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2017.10.06

なんだか面白いので、まだ続けるよエッセイ67

凍りついた「講演会」。中学生は、イチバン難しいお年頃!?

歌う旅人・香川 裕光

凍りついた「講演会」。中学生は、イチバン難しいお年頃!?

ライブでなく、初めての「講演」のお仕事。
お相手は中学生。
どうやら中学生というのは、いちばん「盛り上がってもらいにくい」年齢層らしいのですが……。
はたしてどうなる!? この講演会!

□  □  □

エッセイ
「かち」

『バルミューダトースター』というものをご存知だろうか。先日、引っ越し祝いに友人に頂いたのだが、テレビで話題沸騰の高級トースターで、"インスタ映え"するトーストを簡単に焼くことができるトースターである。お値段もなかなかのものらしい。

 上部に少し"お水"を入れられるようになっており、パンを焼く際にスチームの力を使って、"外はサク!中はモッチリフワフワ~"に仕上げてくれるというのだ。

 今朝、さっそくコンビニで買ってきた、やっすい食パンを焼いてみた。

 すんごぃよこれ。マジで美味しい。

 早起きして自分でこねて焼いたのかな?と思うくらい、上質の焼きたてパンに仕上がっていた。

 スチームの力だけじゃなく、絶妙な火力を秒単位で調整しながら、忙しそうにトーストしてくれるバルミューダ。可愛いいヤツである。"トーストを焼くことに徹底的に特化したトースター"というバルミューダの個性が、大ヒットに繋がったらしい。開発した方のパンへの熱い想いに脱帽である。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎

 先日、ツアーついでに埼玉の越谷の方へお呼ばれしてきた。なんでも、とある塾の受講生達を相手に"講演"をしてもらえないかという内容のお仕事だった。

 僕は学生達を前に歌うことはあっても、講演などしたことがない。最初はお断りしようかなとも思ったけど、「まぁこれもひとつの良い経験になるかな?」と思い、"挑戦"という意味で引き受けた話だ。

 まぁ、講演といってもそんなにかしこまったものではなく、ざっくり持ち時間を2時間だけもらって、「好きにしてもらって構わない」とのことだったので、ギターも持っていった。話だけで2時間も持つ気がしなかったし。

 会場は地域の公民館で、講義室にイスが並べてある。自分が話す場所には、ホワイトボードがあり、一応、学校の授業のような形で進行できるようになっていた。参加者は中学生と小学生、その保護者である。

 自分のライブのときにもいつも思うのたが、「中学生」というのが1番の強敵である。

 小学生以下(特に下級生)はとにかく好奇心が旺盛で、手放して楽しんでくれる傾向がある。

 高校生くらいになると、"ライブ慣れ"している子も多少いて、「音楽で盛り上がるのが楽しい!」って感覚でライブにきてくれる子もいるので、盛り上がりやすい。

 その間にいる中学生は、一番多感な時期でありながら、その感情を表に出すのが非常に苦手だという子が多いように思う。お正月の親戚の集まりで、小さい頃はワイワイキャッキャと戯れていた従兄弟が、中学生になった途端、部屋の片隅でDSばかりして、話しかけても「えー、うん」しか言わなくなるアレである。

 中学校でライブなどをすると、「やべー……、全然盛り上がんない……」と本番中思うのだけど、終わったあとになると、しっかりサイン攻めにあったり、個別に「楽しかった!!」と言いに来てくれたりする。天邪鬼というかなんというか、まぁそういうお年頃なのだろう。

 講演の内容的には、自分のこれまでの人生をざっくり振り返りながら、どういう経緯で歌に生きることになったかの話をした。人前で、偉そうに自分の生い立ちを話す機会なんて、そうそうあるもんじゃない。むしろ初めてのことで、なんだか恥ずかしい気持ちと「こんな自分の話、みんな興味あるのか!?」って不安でいっぱいだった。

 時々、唄いもしたが、予想通りさほど盛り上がりもせず、なんだかだんだん凍りついた空気が漂ってきた。

 こういうときは! と逆に質問攻めしてみた。

 こっちだけ喋っているのもよくない。クイズを出してみる。しかし、誰も自分からは答えない。堪えきれず、適当に目があった子を当ててみたが、首をかしげるだけでうんともすんとも言わない。こりゃなかなか一筋縄にはいかないなと、半分開き直って、伝えたいことをどんどん伝えた。

 結局、僕が若い世代に伝えたいことは「やりたいことを求める人生は楽しいよ!!」ってことだった。

 その副産物として、同じ志を持った様々な仲間と出会えるからだ。

 ただ、それは簡単なことではない。誰もが実現できることでもない。だから大切なのは"個性"だし、「自分にしか提供できないモノはなんなのか」ってことを見定める必要がある。

 2時間かけて僕が言いたいのは結局それだけだった。格好つけて、学校の先生っぽく、『価置』と書いて、中学生に「これ、なんて読むかわかるよね?」とドヤ顔で聴いた。

 中学生は首をかしげるだけで何も答えない。

 大丈夫、恐れなくていい。小さい声だっていい。君の、キミだけの声を、僕に聞かせてくれないか?

 僕は大人として、渾身の"微笑み"を見せた。中学生の女の子は、なんだか不安そうに「かち……?」と答えてくれた。

 すると、塾の先生が、僕に何かを一生懸命訴えている。

「香川さん……!!字……!漢字……!!』

 え……?あれ?間違えてる……?

「ニンベン!ニンベン……!!」と先生が言うので、

 ぇ……?って小さい声を出しながらそっと

「置」の左側にニンベンを付け足した。こんな漢字だったっけ?

「あーー!!もう!」

 と先生がたまらずに、ホワイトボードをぐしゃぐしゃ消して『価値』と正しい漢字を書いた。

 あーー……ね……。漢字違いましたね……なはは…………。

 良い大人が、講演中に『価置』と書いて、中学生にむりやり「かち……」と読ませてしまった……。

 穴があったら入りたい。いや、むしろもう帰りたい。

 帰ってバルミューダにパンを焼いてもらいたい。次はクロワッサンでも焼いてみよう。さぞかし美味しく焼き上がるはずだ……。

 現実逃避も虚しく、そこから心が折れた僕の講演はグダグダで、最終的にはしっかり歌ってごまかした。やはり僕は、話すより歌ってた方が良いようである。

 しかし面白いもので、大失敗だったなぁーと思っていたら、意外にも講演後に何人かの子が声をかけにきてくれた。

 声優になりたくて頑張っているとか、歌手を目指してるとか。目をキラキラさせて僕の元へきてくれた。少しでも届いてくれた子がいることが幸いだった、

 そうでない子達も「しっかり勉強しないと、あんな大人になっちゃうー!」と僕のことを反面教師にでもして頂きたい。僕も日々勉強である。

 嬉しそうにトーストかじってる場合じゃない。

 漢字ドリルからやり直さねば。

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