「インターネットで一番数字を持っているライター」と呼ばれるヨッピーさん初の本『明日クビになっても大丈夫!』が発売になりました。爆笑しつつも大共感、そして仕事について改めて考え直すきっかけとなる本書の試し読みを少しずつ掲載していきます。第六回は、せっかくフリーになったのに、お金のためにやりたくない仕事を嫌々やる、という悪循環に陥らないための心得です。

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 前項で書いた通り、「まず副業からはじめる」というスタートの切りかたをする事についてはまず「リスクを減らせる」というメリットがある。

 そしてそれ以外にもうひとつのメリットがある。それが「やりたくない仕事をしなくて済む」という点だ。サラリーマンを辞めて独立したとして、まず最初に訪れるのが「稼げずの谷」だというのは前項でも言った。「稼げずの谷」に落ちるという事はつまり、「食わなきゃいけない」というプレッシャーと戦う事でもある。

 サラリーマンを辞めた以上、どうにかして生活費を稼がなくてはいけない。「サラリーマンを辞める」となると圧倒的に自由になるような響きを受けるかもしれないけど、それは大きな勘違いで、実際にはこの「食わなきゃいけない」という強烈なプレッシャーが個人をがんじがらめにする。自由なんてどこにもない。やりたくない仕事、単価が安い仕事、実績にならない仕事を嫌々でもこなさなくてはいけない。それはきっと「ペコペコ頭を下げるような仕事なんてもうごめんだ!」と言って会社を辞めてから気づくだろう、「頭を下げるだけで給料が貰えるなんて、なんていい仕事なんだ」って。自由になりたくてサラリーマンを辞めたのに、辞めた途端にサラリーマン時代以上の不自由が待っているなんて事はザラにある。

「サラリーマンを辞めてブログ一本で生活します!」「僕はブログで自由に生きるんだ!」みたいな人達が最近はちらほら出てきていて、「僕は自由です!」「満員電車とはおさらばダ!」「サラリーマンなんてくそくらえ!」みたいに調子こいてる人達がいるのだけど、そういう人達はみんな「今月はいくら稼ぎました」とか「こうして稼げるようになりました」みたいな記事、そしてアフィリエイトのリンクをずらずら並べた記事ばかりを書き、「ブログで稼げるコツを教えます! 月に5000円から!」みたいな事を言い出すのは単純にそういう記事を書いて信者を作り、信者からお金を巻き上げないと生活が出来ないからだ。型にハマるのを嫌ってサラリーマンを辞めたのに、今度は「ブロガー」という型にハマる。チンカスみたいな話である。

 でも、副業として、趣味の延長線上でやるのであれば、そんなふうなしがらみに囚われなくて済む。

 実例をひとつ紹介しよう。僕が会社を辞めてライター業務を細々とやりだした頃、とある占いサイトから「書いて欲しい」というような依頼が来た。そのサイトは「開運グッズ」みたいなものを紹介するようなサイトで胡散臭い事この上ない。今の僕ならこんな仕事は絶対に断るしなんならメールも無視するのだけど、なんとなくその会社が家からも近いし、そもそも当時は仕事が欲しくてたまらなかったので軽い気持ちで打ち合わせに行ったところ、めちゃくちゃしつこく頼まれて渋々仕事を受けてしまったのである。ちなみにギャラは1本1万5000円で経費もコミだと言う。その時の企画は「開運グッズを死ぬほど身に着けて競馬に行ったら勝てるのか?」というものである。勝てるわけがない。頭おかしんじゃねぇか、って思った。勝てるわけがないし、そもそもその競馬の軍資金も自腹なのだ。「もし勝ったらヨッピーさんの取り分にして頂いてけっこうなので……」当たり前だ。自分のお金で競馬やって勝ったお金まで取られたら本当に意味がわからない。そもそも、1万5000円で船橋の競馬場まで行く交通費と、軍資金1万円で計算したら僕のギャラなんてほぼ丸ごと残らないのである。本当に断ればよかったとあとから死ぬほど後悔するのだけど、結局「仕事を依頼したい」という甘い言葉に釣られて打ち合わせに行ったせいで押し切られてこの企画をやるハメになった。

 結果的にギャラ全額を競馬で溶かし、当然僕の手元には1円も残らない。「何しに来たんだっけ……」と絶望しながらも、やはりこんな目に遭ったのは「会社を辞めてしまっていたから」であります。会社員として安定した生活を送っていたのであれば、「仕事だ」「稼がなきゃ」というプレッシャーに負けなくて済んだのだ。あの時の編集さんに、今だからこそ言っておきたい。あの時のギャラ、くれよ!

 そんなわけで副業としてやっていればその「稼がなきゃいけない」という呪縛に縛られずに済むし、制作に対してある程度のコストをかける事も出来るだろう。

 プロとして一枚1000円のイラストを10時間かけて描いてたらはっきり言ってアホだしそれで生活出来るわけがないんだけど、生活が安定してさえいれば副業として一枚1000円のイラストにいくら時間をかけても生活に困る事はない。つまり、「生活が安定しているからこそ、クオリティを追求できる」という側面があるのだ。そしてそれがそのまま貴方の実績になる。1本1000円のギャラで1000円のイラストを描いていればずっとそのイラストの値段は1000円のままだけど、1000円の仕事でも1万円の価値があるイラストを描いていればそのうちギャラが追い着いてきて1万円のギャラを貰えるようになる。

 ただし、大事なのはちゃんと「自分の実績を世に発信する事」だ。ハイクオリティな仕事をこなしつつ、「これが自分の仕事だ」と発信する事も同時に行わないといけない。自分の名前が世に出ない仕事ならクオリティの追求はあんまり意味がない。それを見た人が貴方にたどり着かないし、新しい仕事も生まれないからだ。

 エンジニアでもイラストレーターでも漫画家でもなんでもいいのだけど、仕事をしたら仕事をした分だけちゃんと「これは俺の仕事だ!」というのを世間に見せつけよう。TwitterやFacebookなどでの発信も同時進行で行うべきだ。逆に言えば自分の名前が出ない、ただの受託案件ならクオリティを追求しても仕方がない。イラストや漫画ならTwitterで定期的に発信して「俺のクオリティはこれだぞ!」と見せつければいいし、エンジニアならブログで仕事について書けばいいと思う。

「クオリティ」と「発信」が両立していれば絶対にギャラはついてくる。僕が自分が書く記事は必ず「こんにちは。ヨッピーです」という出だしではじまり、自分の顔写真を入れる事にしている。自分の写真を毎回載せていると「ヨッピーさん太ったね」などと僕の体重の増減にまで気を配ってくれる人が現れるのは完全に大きなお世話だし、おまけに「汚いオッサンの顔なんて見たくない」なんて暴言を書き込まれたりするのだけど、これは「この記事は俺の作品だぞ」というのを知らしめる意図もあって続けているのである。だから、新しい仕事が増える。会社を辞めるのはそうなってからでもじゅうぶん間に合う。事業を立ち上げる、趣味で稼ぐ、という事を目指す過程において、出発からサラリーマンを辞める必要なんてどこにもない。

 

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ヨッピー『明日クビになっても大丈夫!』

「現役の千葉市長とゲーム対決をする」「AV女優と童貞を合コンさせる」「24時間テレビの100kmマラソンが本当に大変なのか試す」「大阪でひたすらたこ焼きを食べる」などの面白記事をネットで発信し続けているWEBライター・ヨッピー。

好き放題しながら楽しく稼いでいる彼による、
会社に寄りかからずに生き延びる方法。