2017年7月18日、日野原重明さんが105歳という年齢でこの世を去られたことは、みなさんの記憶に新しいと思います。

2016年年末から始まったインタビューでは、「読んでくれる一人一人と対話しているような本にしたい」という日野原さんの希望を受けて、様々な質問に答えていただく形で進んでいきました。
「これが私の最後の使命です」とおっしゃりながら、時にはベッドで横たわりながらも、
深く優しく強い言葉をつむがれていた日野原さん。

105歳という長い人生を生ききった日野原重明さんが、死の直前まで私たちに伝え続けたメッセージとはなんだったのか。
9月28日に発売する『生きていくあなたへ  105歳 どうしても遺したかった言葉』より、その対話の一部を紹介させていただきます。

 

質問「人目ばかりが気になります。自然に自分らしく生きていく秘訣はありますか?」

太平洋戦争が終わったのが33歳。
30代の僕は、自分がどう生きていくのか、医師としてどうやって人々を助けていくのか……。そういう思いを抱える自分と向き合っていました。
そして、「ありのままの自分」で生きていくということを、よりいっそう意識するようになりました。

名誉、お金、地位、他人からの賞賛、そういうものに囚われていると、ありのままの自分というのはすぐに見えなくなってしまいます。

ありのままに生きるということは、飾ることなく、人からの評価に左右されることなく、自分に与えられた能力、環境を、自分がやるべきことのために使うという、難しいようでシンプルな働きなのです。

そういいながらも、人と人とのかかわりの中で生きていますから、ありのままに生きるということは、なかなか難しいことでもありますね。僕の生きた医者の世界というのも、多分に権威主義的なところがあり、僕自身もことあるごとに「今の自分は、ありのままだろうか」と悩んできたのです。

そしてありのままでいるためには、もう一つ大切なことがあります。

無理をしない、「あるがまま」でいるということだと思います。

ありのままでいられないときというのは、こうありたいという理想の自分や、こうあってほしいと願う環境と現実との間に差が生じ、悩んでいるという場合が多いのではないでしょうか。

誰でもこうありたいという自分の姿があるものです。その理想がかなわないときは、自分のことが嫌になったり、自暴自棄になったりするものです。でも誰が受け入れてくれなくても、そのままのあなたを大切にしてほしいのです。

頑張って精一杯生きている自分を受け入れ、その中で一生懸命やり続ける。そしてうまくいかない環境をも受け入れるのです。自分の努力で変えられることと、どんなに頑張っても変えられないことがある。その変えられない現実の中で、真心をこめて生きたとき、きっと神様が働いてくださる。そう信じて委ねるのです。

真剣に生きることと、無理をして背伸びをするということは、似ているようでまったくの別物なのです。

聖書にこんな言葉があります。

「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(マタイによる福音書)
「あなたがたのうちのだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか」(ルカによる福音書)

世の中というのはなかなか自分の「こうしたい」という思い通りにはなりません。

そもそも今、この環境にあなたが生まれてきたことだって、私達の思うとおりのことではないでしょう?

人目を気にせずあなたが自然体で生きていくようになるために、まずは一歩勇気を出して行動してみてください。

そして今与えられているそのままのあなたを、大きな存在に委ねるということを始めてみてほしいのです。

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日野原重明『生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉』

「人間は弱い。死ぬのは僕もこわいです。」105歳の医師、日野原重明氏が、死の直前まで語った、希望と感謝の対話20時間越。最後の力を振り絞り伝えたかった言葉とは。生涯現役、渾身最期の一冊。