当初から小池批判を繰り広げてきたジャーナリスト、有本香氏の著書『「小池劇場」が日本を滅ぼす』。その中で、ひとりの都庁関係者がこんなホンネを漏らしていた――。

ニュースにならないことをニュースにする人

 本来ニュースにもならないようなことが大ニュースになってしまう──これが小池劇場の困った特徴である。

 行政の仕事というのは、日々これ膨大かつ多岐にわたるが、ほとんどが地味な作業の積み重ねだ。その一つ一つが遺漏なく着実にこなされていることはふつうニュースにはならず、私たちもそれを当たり前と思っている。

 ところが、小池百合子という人にかかるとその当たり前がいちいち「事件」になる。

 マスメディアにとっては、いっとき貴重な「ニュースメーカー」とはなるが、都民にとっては、当たり前の行政を当たり前にやらないトップは「トラブルメーカー」でしかない。

 都庁関係者が言う。

「企業などの民間組織にもたまにいるでしょ、基本業務を十分に理解しこなす能力がないのに目立つことばかりやりたがり、上司へのアピールだけは得意なタイプ。結局、大穴を開け、その穴埋めは、蔑ないがしろにされてきた同僚が泣きながらやる羽目に陥る。そういう『困ったちゃん』が東京都知事になったということ」

 5月の連休明け、またもや、本来ニュースにならなかったはずの事柄がヘッドラインとなって巷を騒がせた。

 五輪の他県での開催施設の費用負担の件である。

 回答をさんざん引き延ばし、関係者に迷惑をかけた挙句、発表された内容は「元のとおり」。小池が引っかき回す前のとおりであった。

 もともと他県の仮設施設費用は東京都が負担することを原則としていて、各県は、警備その他の人的リソースの提供、ボランティアの教育などの費用を負担するほか、仮設施設のうち、五輪後にレガシーとなるものについては自治体側も負担するなど、詳細には個別に協議して決めるということであった。

 それを、小池が就任直後に「会場見直し」を宣言し、宮城だ、横浜だと大騒ぎをしたために、原則とされていたこと含め、それまでの流れが止まってしまった。

 本来であれば、昨年中ぐらいには概算金額が出て都議会にも諮られ、その後、細部を詰めながら、支出方法などの手続きについても検討が進められていたはずである。

 この点でも五輪準備はすでに半年は遅れているのだ。

 築地市場の移転が延期されたことで、五輪までの環状2号線の開通が難しくなり、バス3000台分の専用駐車場の用地確保も難しくなった。

 遅れているというより、東京五輪はもはや「破壊」されかけている。

 この肝心なことを言わずに、またもや小池vs官邸(菅官房長官)云々とワイドショー的な切り取りしかしないマスメディアにはウンザリだ。

 朝日新聞はこの騒動を「五輪仮設、追い込まれた小池知事 官邸や他知事が包囲網」(5月12日)との見出しを打って伝えたが、この表現は適切ではない。

 小池が追い込まれたのではなく、小池が都知事として、やるべきときにやるべきことをやらずに、余計なこと──他人への攻撃、自己宣伝のためのメディア出演──ばかりしていたために、東京都と日本が追い込まれた、正しくはこう言うべきである。

 知事就任時に職員に対して、「期限を決めて仕事をせよ。遅れるならいつごろまでと示せ」と訓示を垂れたにもかかわらず、市場の件でも、五輪でも、それをまったく守ることができないのが知事自身である。

 朝日新聞をはじめとしたマスメディアは、現在のところ、

(1) 東京五輪の準備の遅れが深刻であること

(2) 公約に沿った開催はすでに不可能となっていること

(3) 都心での駐車場用地の確保すら難しい状況に陥っていること

 といった肝心なことをはっきりと都民、国民に知らせなければならない。

 小池が、安倍総理との面会は連休前から決まっていただの何だの言っているが、それはどうでもいい。政局報道はこの際、後にすべきだ。

 半年以上遅れてしまった五輪に関する事務をどう巻き返すか。これが目下、最大の難題である。どう頑張っても時間を巻き戻すことはできないし、小池の一声で五輪を「延期」することはできないのだから。

 

※この続きはぜひ『「小池劇場」が日本を滅ぼす』をお読みください。

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