「インターネットで一番数字を持っているライター」と呼ばれるヨッピーさん初の本『明日クビになっても大丈夫!』が9月20日に発売になりました。笑えるけれど、実は役に立つビジネス書である本書の試し読みを少しずつ掲載していきます。第二回は、「会社という病」をお届けします。

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会社にはいろいろと問題がある。いわゆる「古い大企業」の仕事なんて、はっきり言って時間さえかければ誰にでも出来るものがほとんどだ。そりゃそうだ。「その人にしか出来ない仕事」は再現性が低いし、属人性が高い、と言って嫌われる。どういう能力の人であれ誰でも、担当すればある程度は結果を出せるような仕組みを作るのが会社の使命と言ってもいい。「その人にしか出来ない大事な仕事」が社内にあるのなら、それを「誰にでも出来るように仕組みを作り替える」のが組織の論理で、これが「個人のやりがい」と明確に対立する概念になる。

 結局のところ、ひとつの歯車であるサラリーマンからすれば「誰にでも出来る仕事」にはあんまり誇りを持って取り組めないのだ。「これは俺にしか出来ない仕事だ」と信じながら進む方が楽しくやれるに決まっている。もちろんそういう「その人にしか出来ない仕事」はどこの会社にもあるし、そういう「替えのきかない人」は確かに存在する。でも、会社としてはそれをそのまま放置する事を「リスク」だと捉えるだろう。「組織の論理」とはそういうものであるし、そうでなければいけない。

 これによって組織が優れていれば優れているほど、個人のやりがいは搾取される仕組みになっていると言っていいかもしれない。ただし、これをもって「組織」を批判するつもりは全然ない。「まあしょうがないよな」くらいに思っている。組織として仕事をこなす以上、「誰にでも結果を出せる仕組み」を作るのは当然の使命とも言えるからそれはもうしょうがない。

 ただし、その「組織の論理」と「個人のやりがい」は構造的、本質的に対立する概念になっているというジレンマについては心にとどめておくといいかもしれない。歯車のスペアは多いほどいいのであって、規格は統一されている方が使いやすいのだ。「尖る事」「突出した人材」なんて本質的には誰も求めていない

「チャレンジする人材が欲しい」なんてセリフはどこの企業だって言うけれども、就職活動中に真っ赤なスーツで面接を受けに来た奴は真っ先に落とされるに決まってる。変に尖った歯車なんて、会社にとっては使いづらいのだ。だからこそ僕らは「会社で働く」という事に対して息苦しさを感じる。大学にいた頃は賭け麻雀とパチスロ、そしてインターネットにどっぷりハマって好き放題して留年までした僕にとって、その「一部上場」「老舗企業」なんていう統一された規格の部品を求める企業の居心地は悪すぎたのである。

 そんなわけで入社早々、研修を終えて1年が経った頃には「この仕事、一生やるのは無理だな」と明確に思っていた。だって、別に僕ひとりが頑張ったところで会社の業績に大した変化はないし新入社員の僕がやれることなんて、別に僕じゃなくたって出来る仕事なんだもの。

 先輩が言う。

「お前ら新入社員が何かしでかしたところで、会社はビクともしないから好きなようにやってみろ!」

「はい! 喜んで!」

 そうやって「よし! じゃあ好きにやるか!」と思って一点ものの商品サンプルを組み立てる時に好き放題やったら思いっきりぶっ壊れて目の玉が飛び出るかと思うくらいに怒られた。「好きにやれって言ったくせに!」「言ってる事とやってる事が違いすぎるじゃないか!」と思う。でも大抵はこんなものである。もちろんそうじゃない会社もたくさんあるんだろうけれども、大多数の実情はこんなものではないだろうか。

 ただし、別に僕が入った会社が「悪い会社だった」と言うつもりはない。単に僕には合わなかった、というだけの話だ。仕事もそこまで激務でもないし、給料も普通以上には貰えたし、会社の仕組みに不満はあっても嫌な上司も特にいない。むしろいい人達ばかりだったように思うし、他の人達にとっては「いい会社であった」というのもある面では正しい。実際離職率は低かった。

 逆に言えば「日本の会社なんてだいたいそんなもの」という事になるわけで、それはあんまりいい話ではないのかもしれない。どこの会社もそうであるならば、つまりは僕みたいにひとつの会社に適合しなかった人間の行き場所がどこにもない事になるからだ。いろんな企業に散っていった大学の同級生達もだいたい似たような悩みを抱えている。そんなわけで「一生続けるのは無理」とは思ったけど、積極的に辞める理由もない。だって、「どこもだいたいそんなもの」なんだから、会社を辞めたからと言って、新しい会社でそれが改善される保証はない。今の会社が、「給料が安すぎる」「激務すぎる」「上司が嫌な奴すぎる」なんてふうに、「わかりやすい辞める理由」があれば別だけど、幸か不幸かそういう明確に辞める理由が当時の僕にはなかったし、仕事以外の部分における新しい東京の生活は楽しかった。だから、「転勤の辞令が出たら辞めよう」という結論を出すことにした。仕事がつまらなくても「この会社にいたら東京に住んでいられる」というメリットがまだ残っていたからだ。結局転勤の辞令が出るまで7年かかるのだけど。

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ヨッピー『明日クビになっても大丈夫!』

「現役の千葉市長とゲーム対決をする」「AV女優と童貞を合コンさせる」「24時間テレビの100kmマラソンが本当に大変なのか試す」「大阪でひたすらたこ焼きを食べる」などの面白記事をネットで発信し続けているWEBライター・ヨッピー。

好き放題しながら楽しく稼いでいる彼による、
会社に寄りかからずに生き延びる方法。