井先生、ありがとう。

***
続きは、ジェーン・スーさんも「どうしよう、私もおしゃれになれる気がしてきました。」と帯にコメントをくださった『おしゃれはほどほどでいい』をご覧ください。このあと「世界一シンプルなおしゃれの法則」も紹介しています。

 

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