毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2017.10.12

土方歳三への道 第二回

推しの正しい愛しかた

カレー沢 薫

推しの正しい愛しかた

~前回までのあらすじ~

ソシャゲ「Fate/Grand Order(FGO)」にて最推しかつ、歴史上の人物の中で最愛である「土方歳三」が出るガチャが始まると聞きつけ、私はすぐさま対策本部を設置。「出るまで回す」という綿密な作戦を立てた。

☆☆☆

島津藩かよ。
そう思ったかもしれない、確かに土方さんを出すための兵(福沢諭吉)は全員討ち死にして良いと思う、出さえすれば何人死んでも、頭上で指を交差させ「よく死んだ!よく死んだ!」だ。
しかし、全員死んだら、戦は終りだ、他所に援軍は要請しない。

つまり私の「出るまで回す」というのは「ガチャに使える限界の額まで出るまで回す」だ。
他に使う予定の金に手をつけたり、借りたりまではしない。

そう言うと「貴様の決意と推しへの愛はその程度か」と思われるかもしれないが、これは他でもない推しのためだ。
「電気水道止められてもいいし、しばらく公園の砂を主食にする、借金したとしても働いて返せばいい、推しの為なら苦ではない」

その決意は、その瞬間は本物である、何故か知らないがオタクはそういうところがある。
しかし、人の心は弱い、特に私は弱い、いとも容易く「貧すれば鈍す」のだ。

最初は大丈夫かもしれないが、貧しく不便でみじめな生活があまりに続くと、人は心が荒む、そして良く揉んだダンボールとかを齧りながら「あの時、ガチャ回したからこんなことに」と後悔の念が生まれてしまうかもしれないのである。
「推しが出るまで回したせいで推しへの愛が揺らぐ」本末転倒だ。
推しを正しく愛すには、まず自分が人間らしい生活をしていなければいけない。

よって破滅はしてはならぬ。
「金の切れ目が縁の切れ目」こんな悲しい言葉を「土方歳三」に使いたいのか、そんなものは三次元の声が櫻井孝宏や諏訪部順一じゃない野郎にでもタンと一緒に吐いとけば良い。

望むのは「快勝」以外ない。
「推しは出たけど、月末の支払どうしよう」みたいな、しみったれたことは言いたくない。
「土方さんを出すための金で土方さんが出るガチャを回して土方さんが出た」
つまり「当然のことをやってのけただけのこと」そういう顔で終わりたいのである、例えそれが遺影に使われる顔だったとしても。

というわけで「土方さんを出す金」だが、まず課金専用口座に5万ほどあり、あとお祖母ちゃんにもらった現金が10万ほどある。
この金は「私のコラムが新聞に載った祝い」という名目で貰ったが、それにしては大金だ、最近めっきり老け込んだババア殿なりに他に思うところがあったのかもしれない。
私は推しのガチャがあるたびに「こいつを使ってやる」と思ってきたのだが、結局使えず、随分な月日が経ってしまった。
逆に「土方さんにも使えぬ金を、一体何にだったら使えるというのだ?」という気がしてきたので、これも予算に入れる。

あと、ちょうどガチャ期間内にFGOの同人誌即売会があり、そこで他でもない土方さんの本を売るので、微々たるものだろうが、その売り上げも入れる。
FGOは、ガイドライン内なら二次創作を容認してくれているので安心だし、その中に「持ってないキャラは描くな」というのがなかったことを神に感謝している。

ちなみに「持っていないキャラは描くな」は、FGOをはじめとする二次創作界隈で実際にある主張らしい。
実際言っている人を見たわけではないで、何故このような主張に至ったかはわからないが「キャラを持っていないと、キャラへの解釈が薄く『わかってない』ものができる」「持ってないということは『出るまで回さなかった』つまり、それほどそのキャラに対して愛があるわけではない」ということだろうか。

そんなことはない、のだが、やはり持っていない以上持っている人間にそう言われると、強く反論もできないのも事実だ。

しかし、画力というのは暴力なのだ。
腕力が強い奴に殴られた方がより痛いのと同じように、画力が高い奴が描いた絵というのはそれだけで攻撃力が高い、そのキャラを持ってるとか、持ってないとかあまり関係がない。
もちろん「絵はそんなに上手くないのに気づいたらメチャクチャダメージを受けてる」という、スタンドで殴ってくるタイプの作品も多数あり、それは一重にキャラへの愛と深い解釈のなせる業だったりする。
しかし素直に、レベルを上げて物理で殴ってくる絵も強いのである。
そういうゴリラ絵師を見ると「とりあえず全然知らなくていいから、土方さんを描いて俺を撲殺してみないか?」と思う。

つまり自分が「持ってないキャラは描くな」と主張してしまったら、そういう神絵師が推しを描いてくれる可能性が減少することになりかねない。

拙者にはそんな、自分で自分を兵糧攻めするマネは無理だ。

結局、ガチャを回すところまでいかなかったし、話も逸れた。
このように、推しの話になると、話が長い上に理屈くせえという、オタク以前に人としてどうか、という状態になってしまう。
逆に一貫して泣きながら「尊い」しか言わないオタクは性質のいいオタクなので、石を投げてはいけない、むしろビスケットの1枚でも握らせてやるべきである。

ともかく予算は15万強だ。だが、結論から言っておこう。
「それ以上回した」

★がついた記事は無料会員限定

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

この記事を読んだ人にはこんな記事もおすすめです
  • 0万部突破のメガヒットへと導いた天才クリエイターが語る
  • 胸に迫る、慟哭必至の医療ミステリ。
  • 読む者すべての胸を打ち、揺さぶる衝撃のミステリ!
  • 最新脳研究でわかった「疲れない人間関係」のつくりかた
  • これは日本の悲劇でもある。
  • 今度こそ話せるようになる、すべての英語を学びたい人へのバイブル!
  • 清々しく満ち足りた幸せを手にするための、心の持ち方、暮らし方。
  • 実家に久しぶりに帰った姉が、引きこもり中の弟に大事な相談を持ちかける
  • 美人かどうかは目元で決まる。
  • 自然の力とバリの魅力に満ちた心あたたまる物語。
これは日本の悲劇でもある。
最新脳研究でわかった「疲れない人間関係」のつくりかた
電子オリジナル書籍レーベル“幻冬舎plus+”
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!