写真を拡大
『ゴールデン・ブラッド』(内藤了・著、小社刊、650円+税)

2018年8月5日、東京五輪プレマラソン開催中に凄惨な自爆テロが発生した。現場では新開発の人工血液「ゴールデン・ブラッド」が使われ多くの命が救われたが、数日後、輸血を受けた患者や開発の関係者が次々と変死していく――。

血液不足の実態や人工血液製剤の最新研究も盛り込み、科学の進歩と人の生き様を描いた慟哭必至の医療ミステリ小説『ゴールデン・ブラッド』(内藤了・著)。

10月17日(火)より始まる本作の無料試し読み連載に先駆けて、本日は、防衛医科大学校・木下学准教授からの推薦コメントを紹介します。
血液製剤研究の最前線で闘っている専門家は、本書を読んで何を想ったのか――。


 *  *  *


 内藤了先生とは、小生が大会長を務めた、第23回日本血液代替物学会年次大会をご聴講いただいた縁で出会った。非常に熱心な取材姿勢に絆され、血液関連を巡る表現に若干助言をさせていただいたこともあり、ここで本作を拝読した感想を少し紹介したい。
 

 テンポのよいストーリーの展開を読み進めるうちに、これはノンフィクションではないかと一瞬、戸惑うほどによく練って作られた作品だった。

 サスペンスフィクションでありながら、テロなどの危機管理担当の専門家や、製薬関係の専門家が読んでも十分に読み応えがあるほど作り込まれている。

 おそらく一般の読者がこれを読むと、現実と非現実の世界が区別できなくなり、軽い眩暈を感じるだろう、そんな作品である。


 人工血液「ゴールデン・ブラッド」を作るということ自体は、夢のような話と思われるに違いない。しかし、これは実際に我々研究者が日夜努力している事業である。
 輸血用の血液不足、テロの恐怖もまた、悪夢のような話であるが、しかし眼前に迫りつつある危機だ。

 現実と非現実が巧みに交錯する現代社会を生き抜く人びとのドラマを、本書は見事に描いているのではないだろうか。事実は小説よりも奇なりとよく言われるが、本作品は現実に肉薄している点で、もはやサスペンスフィクションの域を越えようとしている。


 作中で主人公が願うような希望ある未来が訪れるように、私も専門家の1人として、予測不能な現実社会の中でひた向きに努力していきたいと、決意を新たにした。


木下 学(防衛医科大学校 准教授)


<プロフィール>
木下 学 Kinoshita Manabu
防衛医科大学校 免疫・微生物学講座 准教授。
日本医療研究開発機構(AMED)の人工赤血球開発に関する研究事業に分担研究者として参加している。


 * * *


試し読み第1回は10月17日(火)公開です! ご期待ください。

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

 

内藤了『ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD』

東京五輪プレマラソンで、自爆テロが発生。現場では新開発の人工血液が輸血に使われ、消防士の向井圭吾も多くの人命を救った。しかし同日、人工血液が開発された病院で圭吾の妹が急死する。医師らの説明に納得いかず死の真相を追い始めた矢先、輸血された患者たちも圭吾の前で次々と変死していく——。胸に迫る、慟哭必至の医療ミステリ。